どうして、こんなに気が利いて、責任感のある親友が、仕事決まらないのだろう。

 

就職活動中の疑問だった。

 

世間は「学歴」など一部の指標を優先し、就活生を判断していた。

 

一方で、選べる立場である高学歴の大学生は、100社以上必死にエントリーしている。

 

「なんだ、これ。」 「誰得なんだ。」

 

 

会社も学生もWin-Winになる採用システムを日本に。

 

いつか、必ず。

 

https://lh4.googleusercontent.com/KzMOQXrJLmcyucxooP2IOZvYxf4_YxuH5zPtSxjgrgTuBOBXFzOFSMzBAMdb644zM_02M09KEzl9i3aoIS7DaIDRcWKtykJB8IP5XgaOXXgVy46Gas7MyDRx1JSeKONWG29k2nQ

 

 

◆山上泰史(やまがみ・やすし)◆

19901月生まれ。奈良県生駒市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手IT企業のSEを経験し10万人以上に影響を与える大規模システムの新規開発から保守・運用まで一貫して担当。その後、金融経済メディア「ZUU online」などの運営を手がけるZUUで、人事を担当している。

ZUUのサービス内容は、こちらhttp://zuu.co.jp/service/webservice

人間はもっと多くの可能性があるし、そんなに単純じゃない。

 

人事 山上さんの将来の夢の一つは、

 

企業の採用において、学歴などの一部の分かりやすい指標だけでなく、

 

「人が持っている魅力が様々な面から評価され、総合的に判断される」時代を作ることだ。

 

原体験は、15年以上ずっと一緒に過ごした親友の就職活動だった。

 

親友は希望する企業のセミナーに申し込む事ができなかったんです。出身大学でフィルターがかけられていて、土俵にすら上げてもらえなかった。それが繰り返されていく中で、最終的に応募する企業を自分の中で削っていくようになりました。希望を持つ事も許されなかったんです。

 

「なんで、こんなに良い奴が土俵にも上げてもらえないのだろうか」と思いましたね。仕事もできて地頭も良いはずなのに。なんだこのシステム?って。

 

人生の中で受けた1回の学力試験の結果で、こんなに将来が制限されるのかと感じました。人って多くの魅力を持っているはずで、そんな単純に制限する事はできないじゃないですか。

 

もちろん学歴を軽視している訳ではありません。学歴はその人がその瞬間まで努力した結果なので、評価して当たり前です。でも、学歴『だけ』じゃないよね、という話です。

 

山上さんは、小中高とあまり勉強をせず、高3の春の偏差値は40に届かないレベル。

 

 周りの友達も、勉強に熱意持っていない人が多く、名の知れた大学に通う方はほとんどいなかった。

 

いわゆる高学歴と呼ばれている人は、自分とは頭の構造が全く違う、「宇宙人」だと昔は思っていました ()

 

しかし、周りのサポートと運のおかげで大学に入る事ができたのですが、そこから世に言う高学歴の人達に会えるようになりました。初めて接した時、「え!?普通の人やん」って思いましたね。

決して悪い意味ではなくて、地元の友達と変わらない、親しみやすい良い人で、別次元の人ではありませんでした。

 

 

確かに高学歴の方々はしっかり物事を考えている傾向にあるのですが、でも、責任感や人当たりなど、人間としての魅力で考えるとどちらもそこまで差は無いと思いましたね。

 

しかし就活を始めると、この二層の状況は全く異なりました。片方の層はセミナーもほぼ予約でき、大学別でのセミナーが開催されるなど、選択の機会が豊富です。もう一方はそういった機会が制限されている。選択する権利があまり提供されていません。

 

高学歴と言われる層の方々とそうでない方々で、人間として大きな差があるなら、就活で大きく差をつけられることもまだ納得できますが…同じレイヤーと考えていた私としては、納得いきませんでしたね。

 

高学歴も苦労する誰得な就活事情

 

かたや、地元の友達が得たくても得られなかった、

選択の権利を持っている高学歴の人たちも、

全くその選択権を行使できず、就活戦線で苦しんでいる光景を目にした。

 

選ぶ権利が豊富なはずなのに、100社くらいエントリーする人もいる。何故なら、絞って選択するための判断軸と、判断が出来るだけの企業情報を持っていないからです。

 

