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No.98

コリッシュ代表/シェアハウスプロデューサー

 

小原憲太郎(おはらけんたろう)

1983年神奈川県生まれ。立命館大学政策科学部を卒業すると同時に友人と起業、代表取締役を務める。その後、株式会社インデックスへ転職、モバイルソリューションなどに携わる。2011年に行われたStartup Weekend Tokyoにてシェアハウスサービス「colish」を立ち上げ現在に至る。

 

 

シェアハウスは「どこに、いくらで住むか」ではなく、「誰と、どんなふうに住むか」を考える時代に…

昨年7月に開設されたWEBサイト「colish(コリッシュ)」(http://colish.net/ )ではシェアハウスの同居人をコンセプトを通じて探すというユニークなサービスが展開されている。プログラマー限定物件、地方の就活生が互いに応援し合える就活ハウス 、子育てを応援する家族向けのシェアハウスなど生活を楽しくするシェアハウスのアイディアがcolishには多数投稿されている。

 

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人と人との「繋がり」が薄れ無縁社会と呼ばれて久しい現代日本の状況に相俟ってメディアの注目度も高く、日経新聞の一面(2012.1.9『C世代駆ける』)などにも取り上げられている。

 

今回のインタビューでは、そんな新しいシェアハウスの形を生み出したcolish代表小原憲太郎(おはらけんたろう)氏に焦点をあて、「どういう生活を送ってきた人が、colishのようなサービスを創り出し、そこにどういう想いが詰まっているのか。」を伺った。

 

 

一見様お断り”の町屋コミュニティ

 

――小原さんは大学時代にシアトルへ留学されたと聞いています。

 

僕は大学時代、「組織文化論」を研究していたんです。組織のなかで「リーダー」的役割を務めることが多くて、上手くいく組織とそうじゃない組織で何が違うかを比較することに興味がありました。生き生きしている組織や結果を出す組織の源流をたどっていくと、それは組織の”文化”にあったんです。”文化”というのは、「こうあったらいいな、こうあるべきだな」と組織の構成員が想う共通認識の固まりです。たとえば、お客さんが来たらお茶を出すのが日本の”文化”。このような”文化”の違いは比較することによって良し悪しが分かると考え、その結果自分の属している一番大きな組織、『日本』を出ることにしました。そうして「英語圏ならどこでもいいや」くらいの気持ちで、薦められたシアトルに行くことに。

シアトルでは「スモールグループコミュニケーション」を学び、出身国が全く異なる7人のグループで1つの成果物をあげていく授業などを受講しました。その授業で面白かったのは、気に食わない人は全員の総意があればグループから外していい、ファイヤーするというユニークなルールがあったことです。

 

――ユニークですね。実際にファイヤーされた人はいたんですか?(笑)

 

しようかという話は何度かありましたね(笑)。

ですが、そのような修羅場(?)を経験することによって、やった内容以上に認識の違い・前提の違いをお互い理解し合っていくコミュニケーションを体感することが出来ました。

また、学校ばかり行っていても面白くないなぁと思い国際青年環境NGO(とある著名写真家が行っているNPO)でインターンをしました。そこはクリエイティブで先進的な作品を国を越えて作る団体でした。別荘みたいなオフィスで、インドに子供を留学させるプログラムなどに携わりました。といっても当時の自分にはWEBを作る能力くらいしかなかったので、インドに渡航する際に危険なことをネットでひたすら調べたりする作業に追われました(笑)。

 

――シアトルに渡っていた経験もある一方で、在学中はご友人と京都でシェアハウスをされていたそうですね。

 

僕の友人が自分の部屋を開放し始めたのがきっかけでシェアハウスを始めました。24時間365日鍵をかけずに紹介のあった人は出入り出来るようにした「一見様お断り」の町屋コミュニティで、普通のアパートの1室からスタートしました。8畳くらいのスペースがあって3畳が彼のスペース、残り5畳をみんなのスペースとして出入りし始めたのがはじまりです(その後引っ越して一軒屋の町家を借りました)。

町屋の中で流し素麺をやったり、今や誰もが知っている議員さんをお呼びしておばんざい対決という名のもと(※おばんざい…四季折々の素材を用いて作る京都の家庭料理。いわゆる「お惣菜」をさす)、近所のおばちゃんが作ったものと学生が作ったものとでどちらが美味しいかをジャッジしてもらったりなど学生ならではの遊びを沢山やっていましたね。そうしたら学生だけじゃなくて社会人も面白がって来てくれて、なかにはわざわざ東京から興味をもって遊びに来てくれる方もいました。

