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理系として、化学の研究に尽力し、

その一方で、教育を志す

 

いわば、『異端児』と呼んでもいい人がいた

 

彼の授業を高校の頃に受けていれば、

人生もう少し変わっていたかもなぁと思うんです

 

 

大屋 智和(おおや ともかず)

1990年生まれ。愛媛県出身。京都大学大学院工学研究科化学工学専攻修士1年。工学部で化学と教育を志している。現在は、母校、今治西高校にてキャリア教育イベント“螢雪大学”を開催することになり、企画の代表を務めている。また、NPO団体manaveeに所属し、無料で受験勉強の動画を配信し、高校生に授業を展開している活動を行っている。

 

 

●化学×教育の二本柱で教員を目指す

 

 

 

そもそも、なぜ彼は京大に進んだのだろうか

 

そこは気になりますよね。工学部で教育を志していますが、なぜ教育のほうに進まなかったのか。

 

過去の話に遡るのですが、高校生のときから教育は好きでした。小学校、中学校、高校、と憧れの先生が1人ずついて、この先生いいなぁとお世話になっていた先生がいたので、そういう先生になりたいと思っていました。

 

それに加えて、僕は高校1年生の頃から、化学が好きでした。じゃあ、どうしようといったときに、やはり化学の最先端を見たいと思ったんですよね。

 

その最先端を学べるのが、京大だと思ったんです。

 

 

 

その一方で、教育の方はどういう立ち位置で関わっていこうと思ったのか

 

逆に教員になるんだったら、最先端の化学を地元の愛媛に持って帰りたいなと思っていました。化学ってこういうところが面白いんだよ、というのを理系で学んでいる身から、伝えたかったというのもありますね。

 

 

 

彼は、努力型なのか、天才型なのか

 

僕は努力型の人間だと思います。当時高1の日記にも書いていたのですが、努力型の自分がどこまで通用するか、天才型の友達と勝負をしてみたかった。高校1年のときから決意を持って、勉強に取り組んでいましたね。その天才型の友達は東大に現役合格して、自分は1浪してしまいましたが(笑)。

 

 

 

工学部で、教育を志す自分の強みとは

 

僕のアドバンテージといえば、教育学部ではない教員、工学部でものつくりをしている教員だから、そういう意味で研究や身近な科学をリアルに伝えられると思います。

 

逆に教育学部の教員の方は、自分の畑でやってきているので、教育の分野は強い。しかし、応用的な学問分野の工学は、自分自身の専門と異なるから実感しづらいと思うんです。

 

それが工学部に入ったひとつのモチベーションでもあります。完全な強みですね。教科の専門の楽しさは、他の人よりも一段深めに伝えられると思います。

 

 

 

大学で研究を行う一方で、教育にはどのように携わってきたのだろうか

 

大学1、2年生のときは駿台予備校の準社員として働かせてもらって、寮にいる浪人生のお世話をしていました。具体的には生活指導、勉強指導を行っていました。寝泊まりも浪人生と一緒なので、先生よりもある意味では濃い時間を過ごしたんじゃないかなと思います。

 

3年生になったら塾講師になって生徒と関わっていましたね。

 

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(manaveeでの授業風景。「だんちょー先生」という名前で活動している)

 

●様々な格差を是正するために

 

 

 

NPO団体manaveeは、大学3年生の11月から始めたそうだが、やはりアルバイトや塾講師や家庭教師をやってきたことが関係するのだろうか

 

そうですね。あとは、僕の出身地の愛媛が田舎ということもあります。

 

この団体の理念が「地理的・経済的な教育格差の是正」なんです。

お金がなくても、離島で物理的に離れたところでも、平等に教育って受けさせないといけないという想いが僕にもありました。

 

 

 

授業で彼がこだわっているところとは

 

授業はじめ5分くらいの導入ですね。生徒には興味、関心から勉強へ入ってほしいと思っています。ジブリ映画の何気ないシーンから化学の話へつなげたり、「三角州が世界を救うらしい!?」といった意外な話をして印象付けしたりします。ここで生徒の興味を一気に引きつけて、授業が終われば謎が解けるような授業になるように組み立てています。

こだわっている点としては、image図を使うことですね。

なぜ、この現象が起きるのか、というのをビジュアル化して教えています。

教科書にも書いていないんですが、絵の説明の方がイメージがついて、インパクトが残ると思います。

そういう説明をするために、努力も重ねましたから、今では僕の武器ですね。

 

