2015年5月8日、オーストリア・ザルツブルグにて
紙ヒコーキのパフォーマンスを競う世界大会が開催される。

それが「Red Bull PAPER WINGS 2015 World Final」。

日本代表として出場できるのは、たったの3名。

世界の舞台への切符を懸けた戦いが2015年3月15日、
神戸空港内ヒラタ学園神戸エアセンターで行われた。

1枚の紙に創造性を折りこんで、
夢を乗せた紙ヒコーキが世界を目指す。

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©Content Pool/Jason Halayko

 

Red Bull PAPER WINGSは、大学生及び専門学校生を対象にして行われる紙ヒコーキ世界大会。

「最長飛行距離」、「最長飛行時間」、「曲技飛行」の3部門で競われ、各部門で1人ずつが日本代表として、世界85カ国から代表が集まるWorld Finalに出場することが許される。

3月15日、日本全国11箇所で行われた地方予選を勝ち抜いた学生たちが神戸エアセンターに集結。オーストリア・ザルツブルクにて行われるWorld Finalへの出場権をかけた熱い空の戦いが繰り広げられた。 

今回は、大阪代表としてJapan Finalに出場した3名の選手に密着。それぞれのショートインタビューを通して各部門の魅力に触れつつ、彼らと紙ヒコーキを繋ぐ物語に迫る。

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最長飛距離部門大阪代表・渡辺一裕(立命大学4年生)

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©Content Pool/Jason Halayko

 

大会公式のA4用紙を折り曲げることのみで作られた紙ヒコーキを使用して競われる、最長飛距離部門。各参加者にはそれぞれ3回の投擲が認められ、1番良い記録が採用される。

2012年に行われた前大会では日本代表として世界大会に出場し、4位となった渡辺。彼が飛ばす紙ヒコーキは、40mの距離をゆうに超える。この飛距離の秘密は、いったいどこにあるのだろうか。

まず紙飛行機ですね。試行錯誤を重ねながら無駄がなく、自分に合った紙飛行機を作り上げています。 

そして遠くに飛ばすためには、身体をどう使うかも重要になってきます。飛ばす角度を考えて、いちばん自分の力が紙飛行機に伝わりやすいフォームで飛ばしています。

僕は、自分の大きい身体を生かして、体全体をバネにして飛ばしています。

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2大会連続の世界大会出場を目指す渡辺。元日本代表として臨む今大会は、記録を出すことはもちろん、周りからのプレッシャーとの戦いでもある。

自分の番が来るのを待つ間は、まるで心臓の音が聞こえるようでした。でも、紙ヒコーキを手にスタートラインに立つと、不思議とそれが無くなるんです。

その瞬間は、競技者というよりもパフォーマーになった気分でした。「見せてやる!」っていう思いが自分の中から湧き上がってきて、ゾクゾクしましたね。

結果は2位。記録、47.5m。1位の記録は47.6m―その差は、わずか10cmだった。

正直、悔しいです。でも楽しかった。今は、それだけで十分です。

わずか10cmの差で世界への切符を逃した渡辺。割り切れない表情をしながらも、「楽しかった」という彼の言葉は嘘ではないと感じた。そんな渡辺にとって、紙ヒコーキは”原点”であると語る。

僕はいま、大学でロボットの開発に取り組んでいるのですが、こういったモノづくりの原点は、紙ヒコーキなんです。

よく飛ぶ紙ヒコーキを作るためには綺麗に折ることが欠かせないのですが、この精密な作業がモノづくりに共通しているんですね。

自分で作って自分で楽しんだ最初のモノが、紙ヒコーキ。小さい頃のその経験が、いまの僕を形作っています。自分がスーッと飛ばした飛行機を見つめている時間が僕は大好きなのですが、それは今も昔も変わりません。

紙ヒコーキを飛ばす瞬間、人は誰でも子どもになれる。世界への切符は逃したものの、未来の道への背中を押した紙ヒコーキは、これからも真っ直ぐに飛び続ける。

 

最長飛行時間部門 大阪代表・秋山慧(立命館大学4年生)

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自分の真上に飛行機を飛ばし、長く滑空させることで滞空時間を競う最長飛行時間部門。より高く、より長く。その世界の深さを、秋山は熱く語った。