山上さんの夢の二つめは、

「自分の働き先を正しく選択できるような社会」を

実現することだ。

 

そもそも、人生の大半を費やす重大な選択を、同時並行で様々な企業を薄く見ながら一定期間以内に決めてくださいって結構無理がある気がしています。ですので、現在の就活には懐疑的ですね。そのレベルでの情報だけでは、企業の特徴などを深く理解して選定するのは難しいと思いますし。だから皆さん、とりあえずエントリーしてみますよね。わからないけど聞いた事があるから、駒は多いほうが良いから、といった理由で。その結果、数十社エントリーしてカレンダーが大変なことになっている。

 

企業も企業で、そこまで多くの候補者が一斉に応募してくるわけですから、忙しさは想像を絶します。徹夜して対応した…そういった人事の方の話を伺ったこともあります。

 

多忙な企業が少しでもオペレーションを簡単にしたい。そういった時に使用されるのが、明確に見える判断基準、いわゆる学歴ですね。とりあえず名の通った大学だからと言って選考フローを進めてしまう、企業側の事情を知ると、わからなくも無いのが現状です。

 

しかし採用した後に、「実はそこまでこの会社に行きたくなかったんです。思っていたのと違う」と言い残して、入社後3年以内に離れてしまう。個人は自身のキャリアを再選択する労力、キャリアへの不安などを抱えます。企業側も多大な労力を投下したにも拘らず、コスト回収する前に離脱されてしまい、損害を被る…

 

選択権が豊富な学生、受け入れる企業もまた、幸せになっていない。

 

「なんだこれ」と、正直思っています。

 

学歴のような分かりやすい指標だけでなく、もう少しほかの魅力で評価する社会。

その人にあった会社を選べる様な情報が十分に届き、ミスマッチが生まれない社会。

 

だれもが同意する理想だ。しかし、実現には大きな壁が2つあると言う。

 

 

ひとつは学生側、候補者側の問題です。体制の問題も含みますが、学歴でしか判断できないくらい、学生間に差がでるような経験が出来ていない事です。

もう一つ、企業側の問題としては、忙しすぎて人事が候補者を評価するだけの時間が取れていないことです。一定期間に驚く程の業務が集中するにも拘らず、人事担当の人手は基本的に少ないので、判断しやすい指標で処理を進めるしかないんです。

 

では、その2つの壁を乗り越える具体策とは

 

曖昧ですが考えているのは、1ヶ月以上の長期インターンの導入を、日本にある企業の30%が実施する事です。学生は実際に長期で現場を経験する事で、努力した方々は周囲と差別化できるトラックレコードを得る事が出来ます。企業側は、候補者を充分な時間で、かつ業務に則した目線で見る事が可能になります。

二つ目は、優しさ5点、責任感3点のように、ビジネスに必要なソフトスキルを定量化する事です。そこで測ったビジネス偏差値のようなものから、○○さんはこのような五角形のチャートです。この能力ですと弊社のインターンに合うと思いますので、来てください・・・という流れが定着させたいと思っています。

 

実現するために何をしていらっしゃいますか?

 

まずは、人事界隈で突き抜けた存在になりたいですね。なぜこのような採用システムなのか、対案は無いのかを本当に業務レベルで理解をするために、この領域で圧倒的になれるぐらい様々な経験をしたいです。その結果、発言力を持てるようになれば少し夢にも近づけそうですし。

 

そのためにも、新卒も中途もインターンも国内も国外も、全ての採用領域を経験して、豊富な知見を持った人事になることを目指しています。

 

叶える気満々で生きていますよ。

 

 

就活生に向けたメッセージ

 

月並みですが、自分に正直に生きてほしいなと思います。就活って企業と学生の騙し合いの場ではないし、着飾った候補者の展覧会でもない。

 

人事は企業の未来をかけていますし、候補者の方は自身の未来をかけている。であれば、本来はお互いの未来が最善になるストーリーを作る場のはずなんです。

 

騙し合いや嘘をつく場になってしまえば、企業側は後々ミスマッチで辞められ困り、候補者は低いモチベーションの元でパフォーマンスを出せない状態で働く。誰も得しない。

 

数えきれ無い内定を貰っても、最終的に入るのはたった1社。受かるための対策じゃなくて、受かりたい企業を見つけることに時間を使ってほしい。

 

