写真提供:柴田一生

写真提供:柴田一生

「学都仙台」。

東北の中枢都市である仙台市には、現在約5万人の学生が暮らしているといわれています。

加えて、人口あたりの学生数は13大都市中、大学院生で2位、大学・短大生で4位、専修学校・各種学校の学生数で2位というように、学生の多い街であることから名付けられました。

 

その名を象徴するようなイベント「学魂祭」が2015年11月14日(土)~15日(日)に宮城県仙台市青葉区の勾当台公園・いこいの広場で開催されます。

出演者も運営スタッフも全員学生。構想からイベントの企画、営業活動までのすべてをこなします。開催のための資金150万円はクラウドファンディングを利用して調達しました。

 

記念すべき第1回の学魂祭で実行委員長を務めるのは、今回のインタビューに登場する東北大4年の柴田一生さん(21)です。

 

柴田一生(しばた・いっせい)

1994年宮城県仙台市出身。東北大学経済学部経営学科4年。大学2年次より「ボランティアをもっと身近に」をコンセプトに掲げ活動するボランティアサークル「@plus(アプラス)」に所属。補佐として団体の仕組みづくりに貢献した。その後は、学生対象の被災地バスツアー「きっかけツアー」の企画・運営や、学生ボランティアを支援する学生団体「Gakuvo東北」の立ち上げを行うなど幅広く活躍している。現在は、2015年11月14日(土)~15日(日)に開催される、仙台市内7つの大学生が協力してつくりあげた合同学園祭「第1回学魂祭」の実行委員長として、日々奮闘中。

☆学魂祭公式HP http://gakkonfes.p-oh.me/  

写真提供:柴田一生

写真提供:柴田一生

 

 学魂祭とは、どのようなイベントなんでしょうか。

学魂祭は、仙台の高校生・専門学校生・大学生が力を総結集させたいわゆる「インカレ版の学園祭」です。

仙台の学生で構成されたグループ総勢42組がステージに立ち、バンド演奏やダンスなどのパフォーマンスを披露。また、美と健康をテーマにした学生団体「epi(エピ)」やボランティアサークル「@plus」など総勢20組が、気仙沼ホルモンやパンケーキなどのブース出店をします。出演者だけでなく、お祭りを運営するスタッフも全員学生。加えて当日は100人以上の当日ボランティアスタッフを招集し、お祭りを盛り上げていきます。プログラムの詳細はコチラ

 

 

 

 

大規模なイベントが毎週のように開かれる勾当台公園を舞台に繰り広げられること。加えてTV、ラジオ、新聞といった各種地元メディアに取り上げられていることも手伝って、地元仙台では話題を呼んでいます。「学都仙台」というフレーズを真っ向から体現した初の試みということで、周囲から寄せられる期待も大きいそう。それに応えるべくがむしゃらに動き続けます。原動力はどこから来ているのでしょうか。

  

仙台の学生の活気を市民に伝えることで、地域の活性化につなげたいんです。なぜ学生に限定したかといいますと、仙台は「学都仙台」という愛称が付けられる位、学生のパワーにあふれた街だから。僕自身の経験からも、そのことを肌で感じていて。大学2年の頃からしていた学生主体のボランティア活動やイベント運営を通じて「学生でもここまでのことができるんだ」という心から震え上がるような嬉しさや達成感を、なんとなくではありましたが感じていました。確信したのが、2015年4月に開催された「東北学生合同新歓」でした。

僕は合同新歓で実行委員を務めていて、何かに向かってまっすぐな姿勢で取り組んでいるたくさんの学生を見ました。彼らのパワーを総結集させれば、仙台を活性化するのに一役買うだろうと考え、2015年6月ごろから学魂祭の構想を練り始めたんです。

 

なんでもやってみることが大事。ボランティアで学生のきっかけづくりを

 

学魂祭という大規模かつ前例のない企画を立ち上げ、先頭に立って運営する一生さん。「人のいいところを見つけて、引き出していくのが好きなんです。」と笑顔で話します。

それまで一生さんはどんな道を歩んできたのでしょうか。 

 

もともと先頭に立ってリーダーシップをとるようなタイプではなく、どちらかというと、”いたずら”好きなやんちゃ坊主でした。みんなの気を引いて目立とうとする、クラスに一人はいるようなガみたいな奴で(笑)

中学時代の成績は中の上くらい。でも、受験勉強のために塾に入ってからは、必死で勉強しました。部活動で所属していた卓球と駅伝と並行してのことで大変だったんですけど、努力のかいあって、元の志望校よりランクが上の高校に合格することができました。

いざ通うようになってびっくりしたのは、クラスメイトの頭の良さ。僕の通っていた高校は宮城県で一番の進学校だったから、勉強もできて中にはスポーツや芸術でも賞をとるような人がたくさん集まっているんです。その中で僕は平凡な人間だった。でも、そんな環境下で高校生活を送っているうちに、人のいいところを見出だしていくという点については、誰にも負けないことに気づいたんです。

