京都五条、高瀬川のほとりにある銭湯、「サウナの梅湯」。

切り盛りするのは銭湯をこよなく愛する24歳(取材当時)の若者と、
平均年齢22歳の助っ人たち。

全国の銭湯が衰退する中、
若い力で銭湯カルチャーを盛り上げようと奮闘する
「サウナの梅湯」番頭、湊 三次郎さんにお話を伺いました。

 

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湊 三次郎(みなと・さんじろう)

静岡県浜松市出身。24歳。(取材当時)

京都で過ごした大学時代に銭湯に通うようになり、京都にあった銭湯すべて、さらに全国約600箇所の銭湯に足を運んだほどの銭湯好き。
2015年5月5日、京都の銭湯、「サウナの梅湯」の番頭(経営者)となる。

 

24歳の番頭の誕生

 

湊さんが番頭を務める”梅湯”の歴史は非常に古く、開業は明治時代にまで遡る。現存する京都の銭湯でいちばん古いのではないかとも言われているのだそう。

その梅湯で学生時代にアルバイトをしていた湊さん。梅湯の廃業を聞き、番頭になることを決めたのだという。

 

「卒業後はふつうに就職して働いていたのですが、会社を辞めるタイミングと梅湯の廃業の知らせが重なり、梅湯をなんとかしようと思ったんです。

リニューアルオープンということで、店内も大きく改装しました。明るい雰囲気にしたり、外からも中が見えるようにしたり、”気軽に入りやすい”銭湯を意識しています。」

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(写真:梅湯twitterより)

これらの改装は、ほとんど湊さん自身の手で行ったもの。仲間の力を借りながらなんとかオープンしたものの、番頭としての仕事は苦労が多いという。

 

「番頭の仕事は、お風呂を沸かす薪の準備、浴室の見回り、掃除など、銭湯に関わることすべてに渡ります。重労働が多くて大変なのですが、何よりもしんどいのは拘束時間が長いこと。

営業時間はもちろん、そうでない時間も働きっぱなしなんです。僕もオープンしてからここで寝泊まりする生活をしていて、ほとんど家には帰れていません。」

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お湯は経費節約のため、薪で沸かしている。
薪によって燃える時間(30分~2時間)や燃え方が違うので、常に気にしながら蒔を追加。
早いものは30分で燃えてしまうので、気をぬくことはできない。

 

そんな湊さんを支えるのは、梅湯を通じて集まった「助っ人」たちだ。彼らは完全にボランティアで、平均年齢は22歳。学生、フリーター、ニートなど様々な背景を持った若者たちが梅湯に集い、湊さんの手助けをしている。

「お風呂に入るという目的だけでなく、若者が集まる場所にもなってほしい」と湊さんは語った。運営者・利用者ともに高齢化が進む銭湯界において、今こそ若い力が必要とされているといえるだろう。

 

銭湯の魅力って?

 

私たち若者にとって銭湯は馴染みの薄い場所、銭湯。大学時代にその魅力に取りつかれ、いまや番頭を務める湊さんにとって銭湯はどのような存在なのだろうか。

 

「銭湯は、ひとつのコミュニティといえます。地域のひとが集まり、銭湯という場所を通じての出会いが生まれる場所なんですね。

かつて家風呂が普及していなかった時代、町の銭湯は住民にとっての生活の場でした。そこには、子供からお年寄りまで、様々な世代の人が集まります。そういった場所ですから、銭湯では近所のお兄ちゃんやおじいちゃんが子供を叱ったり、宿題を教えたりといった風景が日常だったんです。」

 

銭湯は、子供の成長の場でもあるという。公共の場である銭湯には、みんなが気持ち良く過ごすためのマナーが存在し、それを守る必要がある。マナーを守らないと叱られ、反省し、そうやって成長していくうちに今度は自分が叱る立場となるのだ。こういった場所は、現在は少なくなっているだろう。

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「そして、銭湯は本音が出やすい場所でもあります。お風呂という場所は心身ともにリラックスできる場所ですし、裸という状態も心に影響するでしょうから。自分とは違う世代の方の本音の話を聞いたり、他愛のない話をしたりする経験は、人生をすごく豊かにしてくれると思います。」

 