そして、バイトでもサークルでも学生団体でも何でもいいので、私はこれをやりきった、「これが私なんです!」と言える何かを見つけてください。

 

内定がないのが負け犬みたいな考え、本当に嫌いなんですよ

 

しかし、採用担当者からよく聞くこのような「ありのまま論」に対し、

ありのままの自分を出すと、どこの企業も採ってくれないんじゃないかという

不安を持つ学生も多い。

山上さんは、そんな学生たちにこう投げかける。

 

まず、そのマイナスに捉える考えが違うかなと思っています。正直に言うと、落ちて何が悪いのかと思ってます。

 

落ちたとしても、『私の思考と違う企業だったんだな』とプラスに捉えてほしいです。そもそも”落ちる”といった言葉も嫌ですし。選別ができただけです。内定がないのが負け犬みたいな考え、めっちゃ嫌いなんですよ、本当に()

 

内定の有無で人生は決まらないし、小手先のテクニックで数社受かって、どやっ勝ち組!みたいな風潮に流されないで欲しいです。

 

「落ちてしまう」ではなく逆に、「会社の選別が進んで良かった、自分に合うための企業選びへ一歩前に進んだ」と考えてほしいですね。

山上さんの勤める会社、ZUUとは?

 

金融経済メディア「ZUU online」の運営をはじめ、

金融業界の情報の非対称性()の解消を目指す、注目度鰻のぼりのスタートアップ企業、ZUU

 

ZUUで山上さんはどのような採用活動を行っているのだろうか。

 

ZUUのインターン生はマッキンゼーやGSといった外資系金融会社に進んでいるため、

よりすぐりのエリートを集める方針をとっているイメージを筆者は持っていたが・・・

 

※情報の非対称性・・・財やサービスを売る際に、売る側と買う側で情報量に差があること。公正な取引を妨げるといわれる。

 

確かに弊社のインターンを卒業された方々は、外資コンサルや投資銀行などから内定を頂いている方が多いです。しかしそれは、インターンの中で圧倒的に成長してくれた結果だと捉えています。弊社のインターンは、大きな裁量権を任せながら社会で素晴らしい結果を出されてきた方々と、切磋琢磨できる環境です。その中で自主性を持ち、我武者羅に努力した結果が、内定先に繋がっているかと思っております。そのために、インターンをやりきれる熱量が見える方を採用していますね。

 

ZUUとして目指している方向と、候補者の方が望んでいる事が一致していない場合は、熱量が弊社で生まれないと判断して、他社のインターンを紹介しながら相談に乗ったりもしています。この子は弊社だと幸せになれないなと思って。

 

え、もったいないと思わないんですか?

 

「是が非でもとり行くべきだ!」と考えられている人事の方は確かにおられますが、私は違うかなと考えています。その方が、正しく判断できるような情報を提供し、本当にモチベーション高く、輝ける場所を見つけて欲しいと言うのを第一に置いています。

 

「君はこう考えているけれど、弊社はこういう考え方とは違うよ」ということは当然ありますので、その齟齬が残ったまま入社しても、双方にとって幸せじゃない状況になり得ます。それは誰も望んでいませんので、入口の段階でより望ましい方向に向けるように話をするようにしています。

 

考え方の方向性以外には何をみていますか?

 

熱量の源泉ですね。弊社のインターンは、合致する方にはかなり刺激的で成長できる環境だと考えておりますが、合わない方には正直つらい環境なのではと考えています。スピード感、裁量権、周囲のレベル、どれを見ても他社に負けているとは全く思いませんし、そのレベル感を維持・向上できるよう社員も本気で取り組んでいます。ですので、期待されるアウトプットの基準は高く、負荷も相当なものです。その負荷を乗り越えるための熱量は維持できるのかというのは最重要判断ポイントです。それを判断するために、この方のモチベーションはどこから湧いてるのか、その源泉を形成した原体験は何かを重要視しています。弊社に入っても、その源泉が枯れずに湧き続ける状態で負荷を乗り越えていけるかを、面談ではシミュレーションしています。

 

 

大手=安定を蹴って、ベンチャーで成長して個人の安定を図ろうと思っている学生へ

 

スタートアップ企業は依然として一部の学生に高い人気を誇っていますね。

 