螢雪大学ポスター

 

 

●高校生の進路のミスマッチを防止する、それが“螢雪大学”

 

 

 

現在、キャリア教育イベントの“螢雪大学”に携わっている彼だが、始めるのにどのようなきっかけがあったのだろうか

 

これをやろうと思ったのは、母校の教育実習がきっかけですね。そのときは、高校3年生の化学の授業とホームルーム(クラス)を担当していました。

 

 

 

教育に携わる者として彼が持っている目標とは

 

2つ目標があるんですよね。教育というと、指導のパターンが2パターンあるんです。

 

1つが、勉強に関する教科指導、もう1つが進路指導や生活指導です。

 

そう考える根拠とは

 

僕は理科が面白いと思って育ってきた人間ですし、面白いと思えば、もっと学力って伸びると思うんですよね。理科嫌いの生徒を少しでも減らすのが目標ですね。

もう一つは進路指導ですが、大学の友達を見ていると「あぁ、大学でこんな勉強するはずじゃなかったのになぁ」という友達を見ますよね。勉強のミスマッチがとても多いので、進路についてなんとなく考えていたけど、それを少しでも生徒たちが考えるきっかけにしたい、というのがこの教育実習の2週間ですね。

 

 

 

螢雪大学では、具体的にどのようなことを提供するのか

 

大学で何を勉強しているのかを、わかりやすく楽しく提供したいですね。大学生との交流をベースにしつつ、学部ごとにテーマを設けてディスカッションの場を用意したりもしています。

 

高校生とそのような話をするのは難しいかもしれませんが、大学生との楽しい交流をモチベーションにしてちょっとでも知ろうとしてくれるのが、今回の目標です。

 

 

卒業生34人が母校に行き今回のイベントを行うので、交流の最小単位まで卒業生を増やす、つまり、疑問に感じたことや聞きたいことを気軽に聞ける生徒と卒業生の人数比(1大学生:5生徒のグループ活動)にして双方向の交流まで持っていくのが今回の売りですね。従来のイベントでは、講演会のような一方向的なやり取りが多かった。でも、生徒の意見を吸い上げつつ双方向のコミュニケーションが成り立てば、授業と同様に効果が上がると思ったんです。

 

 

企画の全体責任者として、運営面で大変なことはないのだろうか

 

生徒のことを想うと、やはりなんとかしたいという気持ちがあるので、メンバーとの情報の共有が大変なだけで、他はなんでもやってやるという根性はあります。

 

こういう試みはやろうと思っても、なかなかできないのが現状なので、まずは僕たちが乗り出してから、全国的に広げていこうと思っています。

 

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(教え子たちとの写真)

 

 

●先を見据えて、生徒のために全力を尽くす。

 

 

 

彼がそこまで生徒のために尽くせるのは、なぜなのだろうか

 

生徒が好きですし、成長している姿を見るのがとても楽しいんですよね。

自分が勉強を教えたときに、驚いた表情をしてくれたりするのも嬉しいです。

 

 

 

教育者として、彼が考えていることはなんだろう

 

社会に出て迷惑をかける大人になったらいけないですね。

駿台で、生徒を指導していたときに感じたことがあります。

生徒を指導する立場なので、どうしても生徒に嫌われるんですよね。それで悩んだことがあったんです。

 

当時の寮長に相談したら、「教育というものは一年間で成果を出すものではない」と言われました。

生徒にそのとき後ろを向かれても、5年、10年経ったら分かってくれるかもしれないし、そのときまで待たなきゃいけないかもしれない。

それはどうなるか分からないけれど、指導は間違っていない、と言われたときは感動しましたね。

 

僕は、目先の成果だけ考えていたんですよね。それではダメだなと思ったんです。もっと先を見据えて、生徒のために指導をしていかないといけないなと感じました。

 

 

 

理科嫌いをなくしたい

進路のミスマッチを防ぎたい

そんな彼の生徒への想いが伝わってきた

 

彼が掲げるキャリア教育は

これから全国に広まっていくのだろう

 

もっと、もっと

新しい教育のカタチを産み出していかなければいけない

 

日本の教育の未来を明るくするのは

僕たちの世代なんだ

 

 

Twitter…螢雪大学@keisetsu2014、大屋智和@oyaoya1990

NPO団体manavee…http://manavee.com/

 

 

【インタビュー:木村優志・市川陽菜、写真:市川陽菜、文章:木村優志】