大学時代の湊さんにとっても、銭湯はそういった存在だったという。

 

「好きかどうかというより、生活の一部でしたね。広いお風呂がやめられなくて(笑)。近所の銭湯に行って、お風呂でおじいちゃんの昔話を聞いて、夜風に当たりながらコンビニでアイスを買って帰る、っていうのが僕の日常でした。

いま思うと、銭湯は僕にとってのもうひとつの居場所のような存在だったのかもしれません。学校、バイトだけではない、銭湯という場所でのコミュニケーションは僕の人間関係を厚くしたように感じます。現在こうして番頭をするにあたって、昔通っていた銭湯を運営している方たちにお世話になることも多いですよ。」

 

”居場所が少ないこと”は窮屈なことである。誰にでも、「いつも一緒にいる友達には言いづらいこと」や「家族には話したくないこと」のひとつやふたつあるだろう。そんなとき、もう一つの居場所-たとえば銭湯-は、私たちの心を少し軽くしてくれるのかもしれない。

 

これからの梅湯

 

オープンして2ヶ月(取材当時)。今の経営状態はなんとか”プラマイゼロ”だという。

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「ちゃんと回せているとはまだ言えないと思います。きちんと利益が出るよう、もっとお客さんを増やさないと…。銭湯全体に盛り上がってほしいというのももちろんですが、まずはこの梅湯を復興することから始めたいですね。」

 

銭湯の客を増やし、銭湯の文化を活気づけるために必要なものは、”若者の力”だと湊さんは強調する。

 

「銭湯で若者の姿を見ることはほとんどありません。梅湯も、基本的に年配の方の利用が中心ですね。まぁ、今はそれでいいかもしれません。でもこの状態を長い目で見ると、それは銭湯の将来が無いことを意味しているんです。

お風呂好きの日本人が根付かせた銭湯という文化を、僕は無くしたくないです。これからもずっとあってほしいし、未来の人たちにも楽しんでほしい。だから、今こそ若い層にアプローチしたいですね。そのために、イベントの開催や、学生向けのドリンク割引を考えています。」

 

若者が銭湯に行かないのはなぜだろうか?おそらく”家に風呂があるから”というのが一番に挙げられるだろう。”他人とお風呂に入るのが嫌だ”という人もいるかもしれない。

そういう背景もあり、人生で一度も銭湯に行ったことのない人も多いのではないだろうか。全く行ったことのない場所は、どうしても行きづらいもの。筆者自身ほとんど銭湯には行ったことがなく、”なんとなく怖い””入りづらい”という印象を持っていた。

 

「”行ったことがない”という理由から行きづらい気持ちはよくわかります。でも、広いお風呂で足を伸ばす気持ち良さを一度味わうと、やめられなくなると思いますよ。

特に、一人暮らしの人にはおすすめです。狭いお風呂では疲れもとれませんし、週に1回くらいは銭湯に行く日を作ったらどうでしょうか。お風呂上りのコーヒー牛乳は、最高ですよ!(笑)」

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今回のインタビューの際、筆者も梅湯のお風呂に入らせていただいた。

荷物が多くて脱衣所であたふたしていたら、おばあちゃんが「荷物が多い時は(荷物カゴを)ふたつ使っていいんよ~」と言いながらカゴを渡してくれた。

そして、いよいよお風呂!体を洗い、大きな浴槽に肩まで浸かる。足を伸ばして、全身の力が抜けていく。心地よい感覚に包まれながら、「なんか色々ど~でもいいわぁ~」なんて気持ちになる。

お風呂上がりの身体にミルクコーヒーが染み渡るのを感じながら、「明日も頑張るかぁ」と思った。

 
 

日本人が生みだした「銭湯」という文化を愛し、
助っ人とともに若い力で梅湯を切り盛りする湊さん。

ひとりひとりのお客さんに声をかけ、感謝し、
笑顔を絶やさない姿が印象的でした。

「なんとなく疲れたな~」なんて時は、ふらっと銭湯に行ってみてください。

銭湯の広いお風呂に浸かって、いろいろな人の話を聞いて、
「また明日も頑張ろう」

きっと、そう思えるはずです。

 

梅湯公式twitter:@umeyu_rakuen
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【文章・写真:山下紗代子