岡崎里奈3

 

 「いま、私たちが送っている生活ってひとつひとつが当たり前になっているけど、それってすごく幸せなことなんやなって思う」。

 

 まっすぐ前を見据えて、そう話してくれたのは岡崎里奈さんだ。彼女は、ラオスのノンテノイ村へ教育支援を中心とした団体Infinite Connection(以下、インコネ)の副代表を今年の9月まで務めていた。

 

 ありふれた毎日が幸せだと話す彼女の心には、どのような想いが込められているのだろう。日常での幸せについて意識するようになったのは、インコネの活動を通して気づいたことだという。

 

心が動く。当たり前は、当たり前じゃない。

 

 岡崎さんは小学生の頃に観た、あるドキュメンタリーで、世界各地に住んでいる同世代の子どもたちが学校に行けていないことを知った。そして、教育の現場が整っていない環境で子どもたちが学んでいる現状を目の当たりにする。

 

「なんで、当たり前に自分は学校に通っているのに、行けてない子がおるんかなって、その時感じていた」。

 

 幼いながら抱いた疑問が、国際協力に興味を持ったきっかけだったという。しかし当時の彼女には、国際協力は大人になってからどこかの組織に入らなければできないというイメージがあり、なかなか行動に移すことができなかった。

 

 それから、数年が経ち高校生になった彼女は1本の映画と出合う。2011年に公開された「僕たちは世界を変えることができない。」だった。大学生である主人公が、自分たちで資金を募り、カンボジアに学校を建設するというお話だ。この映画を通して、大学生になったらなんでも行動できることや、今まで知らなかったボランティアという新しい支援のカタチを教えてもらう。

 

 大学生になったら、自分みたいにボランティアを今まで知らなかった人に、もっともっと広めたい。その想いが、彼女を突き動かした。

 

Infinite Connection

 

 大学に入学し、ボランティアを行っている団体を探す。数ある団体の1つに、インコネがあった。インコネの活動は、ボランティアというカタチを広めたい彼女の想いと一致していたという。

 

 「今、ボランティアをしている団体や芸能人が学校建設していることってすごく多いんやんか。だけど、実際に支援する国に学校建設をしてほしいっていうニーズがないといけないし、その国を知った上で活動していかないとダメっていうのがあって。なぜかと言うと、現地のニーズなしに学校の箱だけが建つと、そこに先生がいない状態だったり、運営が回っていなかったりっていう現状もたくさんあるからやねん。それが、インコネができた意味でもあるんやけど」。

 

 日本の慈善団体やNPO・NGOがアジア各地に建設してきた学校の中には、現在決して少なくない数の学校が集会所となり、物置となり、廃墟となっているのだ。学校を必要としているのに、建設されても使われていない現状に疑問に感じたことがインコネのできた所以でもある。そして、インコネでは主にラオスにあるノンテノイ村に支援を行っている。

 

子どもたちの、夢の可能性を広げたい

 

 また学校建設を通して、インコネでは子どもたちの夢の可能性を広げるため教育活動も精力的に活動している。

 岡崎里奈13

 

 「ラオスって、絵本がすごく少ないねん。国内で、100タイトル数くらいしか発刊されていないから、学校にも全然本がない状態やって。その影響で、子どもたちが絵本を読む機会ってすごく少ないのが現状やねん。それって、子どもたちの想像力や思考力にも重要なんかなと思っていて。日本人は、ちっちゃい頃から絵本を読んできてるやんか。それを踏まえてプロジェクトとして動いているのは、日本の絵本にラオス語に翻訳してあるシールを絵本に貼って、最終的にはラオスに届ける活動もしている」。

 

 現在、日本とラオスを結ぶ活動をしている彼女だが、ノンテノイ村へ支援をしていく中で悩んだことがあったという。

 

 「団体に入って、現地に行くまで支援をしている実感が湧かなくて。この支援って、ノンテノイ村の人たちのためになっているのかな。今のままでも幸せなんじゃないかなって考えてた。だから、行くまでは自分にとって、ラオスはすごく遠い存在やったなぁ」。