とにかく、奥が深いんです。滞空時間を長くするには、どれだけ長く効率的に滑空できるかを考慮しなければなりません。グライダーと同じですね。

紙飛行機といえども、大きい飛行機と同じように流体力学、航空力学が通用します。もちろん僕の紙飛行機も、それらを踏まえています。

力で投げるわけではないので、身体の大きさも関係ありません。

競技で使われる紙ヒコーキは、大会公式の紙を使用してその場で作られたもの。秋山は、3種類の紙ヒコーキを手にスタートラインに立った。つまり、それぞれ3回の投擲で違う紙ヒコーキを飛ばしたのだ。

結果は10.0秒。13.9秒を叩き出した1位の林選手には、及ばなかった。

僕は前回のJapan Finalにも出場しているのですが、今回の方がレベルの高い大会だったと思います。今回は3種類の紙ヒコーキを作って、飛ぶか飛ばないかの賭けのような飛行機を作ってきたのですが、それが今回は飛ばない方が出てしまいました。

会場のコンディションも難しかったので、調整しきれなかったかな、というのが正直な感想です。でも一発勝負ですからね。後悔はしていません。

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©Content Pool/Jason Halayko

 

紙ヒコーキに対して、熱い思いを持つ秋山。そんな彼にとって、紙ヒコーキとはどんな存在なのだろうか。

僕にとって紙飛行機は、一期一会の存在です。

紙ヒコーキは、同じ折り方をしても決して同じ機体にはなりません。毎回飛び方が違いますし、まったく同じ飛行機でも飛ばす人によって違う飛び方をします。思い通りにならないことも含めてすごく面白いですし、本当に奥が深い世界だと思います。

僕は今年で大学を卒業するので、学生生活に区切りがつきますが、これからも記録を伸ばすために頑張りたいと思っています。

幾度の試行錯誤を重ね、計算し尽くされた機体。秋山の空への熱い思いは、途切れることはない。

 

曲技飛行部門 大阪代表・野間亮介(同志社大学1年)

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曲技飛行部門では、事前に作成した紙ヒコーキを会場に持参し、さまざまな道具やアイテムを使用して工夫を凝らすことができる。

機体の構成、芸術性&デザイン性などの創造性、そしてフライト時のパフォーマンスの3つの基準で評価される、非常にエンターテイメント性の高い部門である。

飛行機をテーマにして、ダンボールで装置を作りました。制作期間は2日間くらいです。あっという間ですね(笑)。自分自身が主体になってパフォーマンスをしたいので、基本的に作った装置を身に付けています。

フリースタイルフットボールやバスケットボール、マジックなど、この部門ではそれぞれ個性のあるパフォーマンスを披露。全体的にクールな雰囲気の中、野間は大阪予選、全国大会ともにいわゆる“お笑い系”のパフォーマンスで観客を沸かせた。

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©Jason Halayko

 

観客のみなさんが笑ってくれたのが、何より嬉しかったです。パフォーマンスについては自分自身はほとんど考えてなくて、もうその場のノリだったんですよね。とにかく楽しんでやろうと(笑)。

爽やかな笑顔が大変印象的な野間。今回の大会のみならず、人を楽しませることが大好きなのだと言う。

人を楽しませて、人を笑わせることが、本当に好きなんです。そうしていると、自分が楽しいからです。理由はそれだけなんですよね。ひとりが笑って、みんなが笑って、そういう空間を作るお手伝いを僕ができたらいいと思います。

惜しくも世界大会への切符を逃した野間だが、誰よりも自分自身が楽しむことによって、“笑いの空間”を作り上げた。野間の放った紙ヒコーキを見つめる観客の目は、皆子供のようだった。

今大会で優勝し、World Finalへの切符を手にしたのは、最長飛行距離部門で47.6mを記録した加治屋祐輝(日本経済大学2年)、最長滞空時間部門で13.9秒を記録した林洋平(京都大学大学院2年)、そして曲技飛行部門でフリースタイルフットボールと紙ヒコーキをうまく組み合わせたパフォーマンスを披露した富永正道(東海大学3年)。

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©Content Pool/Jason Halayko

 

彼らが日の丸を背負って、5月に行われるRed Bull PAPER WINGS 2015 World Finalに出場する。ニッポンの折り紙文化を、世界の舞台で魅せてくれることに期待したい。

 

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©Content Pool/Jason Halayko

 

1枚の紙が創り出した熱い勝負と、数々のストーリー。

より高く、より長く、より遠くへ。
大学生によって空で繰り広げられた熱い戦い。

紙1枚で世界に挑む日本の学生から、目が離せない。

【文・山下紗代子