IMG_1252

経済格差が広がり、生活保護受給者数が増加し
子ども貧困率が2012年には過去最悪の16.3%を記録。

1人親世帯の子ども貧困率はOECD加盟国のなかで トップの58.7%を記録した日本。

子どもの成育環境に影響を与える「貧困」に 学生団体として、
そして今後は「社団法人」として
立ち向かう集団が愛知に存在する。

「アンビシャス・ネットワーク」の田中嵩久さんにお話を伺った。

 

田中さん1

子どものと過ごす時間。

朝早くから夜遅くまで働く親。
生活レベルの向上のため、働く時間は増えていくが、 子どもと親が過ごす時間は少なくなっていく。
そんな
「貧困」は、子どもたちの生活から「肯定」を奪い、「否定」を生み出す。
 

貧困を抱える子どもたちは自己肯定感が低い子が多くいます。ランドセルや絵の具道具などを買うことができない。修学旅行や友達と旅行に行くことができない。「否定」の選択を強いられるうちに、「自分なんてどうせ」という気持ちになってしまう事もあります。

そういった子に対して自己肯定感を高めていくには、自分の思いを受け止めてくれる場や褒められる経験が必要です。貧困家庭や、特に一人親家庭だと、そもそも親と子どもが共に過ごす時間が少ないんですね。ご飯を作ったり、兄弟の世話をしたり、宿題をいつも以上に頑張ったりしたとしても、親はその場を見ていない。

 

だから努力を褒められることが少なく、手伝いや世話が「当たり前」になっていきます。子どもたちは褒められることで、自分が出来ていること、強みに気づきます。出来ない」から「出来る」ようになるためにはその過程を認めてあげることが重要なんです。

―もちろん家庭事情によって、実現の厳しい希望もあるだろう。

だからこそ、家庭の代わりに希望を聞く存在が子どもたちには必要となる。習い事に行きたい、部活をやりたい、誰しもそれぞれ希望がありますが、お金がないために、希望を否定され実現できなくなる。

希望を持つことは努力の支えにつながる。高校進学にしても、仕事や大学、部活といった「実現したい未来」があるから勉強への活力が湧く。しかし、経済的な理由で私立高校の受験が出来ず、自分の希望ではない、先生や親の勧める高校を受験せざるを得ない子も多い。

だからこそ、子どもたちの希望を尊重し、子どもたちの失敗も温かく見守る未来を見据えた支援を行っています。

田中さん2

え、えられ。

―では、具体的にどのような支援を行っているのだろうか。

主に学習サポートには「学習支援」と「バウチャー」という支援があります。バウチャーとは貧困の子どもであっても一般家庭と同じ教育を受ける権利があるという概念で進められている、学習面のサポートです。学習支援は大学生が主体となり、勉強だけでなく、季節毎のイベントや誕生日会も行い学びの中で子ども達の居場所支援を行っています。

※バウチャー:ここでのバウチャーは、寄付などの民間資金を原資として、 経済的な理由のために学校外教育を受けることができない子供を対象とした、塾、予備校、習い事、文化活動、スポーツ活動などに利用可能な学校外教育バウチャーを指す。

―特に「アンビシャス・ネットワーク」で行われている支援は学習支援。 その学習支援は「家庭の支援」と似ていると話す。

私たちの活動は生徒の希望に寄り添う学習を行っています。学習といっても幅広く、メインの5教科や副教科だけでなく、ハロウィンや、クリスマスの企画も行っています。 一人親家庭で育った子どものなかには、クリスマスケーキを家族で囲んだことがない子どももいるのです。楽しく季節を感じながら「みんなで」過ごすということも、そんな子ども達にとっては大切な「学び」です。

―宿題一つ取ってみても、子ども、そして家庭に与える影響は大きい。

宿題を見るときにも、家庭の支援に近いものを感じます。親が子どもと宿題に取り組む際、「私の教えてもらった時と違う」といった場面は家庭でもよく見られますよね。子どもの成長に触れる、そんな意思疎通の時間が取れない家庭もありますし、親自身が十分な教育を受けておらず、宿題を教える事ができない場合もあります。だからこそ子どもの小さな成長や努力を褒め、意思疎通を取る支援が必要なのです。


―家庭のような安心感を与えるために重要になるキーワードは’’継続’’である。

子どもに家庭のような居場所支援を行うためには、毎週同じ場所、同じ時間に活動を続けていくことに意味があります。「この時間、この場所に行けば自分の話を親身になって聞いてくれる人がいる。」という安心感を与える場所を子ども達の心に置くことが大事です。

しかし、この支援が週毎のペースで継続的に行えていることは奇跡的です。「勉強を習慣にすること」が中学生の学習に必要不可欠なので、週に1回ずつ2会場で年に80回以上のボランティアを行い、1対1に近い指導形態を作る為に、毎回の活動で10~14人の大学生スタッフがそれぞれ想いを持って活動しています

ただ私たち自身、子ども達から支えられていると感じることも多いんです。私たちが辛かった話、へこんだ話を子どもたちにすると彼らが元気づけてくれるんですね。お互いに支え合う関係、心地の良い居場所が生まれているように感じます。

田中さん3


持続する居場所づくり。

―ただ、中学を卒業後も人生は続いていき、その都度転機がある。
継続する支援を続けていくためには、中学卒業後も’’居場所’’を残す必要がある。
そこで、彼らは「学生団体」ではなく、「社団法人」として持続する支援を行う決断をする。

中学の3年間だけで、子どもの貧困は解決しません。3年前よりアンビシャス・ネットワークの活動を開始し、卒業生が2年目、3年目と出てきました。現在では当初から参加する私たちがいるからこそ、高校になっても顔を出してくれる卒業生がいます。


しかし、大学生も4年で卒業してしまいます。高校中退や大学進学で悩んだとき、帰ってくる場所がなければ、そこは居場所とは呼べない。戻ってきた時に誰も知っている人がいなければ、彼らの想いを受け止める場所がなくなってしまう。だから、居場所であり続けるために、専属スタッフとして残り続けなければならない。

また、ボランティアの抱えるものがかなり大きいようにも感じています。交通費は半額しか支給できていない現状がありますし、個人情報の管理も大変です。今回も子ども達の勉強や遊んでいる姿をお伝えしたかったのですが載せることができませんでした。だから学生の負担を減らすためにも、子ども達のためにもしっかりとした基盤で活動を持続する為の団体を新たに作ろうと考えました。

―今後は「家庭への支援」も視野に入れるアンビシャス・ネットワーク。

今の日本社会は沢山の落とし穴を抱えています。失業や非正規労働、離婚や病気。これらは貧困であればあるほどその落とし穴にはまる危険性が高くなっていきます。穴だらけの社会では夢に向かって全力で走る事もできません。はまったまま穴から出られない子どももいます。そんな子どもたちが貧困の中で大人になり、親になり、生きづらさが連鎖していく。

“平等なスタートライン”に立ち子どもたちが夢に向かって努力できる環境を整えるために、家庭の悩みや進学、奨学金の問題など、家庭全体を支援していきたい。親と子どもを、そして彼らと社会をつなぐ架け橋になるために今後も活動していきます。

 子どもたちが安心して希望を持つ「居場所」。
その「居場所」は彼らが年齢を重ね、大人になっても続いていく。

その場所は与え、与えられ、広がり続ける。

喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。 その全てを共有できる場があります。


Takahisa Tanaka Contact

Facebook

アンビシャス・ネットワーク

【文章・トップ写真:江口 春斗】 【写真提供:田中 嵩久】