中富さんTOP画

 #396 富 紗穂
金城学院大学2年生。
移動図書館「BUCH」代表。
本のある空間の素晴らしさを伝える活動として
47都道府県を回る活動を予定している。

 

 

中富さん取材1文字盤

移動図書館という「日常」が与える変化。

―移動図書館「BUCH」を始めるきっかけは?
 東京にはたくさん「Book Store」と呼ばれる「本屋」ではない空間があります。私は本が好き、読書も好き。だけど、一番したかったことは本のある空間の良さを伝えること。それは本屋さんを建てることとは少し違うと考えて。
 そして悩む中で、最近の大学生の特徴が目に入ったんです。活動的な大学生といえばヒッチハイクや留学に興味を持つ人たちが多い。だったら移動するのも面白いかなと。ずっとそこにあるのではなく、いつもの場所に違うものが入ってくる。わくわく、どきどき感。そしてそんな空間を創ること。それは「移動図書館」だなって。

―移動にかける想いがあったんですね?
 もともと私は東京が好きでした。でも、なにより他の街を知らなかったし、名古屋も知っているようで知らなかった。美術館や建築に関心がありましたが、去年の夏に瀬戸内国際芸術祭を訪れて、実際に目にすることで、魅力に気づいた。探究心、好奇心を持てばこんなに日本って面白いんだと思えた。
 日本の良さを伝えていける活動もしたかったんです。海外に行く人は多い。もちろん私も好き。だけど、みんなこの日本の魅力を知ってるのかなと疑問に思って。自分を変えたいと海外に目を向ける人が多いですけど、日本でも自分は変えられる。いろんな街の良さ、その土地の産業や文化を知った上で、客観的に自分の街を見たら、課題も良さも見えてくる。そうすればこの町で本を使って、自分がなにかをしようと思ったときに、もっと具体的に案が出てくると思った。

―活動を進めるなかで気づくことはありましたか?
 本を主体にした活動を進めるなかで自分が興味のある本しか読んでないことに気づいた。自分の町の本、産業、経済について何も知らなかった。さらに言えば、若い人たちがなかなか考えないようなこと、例えば政治や経済について考えようと思った時に「恥ずかしい」という感情を抱くこともあった。  周囲に考えている人はいない。だから考えることはださいのかもしれないと。

―その打開策が「移動図書館」だった?
 そのまま政治について考えようと言うのではなく、本、そして移動図書館という「非日常」を通して、人を取り込んでいって、自然と政治について考えていける取り組みをしたいと考えて。私もそうですが、これまで関心のなかった人たちにも気づきを与えられるんじゃないかと思った。
 講演会を開いたとしても、もともと関心のあったいわゆる意識の高い人の集まりになってしまう。本に対して明るいイメージを持っていない人たちにも本に触れてもらえるような、いつもは素通りしていた本屋に今日は立ち寄ってみようとか、漫画コーナーしか行かないけど文庫本コーナーに行ってみようというようなちょっとした日常の変化を生み出すことが夢なんです。

BUCH お野菜大学イメージ図 文字盤

いつでも平等に、出いを提供してくれる。

―もともと、本のどんなところに惹かれていったんですか?
 本は縛りがないんです。気軽にいつでもどこでもどんな歴史もシェアできるし、私が求めたときにいつでも平等に、1つ1つの出逢いを提供してくれるものですね。パラパラする出逢いがなによりも好き。なんとなく見たところ、ふと見たところで、ぱっと気づかされる瞬間、その瞬間がなによりも好きなんですよね。  かばんに入る大きさもすごく落ち着きます。こんなに小さいものに、心動かされるんだっていう驚きが強いです。これまで見えない表面的なものを追ってきましたが、本棚を見るたびに過去の記憶を思い返せる。小さいけれど、とても大きな存在なんですよね。

―そんな本を使って、どんな空間を作っていきますか?
 お店のレイアウトは行く場所によって変えていく予定です。本好きな人が集まるのは予想できますけど、これまで本にあまり関心のなかった人にも来ていただきたいですね。例えば、野菜をメインに取り上げる場合はプランターに埋めてある野菜を収穫するように、野菜を本に見立てて収穫する感じで。収穫した野菜を籠に入れるように、今日の採れたての本というような感じで籠にオススメの本を飾ってみたり。レイアウトに興味を持っていただければ、取材先のお話も自然と伝えていける。
 まず「何屋なんだろう」ってところから。出逢いが広がっていくような空間を作っていきたいですね。帰るときにスキップして帰ってもらえるような。そして、帰った時に、「なんか変な本屋があって、本買っちゃった」って誰かに話したくなるような場所にしたいですね。その瞬間、楽しい瞬間を、本を通して日常に提供していけたらと感じます。

