佐藤君表紙用仮原稿

綺麗になる過程をしんで。

―名古屋で活動を始めて、約8か月。
東京で見られるストリートの靴磨きも、名古屋では彼のみ。

 去年の12月13日、名古屋のとある駅前がスタートでした。学生さんでも、経営者の方でも、15分磨かせて頂くことで、彼らの人生の15分を独占できる。靴磨きを通して、普段生きているだけでは、出逢えない人たちとお話できて嬉しいですね。将来は靴を磨きながら、コーヒーを飲みながらお客さんの目の前で磨けるようなカフェやバーを作りたいと考え、今は、全国の路上で修行しています。
 以前、実際に福島県に、同い年の男の子が経営しているバーで、呑みながら、ワイワイした雰囲気のなかで、磨かせていただきましたが、大切な靴がきれいになる過程を目の前で楽しんでいただいて、とても幸せに感じましたね。

―靴への情熱は高校時代に遡る。

 高校まで野球をしていましたが、スパイクが大好きで。当時はスパイクに携わる仕事をしたいと思っていたぐらいに好きだったんです。友達が練習終わって、残って素振りしてるなか、僕はスパイクを磨いていました。友達の分までね。(笑)
 それでピカピカに磨いていたら監督が「おまえいつも道具大事にしてるから代打行け!」とか言ってくれるんですよ。「素振りするよりも、スパイク磨く方が試合出れるじゃん!」と思って。(笑)

―しかし、野球は高校で引退し、スパイクとの接点は減っていく。
そんな彼の熱はスパイクから靴へ移行していく。

 野球から離れると、自然とスパイクと関わることも減っていって。当時から靴も大好きだったので、自分の熱もそっちに絞られていきました。大学入学後、将来は靴関係の仕事がしたいと考えていたので、靴屋2店舗でアルバイトを掛け持ちして。仕事として、靴、人に関わるうちに、いろんな人と、いろんな靴とダイレクトに出逢える職業に就きたいという想いが。そんなとき、靴磨き職人という職業と出逢いました。

佐藤君2

次の出いを信じて。

―靴磨き職人という職業との出逢い。
そこに彼は’’ストリート’’という要素を付け加えた。

 大学入学後、長期休みのたびに、バックパッカーやヒッチハイクなど、国内外問わず旅をしていたんですね。旅をするときは、知らない人に1人で声をかけることも多いですし、ヒッチハイクをするときは100回がんばってだめでも、101回目で乗せてくれることがあります。
 誰も来てくれなくても、いずれは誰か来てくれるだろうと。それはストリートで靴を磨くときと同じことで。旅をしていなかったら、路上で靴磨きはしていないと思うくらいには、旅が与えた影響は大きいです。

―そして、今年の春休み。
彼は旅と靴磨きを重ね合わせた。

 2週間の間隔で、東京から西の主要都市を靴磨きで稼いだお金で周りました。全財産2500円しか持ってなかったので、’’2014年’’にちなんで、’’2014円’’だけ持って、東京へ。(笑)
 最初は東京新宿西口で、靴を磨いて、旅の軍資金を稼いで、憧れの靴磨き職人の方々を訪ねました。その後、大阪、神戸、広島、福岡へ。そして、なんとか飛行機代を稼いで、名古屋に戻ってきました。
 道中、野宿も覚悟していましたが、全道中、すべての都市で、SNSを見てくれた方や路上で磨かせて頂いた方が泊めてくれたんです。もちろん、お礼に靴を磨かせてもらいました。本当に感謝しています。
佐藤君4

バトンをぎ続けること。

―さらに、来年。
彼は靴磨きの旅にヨーロッパを周るつもりだ。

 ヨーロッパを靴磨きだけで周るつもりです。ヨーロッパは革靴の聖地も多く、国によってシルエットや作りの違う靴がたくさんあるんですよ。靴磨き職人もたくさんいます。
言葉は話せないんですけどね。技術があればなんとかいけるだろうと。名古屋駅でもいろんな国の方々の靴を磨きますが、技術を見せれば、10分前はなにを言っているか分からなかった外国人が、10分後には「サンキュー」とも、「アリガトウ」とも言ってくれる。大丈夫ですよ、きっと。

―とある駅前から始まったストリート靴磨きは
全国、そして世界へとその活動を広げている。
しかし、その張本人は至って冷静に、目の前に集中する。

 いつなにが起こるか分からないですからね。路上靴磨きが流行るかもしれないし、今よりも稼げなくなるかもしれない。自分が考えていることも時が経てば変わっていくわけですから。だからこそ、目の前の靴を一生懸命磨くことに尽きると思うんです。
 一回、磨いた人は顔で分からなくても、磨いた靴を見ればすぐに思い出せます。「この人の靴、光ってるな、綺麗だな」って思って、顔を見ると「あの時の人だ!」ってなるんですよ。去年の12月13日に初めて磨かせていただいたお客さんのことも覚えていますし、その人がいてくれたからこそ、今の技術、経験値があります。
 今日よりも明日、1人でも多く磨くこと。12月13日に持たせていただいたバトンをどんどん次のお客さんへと繋いでいくために、まだ見ぬお客さんに全力投球していきます。

佐藤君5改め

12月13日、とある駅前で始まった靴磨きのバトンは
8ヵ月という月日のなかで、全国へと広がっていった。

そして、来年。
そのバトンは国境を越え、世界へと広がっていく。

いつか自分の店を持ちたいと話す佐藤我久さん。

目の前の、そしてまだ見ぬ出逢いに全力を尽くす。
彼の
繋いだバトンが、また彼に手渡される日が楽しみで止まない。

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【文章:江口 春斗】
【写真提供:佐藤 我久】