いま振り返るとこのシェアハウスのよかったところのひとつが、ただコストを下げるために集まった訳ではなく純粋に集まる仲間が面白かったがためにやっていたこと。

そしてもうひとつが「誰でもウェルカムじゃなくて自分の紹介したいなと思う人を連れてきて、その人とみんなで深く話し合うことによって新しい仲間として受け入れていく」という環境だったこと。友人も僕もそうですけれど色んな学生団体で幹部を務めたりなど精力的に活動していたこともあって地域で元気な学生はほぼそこに集まってきました。「こういう人知ってる?」と聞いたら絶対その部屋のメンバーの誰かから繋がってるくらいの濃い繋がりがそこにはあったのです。

最終的には5年で1000人が出入りしたシェアハウスになりました。

 

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自分のやりたいサービスに価値を見出す

 

――colishのお話に移らせて頂きます。colish以外に他にもアイディアをお持ちだったと思うのですが、最終的にコンセプトシェアハウスに決めた決め手のようなものはあったのでしょうか。

 

大学時代起業した時から”自分のやりたいサービスに価値を見出すこと”がビジネスの礎になると自負しています。ただ稼ぐのではなく自分が本当にやりたいことをやる、そして社会にいいインパクトを与えられるかというところでやることは選ぼうと思っていました。これらに合致するアイディアが思い浮かんだら本当に小さなものから大きなものまで溜め込みました。その上で、色々ある中からcolishになったという感じですね。

 

何故colishを選んだか理由はいくつかあるのですが、「Startup Weekend Tokyo」がひとつのきっかけです。

 

※「Startup Weekend Tokyo」…開発者、グラフィックデザイナー、マネージャーなど起業精神溢れる者が集結し、54時間以内に新しいコミュニティー、プロジェクトや会社を立ち上げるイベント。世界各地、200以上の都市で行われている。2011年は5月20日~22日東京都渋谷区で開催された。

http://tokyo.startupweekend.org/

 

あの場で作れるものであるということが絶対条件。そして今の潮流・トレンドにあっているということ。

あと、世界相手にウェブサービスを作って挑戦したいと思っているエンジニアやデザイナーを10人くらい集めてシェアハウスが出来たら面白いなと個人的に思っていたんです。僕は結婚しているのですが、「嫁さん連れて行こうかどうしようかな」とか考えていましたね(笑)。僕はそのようなエンジニア系のテーマでシェアハウスをやりたかったけれど、他の人は他の人で色々やりたいテーマがあるはずなので、これはシェアハウスの共通プラットフォームを作るしかないなと思い至りました。

 

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 (『農園×シェアハウス』をコンセプトとしたシェアハウス。住人×地域×地方の交流へと繋がる。)

 

――思いついたアイディアの中で、colish以外に具体的にやりたかったものはありますか?

 

「オンラインコワーキングスペース」、は誰か作ってくれたらと思ってるアイデアです。

コワーキングスペースって誰もが行ける場所ではないと思うんです。サラリーマンはもちろん、僕のようなフリーランスでもいろいろな人に会いに行って打ち合わせをすることが多い人は、週1回も通うことが難しい。

そういう人は、移動中やカフェ、仕事場でもコワーキングしている状態を作り出したいはず。

一緒にいるという存在感を感じられて、気軽に話しかけたり、ひとりごとに誰かが反応するという「スペース」があったらと思います。アメピグやhabboをコワーキング向けに使えばいいのかもしれませんが。

例えば、リアルで3回以上会った人しか入れない、バーチャルコワーキングスペースとかあってもいいと思うんです。

組織の枠、場所の成約を超えて、緩やかなコミュニティが作れると思います。

 

 

「運」というよりは”縁”

 

――colishを創るうえで苦労したこと、やりがい・楽しかったことを聞かせてください。

 

colishは結構単純な仕組みなのですが、シェアハウスという特性上WEBだけで完結させることが出来ないので、どうしたら赤の他人と実際にシェアハウスするところに落とし込めるのかは非常に考えました。文言、デザイン、機能面等色々練りました…そのためStartup Weekend Tokyoが終わった5月末からリリースした7月まで約2ヶ月かかりました。仕組みは既に出来ていたんですけどね。

 

楽しかったことは…、まぁ何やっても楽しいんですけれどね(笑)。単純に世の中的にこういうものを必要としているんだなあと感じられたときは嬉しかったです。

 

最初言われたんですよ。「そんなのfacebookページでいいじゃん」って。出来るのは僕も分かっていたのですが、ちゃんとした場所として演出すること・プロモーションが大事だと信じていました。

 

そう信じ続けてきたからかもしれませんが、今日こうやってお越し頂いたり色んな人に縁を繋いでもらうことが多いんです。コンセプトやサービスの目指す先のものに共感してくれた人の応援は本当に僕自身力になりますし、単純に嬉しいですよね。

あとはメンバー同士、気が合うというか最高に楽しいですね。この前、二泊三日で合宿も行いました。まぁ何か創ろうと言っていたものの、飲んで寝ちゃいましたが(笑)。そういう感じで自分達としては遊んでる感覚に近いんですよ。

 

――そのメンバーというのはStartup Weekend Tokyoで集まったメンバーなのでしょうか?

