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オプティマ・ソリューションズ株式会社

代表取締役 中康二さん

 

今回は大手企業に入社し多くの実績を残しながらも退社し、現在はプライバシーマーク・ISMS認証・個人情報保護のコンサルティング会社を経営している一橋大学OBの中康二さんに話を伺ってきた。

 

★学生時代から大企業入社に至るまで。

 

大学に入学した時点で、何をやりたいかはっきりとしていませんでした。最初は、せっかく大学に来たのだから勉強しようと考えていましたが、しばらく授業を受けてみた結果、内容が複雑な割には無意味に思えてきて、結局最初の2週間で勉強はあきらめました。中高時代、学園祭と新聞部の活動に精を出していたんですが、大学でも一橋祭委員と一橋大学新聞部に入りました。結局、やっていることは同じでしたね。

実のところ、中高時代はそれほど社交的ではなく、「一言居士」という感じでした。大学に入った後、寮に入ったこともあって、お酒を飲む機会も多く、次第に社交的になっていきました。そんな楽しい生活にも終わりが来ます。4年になり就活期になったのです。いろいろ落とされた挙句、ある商社に内定をいただいたのですが、なんと英語の単位を落として留年してしまい、もう一年大学に通うことになりました。カッコ悪かったです。

 

Lien:どうして商社を希望されていたのですか。

 

当時はバブル最盛期で、銀行や保険、証券など金融業界が大量採用を行なっていました。僕の同期も大量に金融業界に行きました。しかし、自分は何となく、お堅いイメージのある金融には行きたくなかったのです。それは今でも間違ってなかったと思っています。それで、漠然と商社にいきたいなと考えましたんですね。しかし、留年でそれはリセットされました。翌年の二回目の就活では、やはり金融は考えませんでしたし、商社に行くなら前年に内定をいただいた会社にお世話になるしかないから最後に回ろうと考え、最も実業であるメーカーを回ることにしました。そして、最終的に「こんな素晴らしい会社があるじゃないか」と宝物を発見したような思いでソニーに入社したのです。

 

Lien:「素晴らしい会社」とはどういった点で判断されたのですか。

 

メーカーといっても幅広くありますが、自分は製鉄、自動車、電機を中心に回っていました。製鉄に行ったとしたら、新規事業部門で働くことを考えていましたが、やはり鉄が全ての会社ですからね、行かなくてよかったと思います。次に、自動車の会社から強くお誘いいただきましたが、自動車は10年単位で考えても空を飛ぶようには思えなかったんですね。自動車では大規模なイノベーションは難しいと思いました。実際、ハイブリッドカーはすごいですけど、それ以外はすべて僕の想像の範囲内でした。

 

そして、私が電機メーカーであるソニーを選んだ理由は、電機、すなわちエレクトロニクスは商品の種類が多く、どんどん新しい種類の製品が登場していて、あらゆる可能性があると思ったことです。この業界なら、思いもつかないイノベーションが起こると思ったのです。実際、今のインターネットとか、iPhoneといった当時は想像すらできなかったものが次々と実現しています。それがエレクトロニクスなんですよ。あともう一つ、パソコンが家庭に入るだろうな、その時にはNECじゃなくてソニーだろうなと思いました。それでソニーに入社することにしました。

 

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★入社後から退社、そして起業へ。

 

社会人になって痛感したことは、企業に入るとやはり自分の思い通りにはならないなということです。ソニーに入社した初めは本社の人事部門に配属され、給与を処理する部署で働きました。事務処理やシステムの改良をしていくのは面白かったのですが、2年ほどで、労務に異動になり、組合との交渉に同席してひたすら議事録をとっていました。正直に言ってとても退屈してましたね。それで、人事部長に特別にお願いして、インターネットプロバイダの「ぷらら」を立ち上げる仕事に異動させてもらいました。当時はぷららという名前も決まっていない段階で、NTT、ソニーはじめとする複数の会社からそれぞれ数名ずつ人が集まったところからのスタートでした。ここでは、今でいうITベンチャーの立ち上げに加わることが出来ましたし、いろんな会社の人と議論し、取り決めしていくのはクリエイティブでとても楽しかったです。しかしまた数年後、ソニーはぷららから人を引き揚げることとなり、戻ることになりました。

 

ちょうど入社前に考えていた、パソコンが家庭に入る時代になっていました。そこで、パソコン「VAIO」のマーケティング担当の仕事をさせていただきました。最初は何をすればいいのか分からず苦労しましたが、次いで「クリエ」の担当をした頃には、「来年の手帳はクリエ」というキャンペーンが大きくあたって、とても嬉しく思いました。

