「クラスメイトに自分よりも、喋るのが上手かったり、面白いネタができるやつがおったりしたら悔しくなかった?」

「自分がいない場所で、笑いが起こるのがめっちゃ嫌いやねん」

 そう笑顔で話してくれたのは、今年の4月に、お笑いコンビ「うたたねもんじゃ」を解散した小坂さんと北浦さんだ。2人は、現役の大学生でお笑い芸人を目指している。喋ることが好きで、人を笑わせることができたらすごく嬉しい。ボケとツッコミの聖地である、ここ関西で、今日も笑いに向かって突き進んでいる彼らに話を聞いた。

 

笑うのが好きやし、笑わせることも好き

 


 

 高校時代から、お笑い芸人になることを決めていた小坂さん。高校時代もインディーズのお笑いライブに出演していた。そして、お笑い芸人の道に進むため大学2年生の時に、吉本興業の養成所であるNSC(ニュー・スター・クリエイション)に入学する。毎年、NSCの入学生は東京と大阪を合わせ約1,000人にも上るという。笑いを教えてもらう場ではなく、お互いを高めあう場所であるNSCで、彼は1年間お笑いを学んだ。

 

小坂さん:あの時は、NSCの中で売れようってよりも、NSCに行くのは芸人になるための一つの通過点と思っていて。入学するのは誰でもできるから、卒業してそこからどうするかをずっと考えていた。

 

 

 一方で、北浦さんは小学生の頃からお笑い芸人になりたいと思っていた。

北浦さん:毎週、土曜日に放送している新喜劇はいつも観ていたし、おじいちゃんに連れられて劇場までお笑いを観に行ったこともあった。昔から、笑うのが好きやし、笑わせるのも好きやって。

 しかし、勉強熱心な家庭に育ったこともあり、中学と高校は私立の学校に通い勉強に集中していた。それから何年か経ち、大学生になったある日、ふと小学校の卒業アルバムに書いてあった、あの頃に描いていた将来の夢を思い出した。

北浦さん:そこには、お笑い芸人って書いてあってドキッとした。そこから、また芸人目指そうと思ったかな。

 夢から目を背けていたことに気付いた瞬間、彼のお笑いに対する思いが再燃したのだ。

 

 2人の出会いは、大学で同じバスケットボールのサークルに入ったことから始まった。コンビを組んだのは、大学3年生の時。小坂さんがNSCを卒業し、お笑い芸人として精力的に活動していた時に北浦さんをお笑いの道に誘う。

小坂さん:面白いやつやなぁとは前から思っていて。なんかね、ツッコミにセンスが見えたから。そこに惹かれたかな。

北浦さん:誰、おまえ(笑)。

小坂さん:日本一のツッコミやと思ったんやけど。

北浦さん:おまえ、誰なん(笑)。

小坂さん:誰ってなんやねん。誰かは知ってるやろ(笑)。

北浦さん:(笑)。もともと、NSCに入ることは決めていたけど、一歩踏み出せずにおった時にこさっぷ(小坂さん)から「お笑いやるんやったら、一緒にコンビ組もうや」って言われて踏ん切りついたところはあるかな。

 こうして、お笑いコンビ「うたたねもんじゃ」が生まれたのだ。

 お笑いと向き合う日々 

 

 テレビや劇場から見るお笑い芸人は、その場にいるだけで雰囲気が明るくなり、たくさんの人を笑顔にしている。けれど、お笑い芸人という職業は毎日が楽しいものではない。くじけそうになった日もあったという。それは、面白いと思ってやったネタが全然ウケなかった時だった。

