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「自己表現の一つでもある日本舞踊は、私の人生にとって欠かせないもの」

こう話すのは、私の高校時代の友人で東京藝術大学に通う古谷葵さん。彼女は幼い頃から自分の祖母の下(秀華会)で、日本舞踊の稽古に励んでいる。高校時代は、美大受験のため予備校に通う中、稽古もこなし、舞台に立つというハードな日々を送っていた彼女。そんな彼女にとっての「日本舞踊」に迫る。

《プロフィール》

古谷葵 1996年7月13日生まれ

跡見学園高校卒 東京藝術大学絵画科油画専攻

四歳から舞台に立ち、高校時代には名取を取得

滝川流 秀華会所属

最近では、秀華会の若手代表として「次世代地域芸能のつどい」などの舞台に立っている。

 

-日本舞踊との出会い-

四歳から日本舞踊を習っていると聞いたのですが、始めたきっかけはなんですか?

おばあちゃんが日本舞踊の先生なんだよね。おばあちゃんが先生で、ずっと身近だったんだよね。

練習しているところに入っていって、着物着せてもらったりして、四歳の頃には、舞台に立ったりもしたよ。おばあちゃんとは、敷地が一緒だったから私にとって近い存在だったんだよね。一緒に遊んでもらったりもしたよ。

じゃあ、自分がやりたいって言い出すというよりは、流れでやる形に?

どうだったんだろう。物心付いたときにはもう踊ってたからね。

やるのがあたり前ではあったよね。

今まで続けてこられた理由ってなにかありますか?

正直、(やめるという)逃げ場はなかったよね。

おばあちゃんと同じ敷地に住んでて、ずっと一緒にいるわけだからさ。

あと、見に来て下さる方も、一緒に習っている方々も、お年寄りが多くて、小さい子とか若い子とかはかわいがられるんだよね。小さい頃は、なにやってもかわいいから。褒められてかわいがられて、嬉しくない訳はないよね(笑)

でも、それが、中二、中三になってくると、先生から教わって言われた通りに自分が出来なかったり、先生みたいに表現できなかったり、楽しいだけじゃないなって、色々考えるようになった。理想とかも出てきて、お稽古に行くのが辛くて、あーやだなーみたいな時期もあった。

その時期は進路どうしようかな、とか考える時期でもあった。高校生になってくると、落ち着いてきて、大人になって、次はもっとこうしよう、次はもっとこうしようって思って続けられた。そうすると、自分にも余裕が出てきたんだよね。

そして、ある時、去年かそれぐらいにアーティストやアイドルが、自分達がこういう舞台に立てているのは、スタッフの方達のおかげです、っていう、ああいうのは決まり文句みたいなものだと思っていたけど、そんなことないんだなって気付いた。

一緒に練習をする良い手本であり、ライバルであり、同士である生徒のみなさん、見に来て下さるお客さん、舞台を用意して下さる裏方の方、着付けをして下さる方、そういう方々がいて、自分が舞台に立つことができるんだな、そして立つ意味があるんだなって、思うようになった。

見る人がいて、自分が一生懸命練習して、自分なりに完璧にして、舞台に望むっていう、ことの意味が分かるようになった。

 

-自信に繋がった、海外での舞台経験-

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                 (↑当時高校2年 オーストラリアで日本舞踊を披露した際の写真)

オーストラリア研修(高校時代)に行った時、日本舞踊を披露してどうでしたか?

オーストラリア研修に行く生徒の一人として、できること(日本舞踊の披露)はやるべきで、それに、ホストファミリーや現地の先生や友人へのお礼の気持ちとして、それから日本人学生として、日本の文化を少しでも伝えられたらいいなって思う。

見てくれた人が、そんなことあったな、見たなって興味のきっかけになってくれれば嬉しい。

ここで、海外でもちゃんと評価してもらえたことは、自信になったし、自分にとって、とても良い経験だった。日本だったら、舞台裏には先生や仲間がいるけど、一人だからね、全部自分でやらないといけないし。自分で髪結って、着物着て。

海外の方からは、具体的にどんな反応をいただいたんですか?

近くを通る人、皆が声を掛けてくれたよ。目立つしね。Amazing!Beautiful!とか言ってもらった!!

「さくらさくら」を踊ったんだけど、ホストファミリーのおばあちゃんは私から歌詞を聞いて歌ってくれた!歌詞は、紙にローマ字で書いて渡したんだよ。

 

-私にとっての日本舞踊-

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踊りは自分にとってどういうものですか?

踊りは今、一番、実感を持ってできること!

実感?