そうですね。しかし、これは少し危険じゃないかとも思っています。よく「大手=安定期で成長機会が限られる、スタートアップ=裁量が大きく成長できる」というイメージをベースに、「昨今の経済状況は大手でも不安定だ!だからスタートアップで成長して個人の安定を掴み取ろう!」といった、スタートアップを神格化している風潮がありますが、ちょっと一石投じさせて下さい。

 

スタートアップに勤める立場なので言えると思うのですが、成長の前提には、「スタートアップという厳しい環境で『本当に走りきれる』のなら」という条件があるんですよ。本当にやりきれるのなら、成長する。それは断言できます。

 

その大前提をすっ飛ばして、安易に「スタートアップは個人の裁量が大きい、成長できる」といった言葉で、確証の無いイメージで、スタートアップやベンチャーに入社を決めるのは違います。これは企業側も正しく伝える義務があると思っています。

 

“裁量権が大きい、スピードが速い”、これは一見とても魅力的で、刺激的な内容に映るかもしれませんが、裏を返せば多大な責任が伸し掛かってきます。私も実際に勤め始めて気づきましたが、まず裁量権がかなり大きいので、責任の伴う意思決定をする機会が増えます。またスピードが速いので、その判断を短期間で下して次の業務へと進まないといけないんです。これがかなりキツイ。特に弊社ですとまだ従業員数が多くはないので、一人の意思決定が与える影響範囲が大きい。責任は更に重くなります。

 

その負荷に耐えるには、自分にはこれがあるから走りきれるという熱いものを持っている必要があります。熱量を持っている人だけが、辛い環境の中で成長できるのだと思います。

 

走りきるって口で言うのはかっこいいですが・・・

 

いやあ、勿論キツイですよ() 正直、キツイことの方が多い。

ただ、自分には日本の採用システムを変えたいという夢があったし、ここで辞めたら今まで応援してくれた人に顔向けできないと思って走り続けたからこそ、今があると思っています。

 

壁を超えないと違う世界が見えない。どれだけ超えていけるか、その風景が変わる瞬間が楽しいと感じる人はスタートアップに向いていると思いますね。

 

その子の人生がかかっているのに、そんなことできない。

 

山上さんの壁を越えた経験を教えてください。

 

自分が採用に関わった方が、ちゃんと自社と他社の魅力を伝えた上で、初めて入社してくれた時ですね。

 

念願の人事に就いたのはいいが、元々エンジニアで人と関わらない事をしていたので、何をすべきか全くわからない所からスタートしました。求人サイトに出しても人は来ない。人づてで出会った人を口説きにいっても、話すら聞いてもらえない。

 

説明台本を作って、夜に何度も鏡の前で練習しましたね。

そうしているとある日、ポテンシャルや想いはあるけれど、なぜその企業を選択したのか、私の中では腑に落ちない方と出会いました。

正直その選択の理由を突っ込んで質問しながら、弊社を無理やり魅力的に見せる事は出来たと思います。社会人と学生の間には、大きな情報の非対称性あるので、騙そうと思えば騙せてしまう。

 

でも、それは違うなと。その子の人生がかかっているのに、そんな事は出来なかった。だから、「ウチの会社は○○ということが出来る、しかし他の会社だと△△といった面白い事も出来るよ」というかたちで、口説きではなく情報提供と相談という形で、その方に接しました。

何度かその方の相談に乗り、話をしていく中で、弊社の魅力は嘘なく十分に伝えました。もちろんスタートアップに入る事の懸念点も、他社で出来る事もです。

その結果、最終的にその方は弊社で決めてくれました。嬉しくて半泣きしましたね() 

今まで伝えきれなかった魅力を伝え、かつ他社の話も伝えたにも拘らずでしたので、自分の中で一つ壁を乗り越えたかなと思いました。

 

 

雇用のミスマッチが生まれない社会を目指すという夢にこだわり、

 

自分のやり方を貫き通した結果の嬉し泣きだった。

 

最後に、人事の仕事の一番の醍醐味を伺った。

 

 

その人の人生に少し関わって、その人が少しでも可能性を広げること。

 

リスクでもあるし、責任も重いけどやりがいは大きい。まだまだ、これからですよ。

 

 

山上泰史さん。25歳。

 

これから2歩、3歩、更に上を登っていく姿を、応援したい。

【執筆:吉田健一 写真:山上泰史】