中富さん取材2 文字盤

ここではないどこかにれていた高校時代。

―名古屋には最初から想い入れがあったんですか?
 もともとは東京が好きだったんです。どんどん新しいものが流れてくるイメージがあって。こんな自分でも東京に行ったら変われると思ってたんですね。名古屋は物足りないと思ってきましたから。それが本や人と出逢って少しずつ考え方が変わってきた。東京で本を中心にした取り組みを行う人はたくさんいてむしろ埋もれるぐらい。だけど、名古屋で目立つ人がいなければ注目してもらえるし、これまで弱点だと捉えていた女子であることも、名古屋という条件も武器にできると考えた。

―弱点を武器へと考えるようになったきっかけはありますか?
 浪人ですね。東京の大学を志望していましたが、落ちてしまった。ぎりぎりで今の大学に入ったんですね。なんだかんだ上手くいくと思ってきた。でもその裏を返せば、挑戦をしたことがなかったから成功をすることもなかった。挑戦することからも逃げていた。自分の本当の姿を見ることを避けてきた。それが大学受験を通してこんなに自分が努力してもできないんだなって。夢から覚めた瞬間でした。自分を守るもの、すがるものが以前はそれは自分にとっては学歴や資格、経歴だった。それがあれば自分を守れる気がしていた。
 自分を守るものはない。それを作り上げてから挑戦することに違和感が出てきた。学歴や経歴を気にしているのは周りよりも自分だった。そんな自分の殻を破る。自分が思っていることが全てじゃないと気づいた。そして、色んな本を読んだり出向いたりして考えた結果が、自分に染み込んできた。

中富さん取材3 文字盤

本を通して、人生の視界を ’’’’ 明るくすることは出来る。

 ―「移動図書館」を通してどんな未来を作り上げていきたいですか?
 フリーペーパーも同時に発行して、名古屋の学生さんたちに全国の同世代の頑張っている姿を伝えていきたいですね。47都道府県で、自分の町に貢献したいと奮闘する仲間のネットワークが広がっていくと思うんです。そこで培った縁を、名古屋で移動図書館をするときに、また名古屋の子たちに繋げていきたい。自分の秘められた町の魅力に気づいて、さらにアクションまでいけるように。地域間の縁を繋ぐようなスタディーツアーも夢の1つです。
 最終的には、本屋さんに自分たちの棚を作りたくて。日本を周った写真や学生さんたち、取材するうえで参考にした本、学生さんたちに呼んでもらいたい推薦図書などをまとめた本を最後に発刊して、推薦図書と合わせて私たちの棚を作りたい。そうすれば「移動図書館」で出逢えなかった人たちに、本屋さんという空間を通して出逢える。その新しく出逢える人たちにも発信できるかなと思っています。

―きっかけを「貰う」側から、「与える」側へ。
 高校生の頃は自分の可能性にまったく気付けなかった。そういう子たちにも気づいてもらえるように。本を通して少し人生の視界を明るくすることはできる。大学生はたくさんのチャンスがあるって私は気づいたから。昔の自分が本で変われたように、自分の魅力に気づいてほしいんです。高校生の頃には考えもしなかった移動図書館。これまでの自分があったからこそ、今の自分がある。昔の自分が今の自分を作っているんだなっていうのを凄く実感しますし、名古屋が好きになると同時に自分自身も好きになれてきたかなって感じます。
 私のような大きな変化でなくても、いろんな本を読んで、出逢いを重ねるなかで、こんな世界があるんだって、世界を広める気づきを与えていけたらと思います。

中富さん写真1

出逢いの瞬間は計算できない。 予期できないからこそ、心に響く。

そんな「非日常」の瞬間を47都道府県へ。
日常を照らし出す移動図書館があなたの街へやってきます。

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【写真提供:中富 紗穂】
【文章:江口 春斗