北浦さん:ネタ中に、自信のあるところがウケなかったら、もうええわって言いたくなる。早くその場所から出ていきたくなったなぁ。

小坂さん:自分のために、もうええわ、ってな。

 活躍の場を広げるためには、まずは作家さんやお客さんに認めてもらわなければならない。ネタを観てくれる人に笑ってもらうため、試行錯誤の日々が続いた。ネタ中は、ずっとお客さんに笑い続けてもらうことが理想、彼らはそう口を揃える。
 なぜ、大変な思いをするのに芸人を目指すのだろう? という問いに、彼らは満面の笑みで「自分達のネタがウケた時、すごく嬉しくて」と答えてくれた。

北浦さん:自己満やけど、いいツッコミとかボケを思いついたら快感やねん。これをやったら、おもろいんちゃうかなとか。面白くない時もあるんやけど、そういうのを考えるのがめっちゃ楽しい!

 

 2015年4月、うたたねもんじゃ解散
 

 先月、2人はそれぞれの道を歩み始めた。お笑い芸人という職業は、変わっていない。解散の理由の一つに、彼らのお笑いに対する意識の変化があったのだ。

北浦さん:うたたねもんじゃを結成した時は、とりあえず1年頑張ってみてダメやったら辞めようって軽い気持ちがあって。でも、コンビを組んでお笑いと向き合っていくうちに、だんだん本気でやりたいと思うようになってん。

 北浦さんは、この春からNSCに入学することを決意した。NSCで学んでいる間は、その中でコンビを組まなければならないという規則がある。

北浦さん:そういうのもあって解散しようと。言うのは心苦しかった……。

小坂さん:道は違えど、ゴールは一緒やからな。

 

 

 そんな彼らの「これから」を聞いてみた。

北浦さん:一番、近い目標で言えば、NSCで一番おもろいやつがとれる主席で卒業したいなぁ。あとは、NGK(なんばグランド花月)で漫才をしてみたい。関西の人やったら、だいたい知ってるくらいの芸人になりたい。その後は、東京行って売れて、日本全国の人たちに知ってもらいたい!!

小坂さん:それが、俺は結構ちゃうくて。劇場できっちりネタをして、お客さんが来てくれるのなら、俺は劇場でもいい。ネタを考えてやるのが好きやから。これからの目標としては、芸人で生活できるようになって、今芸人になることを反対している親を納得させたい。親が認めてくれるところまで行きたいなぁ。

 

お笑いとは○○

 

北浦さん:幼少期から慣れ親しんでいるもの。笑うのが好きやし、人を笑かすのも好き。今、なんでお笑いやってるんやろとか考えたことないなぁ。やりたいからやってる。只々、おもろい芸人になりたい!

小坂さん:小さい頃から、周りに野球上手い奴や頭良い奴とか、自分にとって叶わない相手っておるやん。みんなが戦っていない場所で戦おうと思ったら、俺は芸人っていう場所に行きついてんけどなぁ。俺は、その例えで「ちっこい村の村長」になりたいって言うてる。みんなと変わったことをやろうと思って、芸人になろうと考えてた。だけど、いざ挑戦してみたら周り全員が芸人やから、またここで変わったことをしないとあかんなって。これからは、まだみんながやってない企画を思いついて、自分でそれをやって。食い違いのコントやったらアンジャッシュさんとか。こういう分野は、こさっぷ。すごく小さくていいから自分だけのジャンルを作りたい。それが、DVDのレンタルの隅っこにでも一個あればいいなって。

北浦さん:それはあれちゃうの。ちっこい村の村長みたいな。

小坂さん:言うたな(笑)。

 

 

インタビュー中、彼らからたくさんのお笑いへの愛が溢れ出した。

ふたりは、まだスタート地点に立ったばかり。

ゴールは、まだ見えない。

お笑いに対する熱い思いがあるのだから、

きっとどんな形にも変わっていくのだろう。

これから、どんどん加速していく彼らに目が離せない。

ひとりのファンとして、彼らがどんな未来を描いていくのかが楽しみだ。

 

 

小坂優輔 Twitter:@sapofcos

北浦大樹 Twitter:@daaaijuuu

【文章・老後里香、写真・山下紗代子