タイトル熊倉卓(くまくらたく)
 新潟県三条市出身。
東京理科大学理工学部建築学科を卒業後、大学院理工学部研究科で建築学を専攻している。

全国学生ワークショップ(以下、全国学生WS)とは?
 全国学生WSは、9月27日28日に行われる全国の建築学生を繋げるイベント。
1日目は団体の発足から変遷を追い、そこから社会背景を読み取ること。
それを踏まえてこれからの発展を考え、2日目には柔軟な考えを持ったゲストと話し合う。
建築のこれからを考えると共に、自分の建築を理解し、それをどう社会に出すかを考えるという、
建築の『過去』『現在』『未来』を考える2日間になっている。 chapter1 ―熊倉さんが建築に興味を持ったのはいつ頃からですか?
 「実は実家が建築事務所で、祖父と両親が建築士なんです。
それもあるのですが、興味を持ったのは高校のときですね。
進学する際の学科を調べていて、興味を持ちました。」

 ―建築一家なんですね!熊倉さんは建築のどういったところに面白さを感じますか?
「ものを建てたり、作ったりすることだけが建築じゃないんです。

あらゆるものが建築に関わっているんです。 その広がりに面白さを感じています。」  

―あらゆるものが建築…例えば、どんなものも建築なんでしょうか?
 「僕にとっては、 会話も自分の建築を表現する手段の一つなんです。
でも、建築ってあまり身近に感じることはありませんよね。
『衣食住』の『衣食』はとても身近な存在なのに…。ちょっと切ないです (笑)。
でも、建築を考えることによって、各々の仕事を魅力的に見せることができるんです。」

 ―うーん…イメージしづらいですね。例えば?
「ファッションショーや、レストランでも建築は大切な存在です。
空間をつくりあげることによって、その場所に意識を集中させることができます。」

 ―なるほど。そう考えると建築って本当に身近な存在なんですね。   chapter2 ―熊倉さんは、会話も建築だとおっしゃいましたが、その考えに至るきっかけって何だったのでしょうか。
「一番のきっかけは卒業設計ですね。
皆、卒業設計は評価されることだけを目的としていると思っていると感じたことがきっかけです。
僕はそれが本当に嫌で。
建築に携わる者として社会に出た時に自分の建築が表現できるように、
自分のやりたいことを表現するのが卒業設計なんじゃないのかなって悩んだんです。
そこから、じゃあ一体自分の建築って何なんだろうって考え始めました。」

―素敵な悩みですね。 でも、熊倉さんはどうして卒業設計を評価されるためにやるものだと思わなかったんでしょうか?
「僕は、就職を強く意識していなかったんです。
最終的な就職先は実家なので、僕が就職で求めているのは
『自分の建築を表現するために何を得るか』
というところだけなんです。
その要素があればどこでもよかったからだと思います。」  

chapter3 ―熊倉さんの『自分の建築』とは一体どんなものなのでしょうか?
「自分の建築のベースとして、距離を持つことです。」

―距離、ですか?
「自分の建築って何だろうと卒業設計で悩んだときに、
建築において大切なのは距離なんじゃないかって思ったんです。
それは人と人との距離感でもあるし、壁との距離感でもありました。
 建物は空間と空間との距離で、空間は壁と壁との距離でできているんです。
だから、建築は距離と壁という言葉だけでつくることができるんだなって思ったんです。」  

―そう言われてみれば、確かにそうですね!
「例えば住宅地や建物って、一般的には自然から拒絶されるものだと思っています。
でも、日本の建築は自然と一緒に生えていると、僕は感じます。
だから人の空間と自然との距離を壁を使って縮めると、 とても魅力的な空間が生まれているんです。
そこから距離って大切だなと思ったんです。
こういった自分の考えのベースがあれば、 いろんなクライアントの要求にも耐えられるし、
変化が著しい時代にも自分の建築は保てるんじゃないかと思ったんです。 

それに、距離という言葉には人が必ず関わってくるんです。
建物っていう言葉では終わらせない。
建築は人ありきなんです。」 

―物理的な壁と感覚的な壁、両方を建築で表現したいんですね。
「見える壁も、見えない壁も、建築で表現できたらなと思います。」    

chapter4 ―まず、今回のイベントはどうして過去を振り返り未来を考えるような構成になっているのでしょうか。
「これからは、自分の建築を表現することが必要な社会になると思っています。
そのためにまず自分自身の建築を理解してもらいたくて。」 

―だからこれまでを振り返り、これからを考える、といった構成になっているんですね。
「そしてそれぞれが秘めているいろんな可能性を、固定観念によって潰してほしくない。
そういった願いも込めています。
このイベントで、あらゆる潜在的建築要素に気づいてもらいたいですね。」 

―だから、対象が建築学生だけじゃないんですね。
「そうなんです。 実はゲストに、プロジェクションマッピングをしている方や コミュニティを表現することを職業としている人を招きました。
建築学生には、『建築を育てる』というところも意識して欲しいと思っているんです。
思考が偏っていると、魅力的なものは生まれません。
殻を打ち破りあっていきたいですね。
建築観を柔らかくすれば、これからの建築が面白くなるんじゃないかなって思っています。
建築学生って、建築家としてはまだまだ子どもなんです。
僕だって、建築家としては5歳児ですから(笑)。」      

chapter5 ―熊倉さんは新潟県の三条市出身と伺っています。どんなところなんですか?
「三条市は山や川に囲まれていて、 市の中心部には田んぼもあるような、自然豊かなまちです。
昔は一応、日本の二大金物都市のひとつとして栄えていたんですよ。
現在は、車社会になって、人は住んでいますが、 人の気配がなく、活気が失われています。」

―工業的なところもありつつ、自然的にも魅力的な都市なんですね。
熊倉さんは三条市をどうやって建築で盛り上げたいと考えていますか?
「ソフトとハード、両方の面から盛り上げたいですね。
山崎亮さんがおっしゃっている、
『建築を建てるだけじゃなくて、これからは建築を育てることが重要だ。』
という言葉があります。
これにすごく共感していて、自分が建築した建物をより魅力的にするために、
コミュニティをどうつくっていくかにも携わりたいんです。」

―つくるだけじゃなく、そのあとの活用にも携わるんですね。
「僕は建築家として、そこに携わる人の良さが空間に出るような 建築的操作をしたいと思っています。
例えば料理人とコラボしたときに、 僕の役目は椅子やテーブル、それを覆う空間を魅力的に見せること。
都市の風景を日常に溶け込ませたいんです。
いろんな分野の方と繋がり、橋渡しをすることでコミュニティを活性化させ、
まちを盛り上げたいと思っています。

街にいろいろな知り合いがいて、 みんなで笑っておしゃべりして、
アクションを起こして、
一緒に楽しく建築を、街を育てていくこと。
それが僕の夢です。」
 

 「そのために、これからも固定観念に捉われず どんどんいろんなものを吸収していきたいと思います。
そうやって建築観を柔らかくした人たちが、 一人前の建築家になった時に
建築をもっと身近なものに変えることができたらいいなと思うんです。」

さああなたも、 一緒に建築を育てませんか?

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  【文・写真 市川陽菜】