福岡市中央区六本松。
その路地にひっそりとたたずむ
「たこ焼・回転焼・おこのみ焼 あーちゃん」

店内から舌鼓を打ちたくなるジューシーな香りが

 佐藤店外観

……漂ってくることはありません。

 

代わりに

あるときは
なんとも不思議な尺八の音色が

あるときは
誰かと楽しく話す笑い声が

あるときは
スピーカーを通して流れる懐かしの音楽が

開きっぱなしの入り口から
聞こえてきます

 

店主から名刺をいただいて、初めて店名が分かりました

中古楽器販売「ショップ 春」

7畳ほどの小さな部屋には

尺八、フルート、ギター、
トランペット、二胡、篠笛…
のような楽器だけでなく

ラジカセ、レコード、デッキブラシ、
段ボールに入った大量の洋服……

そして ダックスフンド一匹にインコが一羽。

この不思議空間の創造主、
佐藤正春さんにお話を伺いました

 佐藤

↑店主・佐藤正春さん(1950生)気さくな人柄から、ハルさんと呼ばれている

―たこ焼き屋で楽器販売!?いきさつが気になります……

 もともと僕はトラックのドライバーをやってて。61まで勤めとって、4年前に定年したんよね。で、義理の母がずっとここでたこやき屋をやってたの。でも母が3年前に他界して。で、お店どうしようかなって思いながらしばらくは放置していたんよ。「誰かに貸そうかなぁ」とか考えながら、たこ焼き屋の機械とか片づけて。壁にペンキ塗って、今まで自分の部屋に置いていた楽器をお店のほうに置いてみてね。とりあえず並べてみたら、なんか急に楽器屋さんしたくなっちゃった。それで「儲からなくてもいいや!中古楽器屋しよう!」って、もう思いつきよ(笑)

 最初は退職金残ってたから、いろいろお店をアレンジしてね。でも最近はそれも目減りしてきたから、午前中は4時間くらい介護関係のパートの仕事をやって、午後3時くらいからひとりでお店をやってる、だいたい毎日。お店っていっても、ここでぼぉっと音楽聴いたり、好きな楽器を気分で選んで演奏してるだけやけど。

 

―いやぁ、驚きました。思わずたこ焼き注文しちゃいそう(笑)

 ときどきそういう方がいらっしゃるんよ。「すいませ~ん」っていいながらお店覗いた瞬間にポカーンってして、「え!?ここで何されているんですか」って(笑)。そうでなくても、ドア開けっ放しやけんね。外から聴こえる楽器の音を不思議がって声かけられることは、日常茶飯事。あとは、入口のアトム(春さんの愛犬・ダックスフンド)が気になって、声をかけられることも多い。それで、世間話して、その場で尺八吹いてみせたら、「ほおぅ、やっぱ生の音はええですねえ……」って。

 やけん、散歩とかで道路を通るたびに話すひとだってたくさんおるとよ。でも名前は聞かん。名前とか聞かんでも、人間関係ば、繋がりば、つくれるもん、十分。

犬

 ↑愛犬・アトム かなり大人しい性格のため、小さい子どもにもよく声をかけられているそうだ

 

―どこから商品を入手されているんですか?

 ここにある商品はね、基本的に「預かり」。楽器をいらなくなった人が、ここに楽器を預けて、それが売れたときに売却額の一部をうちがいただいて、残りを預けたひとにお渡しするっていうシステム。販売の期限は決めてない。そんな急かして売ろうとしたって、売れんもんは売れん、売れるもんは売れる、そういうもんやけん。

 これが不思議で面白いんだけど、人の流れっていうか「気」ってもんがどうもあるみたいでね。いろんな人が楽器を預けにくるなぁって感じる時期には、いろんな人が楽器を買いにやってくる。でも、誰も来ないときには本当に来ない。だいたいうちは「こんな商品買ってください!」っておおっぴらに広告とか全くやってないから、どこからか噂を聞いてやって来られたり、ふらっと立ち寄って来られたりって方がほとんど。

 楽器と関係ないけど、洋服とか靴も売っているよ。とある親戚から、お店で扱わなくなった洋服をいただくことがあってね。ほとんど新品だから、かなりお買い得(笑)

 お客さんの「気」・「雰囲気」ってのがなんとなくあって。一回話しただけで、このひとはきっとまたお店にやってくるなってのが分かるんよね。で、そう感じたひとは必ずどっかでまた接点が生まれてくる。

 

―それにしてもいろんな楽器がありますね。習い事をされているんですか?