 

 その疑問は現地に行ってからも、消えなかった。

 

 「自分が村人の立場になって考えたら今住んでいるところに知らない外国人が来て『じゃあ、学校建てます』って言われて、どう思うんやろって考えてん。自分たちにとって、いいように変わったら良くなるかもしれないけど、それが悪いように転ぶことだってあるんじゃないかなって自分の中で責任も感じた。だけど、実際に村人たちの話を聞いて、それはただの自分の考えやってことが分かった。村人たちは、教育が必要やと思っているし、子どもたちにも教育を受けてほしいっていう願いもあった。村人の話を聞いて、自分たちが関わることで、ノンテノイ村がもっと良くなるんじゃないかなって感じたかな。だからそこで解決はされたけど、現地に行って関わっているっていう責任の重さをすごく感じた」。

 

 岡崎里奈11

 

共につくる

 

 現在、インコネでは年に2回ノンテノイ村へ実地調査を行っている。そこで大事しているのは、「共につくる」という言葉だ。

 

 「ボランティアって、どうしても支援するほうが与えて、支援されるほうが与えられる、上下関係みたいなイメージがあるけど、そういうので支援馴れっていう言葉が生まれていて。だけどインコネが目指すのは、村が抱えている問題に対して、村人自身で問題解決に向かう姿勢を一緒に作っていきたくて。だから、学校建設でも業者だけじゃなくて村人にも手伝ってもらっていた。そこでも、一緒につくりあげているって感じたなぁ」。

 

 そして、2014年の夏に幼稚園建設を達成させたのだ。

 

 「幼稚園の開校式は、人生の中で一番感動したかな。開校式では、自分たちがこの村の人たちのことを思って今まで頑張ってきたけど、この村の人たちも自分たちのことを思ってくれているねんなっていうのをすごく実感できた。幼稚園が建ったことで、ずっと活動してきた想いが初めてカタチになった瞬間やったから嬉しかったなぁ。この時は周りにいる人たちのことも思い出して、自然と涙も出た」。

               

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幸せのありかた

 

  2年間、インコネのメンバーとして活動していくうえで彼女の中で感じることがあった。

 

 「『今、夢がない』とか『夢叶いそうもないから、諦めようかな』って言っている人って多いやんか。ノンテノイ村の人たちって、そこまでも行きついていないかなと思っていて。日本に住んでいる人たちが、夢諦めようかなって言っている時点でさ、夢を叶える環境だけはあるやん。たとえば教師になりたいやったら、諦めることは簡単かもしれへんけど教師になるためにできることはいっぱいあるやんか。村の子どもたちも、日本の子どもと同じように『スポーツ選手になりたい』、『警察官になりたい』、『先生になりたい』と思っていて。日本と違うのは、ノンテノイ村の子どもたちにはそれを叶えるための環境がないことやって。もっとより良い環境で教育を受けて、この子たちが夢の可能性を広げることのできる環境を自分たちで作っていきたいなって感じた」。

 

 幼い頃から支援に憧れを抱き、大学生になってそれを実現している彼女の原動力とはなんだろう。最後に、こんな言葉を残してくれた。

 

 「まず、行動することかなって思う。自分も行動して感じることも多かったし、団体としても想いをカタチにするためにすごく行動してきたかなって思う。だから団体で活動してきたことは、想いをカタチにするってことを証明できたかなと思っていて。踏み出しにくい一歩かもしれないけど、一歩って踏み出したらすごく大きなものになるんじゃないかな」。

 

岡崎里奈1

 

 前へ、前へ、進んでいく

 その積み重ねは、

 いつか大きなものに繋がっていく。

 ラオスへの支援を通して、

 自分自身を見つめるようになった

 彼女の言葉には重みがあった。

 
<Infinite Connection>
HP:http://infiniteconnection617.jimdo.com/
Twitter:@inconne617
Facebook:Infinite Connection

【文章・老後里香、写真・老後里香、岡崎里奈】