 

自分自身の役割をまっとうするだけでなく、周りを盛り上げチーム作りをしていく。何事にもひたむきに頑張る一生さんの姿を見た高校の先生の勧めで、当時所属していたクイズ研究会の会長になります。

 

初めてリーダーになって、組織を動かす経験をしました。ほめるときはほめ、意見を言うべきときは、しっかりと言う。部全体のモチベーションを上げるため工夫していく過程が楽しかったんですよ。すると一人ひとりが、自分のためだけでなく、周りを盛り上げるために動くようになった。自分がリーダー役をすることで、周りが良い方向に変わっていく。リーダーって、いかにメンバーの魅力を最大限に引き出せるかだとその時気づいたんです。

  

リーダーとして一つの組織を動かす楽しさを味わいながらも、大学入学当初は、キャンパス外に出て何かの活動をすることはなかったそう。塾講師のアルバイトにのめり込んでいた一生さんは「ボランティアに参加すれば可愛い子に出会える」と友人から聞いたことがきっかけで、大学2年の4月よりボランティアサークル「@plus」のメンバーになりボランティアを始めます。

 

写真提供:柴田一生

写真提供:柴田一生

 

 

ただ何となく過ごすだけの日々を変えたかったんです。せっかく自由に使える時間がたくさんあるんだから、利害関係抜きで人の役に立つことをできたらいいなと思い、試しに参加してみて。

 

実際にやってみたら、すっかりボランティアのとりこになったんですよ。お金のやり取りが発生することなく、人の笑顔が生まれる。笑顔を見ると、やってる自分たちも嬉しくなるし、また参加しようと思える。そんな素敵なサイクルを肌で感じることで力がどんどん湧いてくるから。いつの間にか、暇さえあれば活動の集まりには顔を出すようになっていたんです。2年次のときは、年間で少なくとも約100回ボランティアに行きましたね。

 

@plusは2011年1月に結成したインカレボランティアサークルです。直後に発生した東日本大震災に伴う「震災ボランティア」の需要もあり、一時はメンバーが約70人まで増えます。しかし時を重ねるにつれ、震災ボランティアとしての活動量は減り、支援の在り方が問い直されるようになりました。転換期を乗り越え、約150人を擁する宮城最大級のボランティアサークルとしての立場を確立させた立役者は、他でもない一生さんでした。

 

ボランティアを通じて、たくさんの素敵な人に出会い学びを得てきました。ですから、できるだけ多くの大学生にボランティアを体験してほしいと思ったんです。

僕が@plusの運営にかかわるようになってからは、復興支援に限らず様々なジャンルのボランティアに手を出すようになりました。活動は、海岸のゴミ拾いから「街フェス」のお手伝いまで多岐にわたります。

 

▲地域でイベントが開かれるときは、@plusの出番。「ボランティアの何でも屋」と言われるゆえんである。 写真提供:柴田一生

▲地域でイベントが開かれるときは、@plusの出番。「ボランティアの何でも屋」と言われるゆえんである。
写真提供:柴田一生

 

方針を大きく変えたのも、一生さんの「毎日を楽しくするきっかけを見つけてほしい」という思いからでした。

 

1,2回でもいいから、何かのボランティアに参加してほしいなって思ったんです。楽しかったら続ければいいし、ピンと来なかったらやめればいい。大学生活はあっという間に過ぎてしまうから、限られた時間を少しでも楽しく過ごせるようなヒントを見つける場として機能していけたら。数ある選択肢の一つとして考えてもらおうというスタンスでした。

 

それぞれで活躍する人々をつなげることで新しいアイディアが生まれる

 

ボランティアのため、宮城県北部に位置する気仙沼を訪れた一生さんに転機が訪れます。

当時気仙沼では、震災前の活気を取り戻すべく、地元の住民主体で様々な取り組みが行われていました。中でも、地元の高校生による有志団体「底上げYouth」が中心となり、観光リーフレットを制作する活動「地元高校生が気仙沼を恋人の街に!」は大きな話題を呼びました。

 

▲気仙沼の高校生に自分の将来に関して、自ら取り組み実現していけるきっかけをつくることを目的に開かれた「気仙沼創造カレッジ」では全国各地からやってきた大学生とともに地元の高校生と交流。(一生さんは写真最後列右)写真提供:柴田一生

 

気仙沼で生まれ育ち、地元を心から愛している彼らが「なんとかして震災前の気仙沼を取り戻そう」という気持ちで必死に活動へ取り組む姿を見て、なんとかして一人でも多くの人に彼らの姿を見てほしいという思いで大学生対象のバスツアー「きっかけツアー」を企画・運営しました。大学生が気仙沼の現状を目で見て感じられるだけでなく、高校生にとっても、先輩と話す貴重な機会なので、将来について考えるきっかけになります。

 