 音楽一家とかじゃないけど、じいちゃんは趣味で篠笛やっていたし、親父はアナウンサーの仕事を通して間接的に音楽に携わっていたから、今から考えるとなんとなく音楽は身近にあったのかなぁ。一番はじめに楽器持ったのは、ギター。23くらいのとき。フォークソングが流行って、1万くらいのを買って。でも教則本とかわずらわしかけん、もう耳で聴きながら「あ、この音だ」って合わせながらやってた。フルートとかトランペットとかも独学で。趣味で勉強するのに金かけたくなかったから。

 尺八はね、今一番メインでやってるけど、誰か先生に習ってたわけじゃないの。ただ何かの拍子に吹いてみたら、普通に音出せたんよね。それで、場所もとらんし持ち運びしやすいし、始めてみようと。最初のころは基本とか分からんけん、調べたり楽譜読んでみたりしょったけどさ、その通りしよっても途中で飽きると!もうしゃあしくて(笑)楽譜あったら好きなところで好き勝手吹けん!とりあえず気ままに吹こう!って。

※しゃあしい=うっとうしい

 

―店内の尺八、綺麗にディスプレイされていますね!

 そうやねぇ、全部が売り物ってわけじゃなくて(笑)。自分で使う用にね、何本か購入したこともある。あと、壊れた尺八買って、修理するの。竹だからヒビ入っているのもあるけど、自分で凧糸を使ってきつく締めれば、吹けるようになる。歌口(息を吹きかける部分)の形がガタガタになっていて吹けなくなっているやつは、ギターのピックを斜めに削って、割れ目にはめ込んで、自分で歌口をつくり直す。

 あと、そもそも自分で尺八つくることだってある。穴を開ける機械を持っているんだけどね、それを使ってデッキブラシの持ち手の部分に五か所穴開けて、歌口をつくったら、もう十分尺八のごたぁもん(ようなもの)ができるったいね。

佐藤尺八↑コレクションの一部。お手製のスタンドに立てている 

 

―名刺には「音楽家」と書いてありますが、どのような活動を?

 だいたいは尺八の演奏やね。でも、そげなビジネスのごたぁこつはしよらん。本当に「おとあそび」って感じ。レストランとか、とにかくいろんなところで、ジャンベ、サックス、ギター……そんときにある楽器に即興で合わせる。相手の演奏具合を聴きながら、相手が緩やかだったらこっちは激しく、相手が激しかったらこっちは緩やかに。もう、同じ演奏は二度とできん。それでいいじゃない!(笑)

 うちの近くに大濠公園ってとこがあるんだけど、そこに尺八とフルートと持って行って、とにかく即興で吹きまくることもあるよ。やっぱ外で楽器吹いたら気持ちがいいけんねぇ。

 あとは、細々とだけど、自分で吹いた尺八の演奏をYouTubeとかFacebookとかにあげてるね。自分で多重録音したり、機械で流したドラムのリズムに合わせて吹いたのを録音したり、これまた自由にやっとるよ。

 ↑演奏動画のひとつ

お店はずっと続けるよ。
尺八も。死ぬまで。

かっこよく言うなら、
生きがいにしたい。

このお店はじめてから、今まで働きよった頃には全然出会わんかった
いろんな世代のいろんな趣味をもつ人たちに出会えた。
それがもう財産。

うちのお店、気になったらおいで。

こげなスキンヘッドのおっちゃんでもよかなら、いつでん話するばい!

佐藤店内 - コピー

【文章・写真:馬田さとみ】