 

そうです。2人ほどあとから加わってくれたのですが、ほぼ全員があの場で組んだメンバーです。

 

――サービスを展開していく中で運を引き寄せたと感じた瞬間はありますか?

 

運を引き寄せまくっていますね、ほんと。

 

僕は大学時代くらいからプロジェクトをやる際は必ず、目標・目的設定をしてがっちり実行していくタイプだったんです。

 

ですが、colishでは一切やめました。

自分の生き方として目標目的計画実行というのは合わない、流れが悪くなると思いまして。

そう思ってからはアタマで考えてやるようなことはやらないで、そのときこっちだなと思うことに純粋に従うようにしました。

 

そうすると「次、必要だな。」と思っていることが何故か自然と集まってくるんです。今ではそれは確信に至っています。

 

たとえば、colishで「物件情報を載せないとな~」思っていると周りの方からどんぴしゃでその話が舞い込んでくるんです。昨日もたまたま僕らが『シェアハウスの歩き方』というイベントを開いていた時に不動産会社の委託社員の方がいて、「なにか必要な物件があったら言ってくださいね」と言ってくださって。このような偶然が何度も起こるんです。

 

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――確信に至っているとはすごいことだと思います。

 

もっと厳密に言ったら”運”というよりは”縁”なんですよね。単発じゃないんです。辿っていけばcolishで集まったメンバー自体が奇跡なんです。

 

Startup Weekend Tokyoに誰が参加するかも分からない状態(もちろん他の人も同様に僕が参加することなんて知らない状態)で90人集まって、そうしたらコンセプトシェアハウスにすごく共感する人がいて現在の核となっている…。コアにいるメンバーはみんなフリーランスで遊びの仕事と稼ぎの仕事と半分ずつくらいで食える人。だから別にcolishで無理しなくてもいいんですよ。納得出来ないことや誰かが不利益を被ったりするようなことはやらずに、「これはいいよね」ということだけをやっているとどこからか協力者が現れて、やりたかったことが出来るので最終的に周りの方からは”運”と呼ばれるんでしょうね。

  

スピード感をもってチャレンジ出来る世の中の課題

 

――大きな話を伺いたいのですが、現在の日本のITベンチャーを取り巻く状況をどう思いますか。

 

挑戦する人はすごく多いのですが、いつの時代も成功する確率は非常に低いなと思っています。それだったら、一世一代かけてと気負うのではなく、手持ち200、300万でサービスをぱっと作ってみて、2、3ヶ月やってよかったら続けてだめだったらやめればいいじゃんぐらいの気持ちでもいいと思います。

 

colishだって言ったら1週間あれば出来るんです。運用コストもそうかかる訳でもない。

 

チャレンジリスクもそう高くないし、スピード感を持って挑戦出来る世の中にはなっていると思います。

 

――日本で成功率が低いのは何故だと思いますか?

 

リブセンスとか成功してるじゃないですか。

 

※リブセンス…昨年12月に東証マザーズに上場した企業。経営者の村上太一社長が25歳1ヶ月と国内市場での最年少上場記録を更新したことで話題を呼んだ。リブセンスは求人・不動産・中古車販売などのインターネットメディアを運営している。 

http://www.livesense.co.jp/

 

このようにアイデアは斬新だけど、きちんと積み上げがきくサービスで成功するところもある。逆に、話題になるかならないか一発勝負みたいなとこでやるとそもそも成功率が高くない。

 

じゃあアメリカのシリコンバレーが成功率高いのかっていうと、消えていった数はもっとあるでしょう。

  

――上手くいったものしかニュースにならないですもんね。

 

日本の成功率が低いのかというと正確には分からないですが、他の国と比べてもあまり変わらないんじゃないかなという気もします。チャレンジ数が少ないというのはよく言われますが、その原因としてゼロイチのスターターに対してお金をつぎ込んでダメだったら次やればいいという文化が日本にないのは確かでしょう。僕も最初起業してやっていた時は全然稼げなったんですよ。しかし、時間とお金を投資したことで得たことの方が大きくて経験になったし、次にやる場合は同じことを繰り返したりはしないと思うんですよ。やはり、2・3回チャレンジできるのが一番いいんでしょうね。

 

