photo1

高校時代、私たちは同じ吹奏楽部に所属していた。

「私もそう思うよ。」

ミーティング中、自信無さ気に少し笑って、そう答えてくれた莉奈ちゃん。
なかなか自分の意見を言わず、ミーティングが終わると黙々とティンパニの練習をしていた横顔を思い出す。

今、彼女は私の隣で『自分』について、はきはきと語っている。

「英語力を伸ばしてグローバル企業に就職したいわけじゃない。
とにかく自分を変えたい一心でアメリカに行くことを決めた。」

その目はまっすぐで、何の迷いもない。
あの日の微笑とは違う大きな笑顔で、今語る―――

松田 莉奈

高校卒業後、東京にあるNIC International College in Japanにて一年間英語を学び、2012年8月からアメリカ、カリフォルニア州にあるButte College(2年制大学)に進学。今年6月にはオールAの成績で卒業証書を授与される。来年からアメリカの4年制大学に編入予定。

環境に甘えない

自分を変えたいっていう気持ちが一番にあってん。

英語力を伸ばして就職に活かしたいんじゃなくて、今までずっと中途半端で難しいことから逃げていた弱い自分を、どうしても変えたかった。

日本の大学に行くと両親もいるし友達もいるから、今までと同じで頼って生きちゃうのかなって。そういう自分が嫌やったから、右も左もわからん土地で新しい自分を発見したかった。

 

―自分の問題点が分かっていても変えられない、変わろうとしない人はたくさんいる。
莉奈ちゃんは「このままでもいいや」って思わなかった?

 

すっごい思ってた!いつも自分の意見言われへんし、とりあえず人の意見に賛成するばかりでリーダーの後ろをついていくだけやった。それってすごい楽やけど、日に日に罪悪感というか・・・自分に嫌悪感を抱くようになってん。

楽やけど全然面白くなくて。
「これじゃない、自分のやりたいことは!」
って思い始めると、居ても立ってもいられなくなった。

病気になりそうなぐらい思い詰めちゃって、どうしても環境を変えなあかんって逼迫感が常にあってん。

でもそのおかげで、『自分を変える』って目的がしっかりあったから、勉強も人との関わりも今、積極的に取り組めてる。

S__1704019

【英語ができない】を言い訳にしない

―コミュニティカレッジの成績はオールAだもんね!
『人との関わり』とは具体的にどんなことを頑張ったの?

 

アメリカに行った始めの頃は、ホームステイ先のホストマザーに何聞かれてもイエスかノーか、そういう簡単な返事しかできひんかってん。

それって英語がわかれへんっていうより、話の続け方がわかれへんかった。
今まで人と話すことを避けてきた分、どうやって話を展開していいのか知らんくて。

だから学校生活の中で、全然知らない人と話すためにわざわざ食堂に行って話しかけたりした。そういうことを繰り返しているうちにシンプルな答えじゃなくて、自分から話を広げて会話を続けられるようになったのは、自分の中ですごい大きな進歩。

授業でもCommunicationを専攻して勉強してる。

S__1704017

―Communicationの授業ってどんなことをしているの?

 

グループワークの中でプレゼンやスピーチをしてるねん。
生徒が先生と一緒に授業をつくりあげるから、生徒が主体で授業が進む。

ただ、最初はめっちゃ静かにしてた。
なんて言えばいいのかわからへんし、英語の心配もあって。

でもやっぱり英語を言い訳にしてる自分が嫌やった。
わかってんねん。発言できひんのは英語じゃなくて自分の問題やって。

だから頑張って手挙げて発表するようになってん。
そしたら、絶対みんな聞いてくれるし、そのあとの「あ、自分できた!」っていう達成感があるから、じゃあ次も頑張ろうって思えた。

そうやっていくうちに、周りの状況も変わったな。

 

―どんなふうに変わったの?

 

家族って思える友達が出来たり、応援してくれる人も増えたし、ボランティアの機会をもらったりした。ホストマザーとの関係も深くなったな!

会話しているうちにどんどん自分がオープンになってきて、オープンになればなるほどいろんな人がやってきてくれた。それをすごく実感してる。

S__1704020

深く深く決意すること

留学って言うと金銭面を気にして「自分にはできない」「自分とは全然違う世界や」って思う人もたくさんいるし、私もそう思ってた。

親に留学したいって言ったら治安面も金銭面も不安があって、すごい反対されてた。

だけど自分の置かれている環境とか周りのせいにするんじゃなくてさ、自分がやりたいんやったら奨学金を貰うために必死に勉強したり、学生ローンでお金を借りながらアルバイトしたり、できることはたくさんある。できない理由を探したらあかんって実感した。

そういう決意が大事かなって思う。

 

―莉奈ちゃんは決意がしっかりしていて、全然ぶれてないよね。

 

留学してから学びたい事ややりたいことは変わったりしたけど、全部無駄にはなってない。

最初に決めたことに頑固になるんじゃなくて、自分に与えられた選択肢の中で信念を基に進む道を選べばいいと思う。

それが軸やと思う。

固執してしまうとせっかくやってきたチャンスを逃してしまうこともあるやん。
いろいろアンテナを張りながらその中で自分の核にある信念は絶対にぶらさないようにしようと思ってる。

 

アメリカに行って早2年。

私の知っている莉奈ちゃんの優しさと
2年で培った新しい莉奈ちゃんの芯の強さを
このインタビュー中ずっと感じていた。

休暇を終え、彼女はアメリカに戻る

これから4年制大学に編入する予定だ。
その中でもきっとたくさんのことを学び、
たくさんの自分に出会うのだろう。

だけど彼女の中にある芯は変わらない。
「言い訳しない人生」
自分から逃げずに生きていく。

(文・写真 原優衣)