 ▲きっかけツアーという名前には「男女の出会い」という意味もかけられている。 写真提供:柴田一生


▲きっかけツアーという名前には「男女の出会い」という意味もかけられている。
写真提供:柴田一生

 

一生さんは「きっかけツアー」の活動の中、ある人から提案を受け「Gakuvo東北」の立ち上げに関わることになります。Gakuvoとは、日本財団が運営する、学生ボランティアを支援する組織です。活動をする上で障壁となる交通費などの経費を担保することで、学生でボランティアをする人を増やそうという趣旨で活動をしています。

その中でも一生さんが東北でGakuvoの活動を始めるにあたっては、自身が活動してきた上で感じた、東北ならではの学生ボランティアにおける課題を解決するため、動いたそうです。

 

東日本大震災以降、宮城県にはボランティア活動をするサークルや学生団体が多く立ち上がりました。

しかし、活動をしている人達は自分たちの団体の運営で精一杯なので、実際に会って意見交換する機会がなかなかありませんでした。互いの存在は知っていても実際にどんなことをしているかを知らないケースも多々ありました。

 

そこで、ボランティアをしている学生が繋がる場作りをするべく『コラボラ』という交流イベントをGakuvo東北では実施していました。Gakuvo立ち上げを提案してくれた方が会場のセッティングを行い、僕を中心とした学生メンバーが、宮城県内に点在する学生ボランティアサークルの関係者に声がけをし、開催に至りました。

 

ただ交流するだけでは、わざわざGakuvo東北として開く意味がないので、少しでも意義のある会にするため工夫を重ねました。違う団体の人同士「自分たちの活動における強みと弱み」を共有する機会を会の中で作ることにより、それまでの活動がよりよいものになったり、新たな動きが生まれます。

 

▲「コラボラ」を皮切りに、学生ボランティアをする人が交流できるような場づくりを進めてきた。 写真提供:柴田一生

▲「コラボラ」を皮切りに、学生ボランティアをする人が交流できるような場づくりを進めてきた。
写真提供:柴田一生

 

一人でも多くの笑顔を生み出す場にしたい

 

学生ボランティアのより良い環境づくりのため奔走、団体同士をつなげる活動をするなど新たな風を吹き起こしてきた一生さん。活動を通して身につけた経験やスキルを還元する場を求め、学魂祭実行委員長として走り続けてきましたが、苦しかったことも多かったそう。

 お祭りを通じて仙台の街を活性化するんだ!」

そんな思いから走り続けてきましたが、発足当初のモチベーションを保ち続けるのは難しいと感じましたね。

 

やっている間に、「大きなお祭りを開く」という事実に満足している自分がいて。目的と手段の逆転ですね。お祭りを自分で楽しもうという気持ちが前に出てしまうときがあったんです。例えば、スタッフおそろいのグッズやテーマソングを作ってみたり。

 

学魂祭に対する批判も少なくなかったそうです。

 

当事者になると、ビジョンが無意識でぶれてしまいがちになるんです。それを見かねた大人の方々から「何のための学魂祭なの?」、「仙台を学生の力で活性化って、ただの自己満足でしかなんじゃないの?」と厳しい言葉を投げかけられて「はっ」としたんです。「確かにそうだな」と。

 

写真提供:柴田一生

写真提供:柴田一生

 

 

学生の良さを見せるためには、どんな仕掛けを作れば効果的かというような「外向き」の目線で考えていなかったんです。もっと言うと、黒子になりきれていなかった。

 

周囲の声も取り入れながら、持ち前の努力と根性、人を巻き込む力で「学魂祭」を盛り上げていきます。

 

前例が無い取り組みで、目に見える成果があげられるのかすら、まだ分からない

その中でも、お祭りに来てくれた方にいかに喜んで帰ってもらえるかを第一に考えたイベント作りをしていこうと考えています。一人でも多くの人の笑顔が見たいから。

 

 

年を重ねるほど忘れてしまいがちな、がむしゃらに一つのことに向かって突き進もうとする。

一生さんは、小さいころなら誰もが持っていたそんな気持ちを忘れていません。

時には空回りすることもあるが、その姿を見ているだけで元気をもらえる。だからこそ、周りの人も手を差し伸べたくなってしまうのではないでしょうか。

 

2015年の11月14日~15日、仙台の学生の力を存分に感じることができる特別な瞬間です。みなさんもぜひ会場に足を運んでみてください。

 

 

インタビュー・文章/鈴木里緒 インタビュイー・写真提供/柴田一生

 

■第1回学魂祭

☆公式HP http://gakkonfes.p-oh.me/

☆日時 2015年11月14日(土)9:30~17:00     11月15日(日)9:30~17:00

☆会場勾当台公園 いこいのゾーン(野外音楽堂のある側)宮城県仙台市青葉区本町3-9

☆概 要A:ステージ…音楽・ダンス等(野外音楽堂)B:ブース…出店・展示