最近、シードフェーズの企業に200~300万の投資が増えているのはチャレンジ数が増えてすごいいいことだと思います。

 

――何回もチャレンジするという文化が出来たらいいというのは同感です。日本の場合1回失敗すると、こいつ失敗したやつだからってなかなかお金を出さないような風土がある。シードに対して出資するような傾向が強まればそういうところに対する見方も変わってくると思います。そこがアメリカとの大きな違いなのでしょうか。

 

あと、もっと大きな話をしてしまうと日本の雇用システムを壊さないといけないと思っています。僕はリストラをしやすくしないと世の中よくならないと考えていて、会社都合でリストラしやすいというのは悪く聞こえるのですが、人を切れないから取れないんですよね。切りやすかったら企業側も採用しやすくなる、つまり人材の流動化が進み今よりもっと最適配置が出来るようになります。それが出来ないから今までやってきたことの延長で物事を考えてしまう。

 

ベンチャーとは少し違った世界かもしれないのですが、大きく人材を最適配置するという意味から考えるとそこは変えないといけないでしょう。今はアルバイトのクビを切ることすらままならないですからね。 

 

シェアハウスとは他人の視点を自分の生活に取り込むこと

 

――大学生へアドバイスをお願します。あるサイトでは「思いを言葉にする」ことが大切だと言われていましたが。

 

僕が大学の時にやっていたWEBサービスが「縁人」というサービスなんです。縁の人と書きます。人との縁を作るときは、自分のことを相手に知ってもらわないといけないし、同時に相手のことを自分が知らないといけない。「こうしたいんだ。」という思いを伝えないと伝わらない。だから思いを言葉にすることは必要だと思います。

 

――具体的な提案などを頂けたらとても嬉しいです。

 

ECサイトを一個作るのは楽しいし、多くのことを学べると思います。

 

※ECサイト…ECとは”electronic commerce”の略で、各種商品をインターネット上で販売するサイトのこと。

 

ECサイトにはビジネスの基本が全てつまっているんです。どういった年代・属性の人に売れば儲かるかをマーケティングして、その人たちにどうアプローチするか、どういう言葉遣いするか、何をそろえるか、いくらで提供するか、リピートしてもらうにはどうしたらいいか…という一連の流れを考えることはどの業界でも鉄則なので、何を商品として扱っても勉強になる。もはや、実際にお店を開くのとほとんど変わらない感覚ですよね。

 

このようにサービスを提供する側の視点を学生のうちから経験することはすごく大事だなと思います。ドロップシッピングでもなんでもいいので、まずは自分の身銭切ってやってみるのがいいのではないでしょうか。

 

※ドロップシッピング…インターネット上で商品の広告または販売を行う一形態。商品などをウェブサイトの閲覧者が購入した場合に商品の発送をウェブサイトの運営者や広告者ではなく製造元や卸元が直接行う。

 

それと大学生にはシェアハウスは当然おすすめです。シェアハウスとは他人の視点を自分の生活に取り込むことなので、ほんとに気づきが大きいんですよね。得るものはすごく大きいので、こいつは面白いなと思った人がいたらコンセプトがどうとかこうとかではなくていいからとりあえずやってみたらどうかなと思います。

 

思いつきなのですが、学生同士じゃなくて「ああ、この人すごいな~」と思える社会人がいたら弟子入りくらいのかたちでシェアハウスさせてもらったらどうでしょうか。そういう心の広い面白い社会人がいたら、いいですね。同じ空気を吸うことから学ぶことは非常に多いはずです。

 

――芸人さんなどはそうですもんね、「弟子にしてください。」という形はごく一般的ですよね。最後に就活に関しての小原さんの考えを聞かせて頂けますか?

 

僕は起業も会社に入ることも両方経験してきました。その経験から個人的に思うのは両方やってみるのがいいのではないでしょうか。無理して大企業に固執しなくてもいいと思います。現代の潮流に合わない考え方が蔓延っている企業も相当数あるので、それだったら数人のベンチャーに行ったほうが勉強になるなと今なら自信を持って言えます。

 

おそらく、大きな企業を経験して自分でベンチャーをやっているような人のところに行くのが非常にいいことかなと思います。自分で選択してチャレンジしているわけですからね。

 

 

 

1回も広告をうったこともなく、自ら掲載を依頼したこともないcolish。それは、正しいことと共感を得ることによって成り立っているサービスであった。

「これからはcolishを通じてこの世の中にシェアハウスをいくつ誕生させられるかという段階」と話す小原さん。

colishをきっかけとした新しい人と人との繋がり、そしてそこから生まれる限りない可能性に今後も目が離せない。

  

 

【インタビュアー・編集…長瀬晴信 カメラマン…生山絵美子】