小母内さんトップ編集版

 

 

関西を中心に活動する「All教育フェスタ」
教員志望の学生が価値観を共有し、広げる場作りが行われている。

その統括を担当しているのが小保内 太紀さん。
話を聞くと、彼は教員志望ではないと言う。

 「僕は社会学で生きていく。」
社会学を専攻し、社会学者を志す彼が教育団体で活動する理由とは。

「プロフィール」
京都大学教育学部3年。青森県出身。
お笑いを愛し、野球にも精通。熱狂的な日本ハムファンである。

 

「僕はもともと教員志望じゃないんですよ。もともと学者になりたくて。
社会学を専攻しているんですが、大学院の博士まで出なきゃいけないので、5年間院にいなければならない。
学部と合わせれば9年間。それだけ長い間学生でいて、そのあとも大学に残るわけじゃないですか。そうすると、実社会との接点ができない。」

 ―社会との関わり方に危機感を覚えた彼はその実践の場を求めはじめた。
しかし、なぜ彼は数ある学生団体のなかでもなぜ教育団体を選んだのだろう。

 「僕は学ぶこと、知ること、伝わることが好きな人間。
今、教育学部にいますけど、実は学部だってどこでもよかった。
数ある学生団体を運営する中で、教育を選んだのは全く偶然。」

―その選択に根拠はあった。
教育も社会の根本を探る1
つの分野、あらゆる専門が集まりこの社会は構成されている。

「僕はどの分野も同じぐらい有効だと考えています。どの分野を突き進めても、根本の考え方は同じ。
それはどうやって生きるか、社会はどうあるべきか、という部分。だからこそ分野の選択に入口はなんでもよかった。」

―彼の専門は社会学。
では、彼は教育団体において社会学の立場からどのように活動するのだろうか。

菩薩拳

「左手で握手しながら、右手で殴る。」

 

「目標設定や思考段階でのミスに対して、第三者の目線から指摘していく人が団体には必要だと考えています。
その立ち位置は社会学が合っている。一旦距離を置き、正しいかそうでないかを判断し、綻んだ部分へ石を投げていく人。そういう人に僕はなりたい。」

―指摘は時に勇気が必要になる。
物事が上手くいっているとき、小さな綻びは見落としがちだ。
しかし、彼はどんな小さな綻びも見逃さない。

「友好関係は保ちつつ、間違っている点は指摘し続け、団体に還元していく。
お互いに対話を重ねながら、自分の考えが絶対ではないという相対化を行い、お互いの共通理解を構成し、その精度を上げていく。
疑問を投げかけ続けながら、主張はしないというのが教育フェスタでの僕のスタンスです。」

―自分の立ち位置を自覚し、その生き方に対して妥協を許さない。
その姿勢は、「社会学」で生きる覚悟によって成り立っている。

「学生はよく『やりたいこと』という言葉を使う。
でも、僕は『やりたいこと』ではなく、『本当にやらなければいけない切実なこと』に取り組むべきだと思う。
興味や関心、好き嫌いのレベルではなく、覚悟をもって打ち込む対象を持つ。それが自分にとっては『社会学』だった。」

小母内フェスタ2

学生は学生を変えられる。

 

「学生のうちには社会を変えられない。少なくとも、僕の力では。立場も、地位も、お金もない。
だけど、あきらめるわけじゃない。社会は変えられなくても、学生は学生を変えられる。」

―後の人生を豊かにするつながり。
そんなつながりを培う場を彼は作った。

「横のつながりである学生同士で話す中で、お互いが変わっていく。そんな理想的な場を作っていくことから始めたい。
そうして形成された横のつながりが30代、40代、年齢を重ねていっても維持されていくこと。
後々本当にみんなが自由に動ける環境になったときにもそのコミュニティは続いていることが理想的ですね。」

―その場作りの1つとして彼は「教育フェスタ」に想いを込めている。

「パズルは1個1個のピースを合わせていけば1枚の絵が完成する。ピースをばらしたとしても、また同じ絵ができる。
でも、『教育フェスタ』という場は毎回ピースとなる参加者や運営が違うし、そのピースの集め方や配置によってどんな絵ができるか変わる。
例え同じメンバーでやっても、季節や雰囲気によって出来は変わるし、全く予想もしなかった絵ができあがる。

ただ、回を重ねていくと、ある程度メンバー構成を見ればどんな場になるか想定できるようになってくる。
だけど、毎回その想定を少し上回っていく。そんな期待を教育フェスタには込めています。」

―新たな可能性、価値観を引き出し共有する場を目指す。
その想いは場の構成にも表れている。

「教育フェスタという場に縛りはありません。
プログラムは存在しますが、1人1人に対して価値観の強制をすることはなく、あくまで考えの1つとして提示するようにしています。
お互いがお互いのものを持ち寄っていって、何か新しいものを生み出していく場にしたい。

だからゲストもお呼びする際も、「オルタナティブ教育」をされている方をゲストとしてお呼びするようにしています。
既存の学校教育ではあまり見られない、新しくユニークな考え方やその用い方を学ぶことができるように。

いつでも入れるし、いつでも抜けられる。
集まりたい人が集まって、何かが生まれていくような場を目指しています。」

小母内フェスタ3

すべて生活の延長線上に。

 

―「最後に1ついいですか?」
そんな彼が最後に話してくれたのは将来、自分がおじいさんになったときの話。

 物知りなおじいさんになりたいんですよ。孫の自由研究を手伝えるような研究者のおじいさんってかっこいいなって思って。
『おじいさんと一緒に自由研究やったよ!』って孫に言われるって良くないですか?
人に何かを貢献するだけではなく、自分の幸せを確保したうえで社会に関わるって。

『凄く良いことをしているけど、不健康そうな人。』それは人間として不健康だなって。
心身が元気で、安らかな状態が大前提。その状態を維持するためにいろんな活動がある。

だから、僕は結婚もしたいし、家族も持ちたい。おじいさんとしての夢もある。
それを叶えるために社会学者になりたいですね。

 

くっきり小谷野

 

1時間30分に渡るインタビューをあっという間に感じるほど
軽快なトークと絶妙な間を展開してくれた小保内さん。
彼が仕切る場作りにもこの話術と間が生かされているのだろう。

 

「社会学者の次になりたかったのは芸人なんですよ。」

納得。
事実、インタビューの半分は野球と芸人の話だった。

「THE MANZAIは『馬鹿よ貴方は』が獲りますよ、これ書いておいてください。」

確かに書いた。
予想もさることながら、
彼が今後生みだしていく場が楽しみである。

【写真提供: 小保内 太紀】
【文章:
江口 春斗】