まぁ、毎回の練習でも、毎回の舞台でも同じなんだけど、今週の練習、今回の舞台はこうだった、次のは、ここをもっと改善しよう!っていう、踊りは意欲的に積極性をもっていける実感がある。

自分に取り柄がないな、と小さい頃からずっと思ってて、私はこれができます!と自信を持って言えるものがなかったのね。中学生くらいの頃は、それを気にしてた。でも、最近は、踊りが結構、自信をもてるようになってきたんだよね。

これが、私です!これが、私です!って言いたくて美大に入ったのも、美術をやろうと思ったのもそれがあるかもしれない。どうしたって、表現するものじゃん。絵とか、特に。

なんかな、自信?というか、自分が自分の存在意義を示せるものが欲しかったんだよね。これが私です!って言えるものが欲しくて。

美大に行きたいと思うきっかけはそこにあったんですね。

勉強は言い方が悪いけど、やってればできそうだったの。実際、できるかどうかは別としてね(笑)勉強はやってれば、できるかなって思っちゃって。ちゃんと、自分と向き合って、対峙して、苦しんで、っていうものが、私にとって芸術になったのかな。

絵は、自分としては得意じゃなかったの。デッサンとか白黒でやるものとかはそこそこできたんだけど、油とかは、油選択なのに全然できなかった。だから、できないものをやって、自分と向き合おうと思って、美大受験に走りました!

でも、そこから藝大に現役合格するってかなりすごいですね。

浪人はダメって、両親に言われてた。だけど私は最初の頃、藝大にしか興味がなくて、藝大行きます!と言い続けて、母と担任の先生を困らせてしまいました(笑)

予備校もピリピリした雰囲気じゃなくて、楽しくやってたよ。私は、マイペースだから周りをあんまり気にしてなかったしさ。それなりに、苦しんだりもしたけどね。でも、とにかく楽しかったのが一番、思い出としては大きいかな。

自分の中で、なんでこんなに自分がだらけてるのかな、とか思う時期もあった。そういうときは、気分転換で散歩したりもしてたよ。息抜きも少しは大事だなって思って。

あと、予備校でどうせ、沢山絵は描くんだから、学校では勉強しよう!と思ってたのも切り替えができて良かったかもしれない。

そういえば、国公立クラス(高2、3)を選択していましたよね。ということは、受験科目以外の勉強も頑張っていたんですか?

※国公立クラスの場合、彼女にとっては受験科目外の授業(数学、倫理、生物等)も受けることになる。

私文のクラスを選んでも受験科目としては特に問題ないんだけど、高1の時に、私文か国公立か選ぶときに本当に美大に進むのかちょっと迷って、どっちにも転べるかなって思って国公立のクラスに進んだ。数学とか倫理とかやってたね。倫理とかは話聞いてて面白かったし、自分の勉強としていいかな、くらいには思ってた。テストある時期は大変だったけど、話面白かったしいいかなって。 センター前は、予備校休んだりして赤本やったりもしたてたかな。

受験勉強期間中、日本舞踊は練習していましたか?

してたよ。11月の舞台(第十五回秀華会「舞踊のつどい」)も出ました!団体踊りと個人の一人踊りを披露させていただきました!

でも、それ以降はお休みさせてもらったよ。

結構ギリギリまでやっていたんですね。

言われてみれば、たしかにそうかも。

お生徒さんもいい人だから、雰囲気よくて行きたくなるんだよね。

舞台が終わったあとにはもっとこうやれば良かったなとか、ちょっと緊張しちゃって、思い切りできなかったな、とかはあるけどやっぱり楽しいからね。立ってるときは、緊張しちゃってるけど、舞台裏とかは結構楽しい!

最近は、焦らず、本気でやってみたら技が成功したりして、緊張してちぢこまってやるんじゃなくて、ちゃんと自分を表現できるようになったなって思う。余裕じゃないけど、自信を持って、練習でできたものが舞台でもできた。

あとね、おばあちゃんとの関係性も中2,3のちょっとつらい時から比べると、今のほうが距離が近くなった。自分から、もっと学びたいっていう気持ちが強くなった。もっとこうするにはどうすればよいですか、とか働きかけができるようになった。

身内だから多少甘えとかは今まであったかもしれないけど、最近は、先生とちゃんと先生の教えを学ぼうとする生徒になったかなと思います。

おばあちゃんは、後に伝えてくれる人を育ててるんだよね。だから、私が続けて、伝えてこういうのがあるんだなって知ってもらえたら嬉しい。踊りは、伝えてくれる人がいないとなくなっちゃうから。

自分にとって日本舞踊の伝えたい魅力はなんですか?

お着物って綺麗じゃない?でも、綺麗なだけじゃないっていうのを知っていくと、上品さがあるのが感じられると思うんだよね。そういうのを若い人にも知ってもらいたいなと思ってる。

着るお着物も曲によって違うし、結う髪型も違う。踊りの振りや速度、そして、人それぞれが出す雰囲気なんかも違うわけで、そこから色々な感情が感じられる。そういうのが、いいなって思う。

人の踊りを見るのも好きだね。見てると、なんだか感動する。

今の自分にとって日本舞踊は、自分の存在意義を示せるものでもあるし、自分が踊るのも好きなんだよね。だから、自分にとって自己表現の一つでもある日本舞踊は、私の人生にとって欠かせないものなんだと思う。

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 【写真:本人提供 写真・文:田村律子】