その頃、ソニーとして初めて大規模な早期退職プログラムを実施するとの発表がありました。自分の年齢(当時の中さんは35歳)は対象範囲でした。また残念なことに、担当していたクリエが海外市場での不振を理由として撤退すると知らされました。そんなこともあって、まあ絶好の機会かなと思って、翌年の早期退職プログラムに応募し、退職金を資本金にして起業した次第です。

 

Lien:昔から起業することを望んでいたのですか。

 

実家が商売をしていたということもあり、小さいころからいつかは会社をつくって社長になろうと思っていました。それでも、ソニーに入社した頃は、出世して、偉くなって、という方向性を考えてましたね。でも実際には、大企業に入社すると同期が何百人もいて、ポストはそんなにありませんから、現実問題としてほとんどの人は上に上り詰めることはできないんですね。かといって、他人を押しのけて、足を引っ張って、出世するというのも性に合わないなと思いました。それで、いつかは退職して起業しようと考えるようになっていました。ちょうど、クリエの撤退の後始末をする一年間がありましたので、、何をして儲けようか、とソニーの社内を見渡して考えていました。小資本で始めるので、企業からお金をもらうB2Bのビジネスをしようと考えていました。

 

ある日、ソニーがある監査法人にお金を払って個人情報保護の監査をお願いしたという話を聞きました。ソニーのような大企業であれば監査法人に頼めばいいのでしょうが、もっと規模の小さい企業でも同様のニーズはあるに違いないし、全てが監査法人のような高い会社に頼むわけではないだろうから、自分たちにも仕事の機会があるのではないか、と思いました。それで、半年間ほどかけて個人情報法を勉強して、メルマガを発行したり、Blogを更新したり、情報発信を行うところから、起業準備を始めました。そして起業して今日に至っています。

 

★ビジネスプランとしてしっかり顧客がついてきた時期。

 

よくこのように考えている人がいます。最初に多額の投資をし、そこからお金を生み出していく、そのためにはまず借金すると。私は違うと思います。最初は10万円の売り上げをあげて、その10万円を使って次は20万の売り上げをあげ、その20万円を使って次は30万円、といったように徐々に規模を大きくしていくものだと思います。そうやって、歯を食いしばって事業を継続していると、相手からの信頼感が生まれます。その信頼感がリピーターを生み、リピーターの売上構成比が増えていく、同時に商品も改良していくということが重要だと思います。事業途中でお金がなくなってしまうのはお金の使い過ぎであって、支出を抑えなければなりません。リピーターからの受注が売上の底を支えるようになった時、事業として少しは安心していいかなと思いました。

 

★学生の個人情報に対する向き合い方。

 

基本的に個人情報保護法は事業者向けであって、個人の活動に対してはあまり関係がありません。しかし、法的に罰せられないとしても個人情報の取り扱い方を間違えると、苦情や不満が出て対人関係に支障をきたします。怖がる必要はありませんが、相手にしっかり説明して同意をもらうということが大切だと思います。最近問題になることはTwitterなどで必要以上に個人情報、自分のことだけではなく、他人の秘密なども、を書き込むという問題です。確かに、どこまで情報を開示するか、というこの選択は難しいですが、このことも相手の立場になって考え、自分がやられて嫌なことはしない、ということが大切です。また、見られているということに自覚的である必要もあります。

 

★学生へのメッセージ

 

お金というものは自分に一方的に与えられるものではないのです。お金をもらうには、自分も何かを相手に与えなければなりません。なので、お金持ちになりたければ、自分は相手に何を与えることができるのか、ということについてもっと考えて欲しいのです。これができる人には自然にお金が集まってきます。

 

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単純にいい会社に入ればいい給料がもらえる、というように考えている人は間違っています。自分が会社や、顧客に対して、何も与えなければ、当然ながらいつかクビになります。自分は会社に対して何を与えることができるのか、そしてその先のお客さんに何を与えることができるのか、ということをもっと意識するべきです。

 

では、何を与えればいいのだろうか。選ぶことは難しいです。昔のように農家の息子は農家と決まっていれば、むしろ迷いはなかったと思います。しかし、今では無限の選択の自由があるからです。だからこそ選ぶことは難しいのです。真面目に生きている人であればあるほど、困っているはずです。実際のところ、私も困っています。自分なりに、今の段階で考えていることは、やはり自分がやりたいこと、好きなことを選ぶしかないかなということです。そして自分も相手も楽しめるものがいいと思います。そのためにも学生の間にいろんな経験を積んで視野を広げることが重要だと思います。スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏の死が世界中で悲しまれているのも彼が多くのものを世界に与え、世界をよくしてきたからです。

 

 

 

今回の取材を通じて、「自分は相手に何を与えることができるのか」という想いを胸に刻んで、これからは安全領域から一歩踏み出し視野を広げていきたいと思いました。

それが出来た時、中社長のように、ジョブズ氏のように多くのものを与えることができるのかもしれません。

 

【インタビュー…長瀬晴信】