ルウさん1

 

 

2008年の中国・四川で起こった大地震。

未曾有の大災害の中、立ち上がった一人の高校生がいた。

彼女は仲間とともに、震災支援の団体を創設。

成長した彼女はいま、何を思うのだろう。

 

 

王(ワン)ルウさん

中国 江蘇州 蘇州出身。
現在は、京都大学大学院経営管理教育部経営管理専攻に在学している。

 

▼被害に遭った人たちの役に立ちたい

 

団体の名前はSHVです。
Smile+Heart + Volunteer=SHV です。
心を込めて、人を笑顔にするボランティアになりたいから、この名前をつけました。

 

−−なぜ団体を立ち上げようと思ったのですか?

現地の人の役に立ちたいという気持ちが一番にありました。
そのためには、現地に行かないとわからないことがあると思いました。

周りにも、同じ思いの友達がいましたが
当時、高校生2年生の私たちにはチャンスがなかったんです。
じゃあ、自分たちでやろうということで、団体を立ち上げました。

 

−−高校生でその行動力はスゴいですね。具体的にはどんな活動をされていたのですか?

現地の学校で数学と国語を英語で教えていました。
小学校3つと、孤児院2つを訪問し、子ども達と遊びつつ、教育を行うという形でした。
また、倒壊した校舎の修復作業、街のごみ拾いにも取り組みました。

 

−−積極的に、様々な活動に取り組まれていたのですね。
人手が必要な活動もあったと思いますが、
団体の規模はどれくらいだったのでしょうか?

最初は4人で活動を始めましたが、メンバーの数は116人にまでなりました。
街中でビラ配りをしたり、声をかけたり、口コミなどで、
どんどん人数が増えていきました。
ここまで規模が広がったのは、
新聞とニュースで取り上げられた影響が大きかったです。
それらを見て、
学生だけでなく、社会人の方、
他のボランティア団体の方も参加してくださいました。

決して私たちだけで活動ができた訳ではなく、
多くの人の応援と協力のうえで活動が成り立っていたのだと思います。

 

−−現在はどのような活動をしているのでしょうか?

毎月、新聞の発行を行っています。
私は現在リーダーではないのですが、
帰省した際には、ミーティングに参加しています。

個人的には、中国のある団体を通して、
毎年3人の子どもたちの生活支援をしています。
高校3年生の時からお小遣いを節約しながら始めて、今年で6年目になります。

 

彼女の活動の範囲は、中国に留まらない。

 

▼現地の人が気付いていないチャンス

 

高校3年生の時に、団体の活動の一環でチベットを訪れました。
そこでも子どもたちへの教育活動を行っていました。
ある日、ふとした時に気付いたんです。

現地の人々がしいたけを捨てていることに

栄養価が高く、商品になるしいたけの価値に彼らは気付いていなかったんです。
それはもったいないと感じたので、
私たちの団体で、しいたけを使ったビジネスプランを考え、
中国でビジネスコンテストに出場しました。
そのコンテストで優勝することができ、
現在は商社を通じて、しいたけの流通、販売を行っています。

これからも中国だったり、東南アジアで、
現地の強みを活かせて、継続的なビジネスをしたいと考えています。

 

チベットの他に、タイ、カンボジアでのボランティア活動に取り組んだ。

 

▼”支援慣れ”?

 

−−カンボジアなど、一部の国の人々は”支援慣れ”していると耳にしたことがあります。
活動の中で、そのようなことを感じた瞬間はありましたか?

タイでは、以前に来た他の団体と行っていることがほぼ同じで、
あまり面白くないという意見がありました。
私たちは過去の経験と反省から、
様々な工夫を凝らして、他の団体との差別化を図りました。

タイでのボランティア時の写真

 

他の団体の人から聞いた話では、
あるカンボジアの孤児院では、スケジュールがいっぱいで、
ボランティアが来る必要がない場合があるとのことでした。
しかし、ボランティアが支援をしている孤児院は、
全体のほんの一部でしかありません。

ボランティアは必要とされているのですが、
外部と連携している孤児院が少ないという現状があります。

孤児院と支援団体をつなぐ存在がいないことが、
このような機会の不均等につながっています。

 

カンボジアでのボランティア時の写真

 

彼女は2012年から日本に留学し、
現在は京都大学の大学院で、経営管理について学んでいる。

 

▼日本で気付いたこと

 

−−どうして留学しようと思ったのですか?

高校生の時から、海外に行きたいという思いがありました。
国費留学を考えていたのですが、
その選抜試験は上位数%の学生にしか受験資格がありません。
なので、勉強に熱心に取り組んでいました。

日本を留学先に選んだのは、
あまり良い話ではないのですが、
日本とアメリカのどっちにするか決めきれなくて、
最終的にはくじ引きで日本に決めました。

 

−−くじ引きで!結果は神のみぞ知るといった感じですね。
日本に来て、コミュニケーションをとる中で気付いたことはありますか?

私は日文センターという日本の学生との交流や、企業訪問を行い、
日本の文化を学ぶ学部に所属していました。
そこで、様々なバックグラウンドをもつ人たちとの
異文化コミュニケーションの難しさに気付きました。

大事なのは相手の立場に立って考えること。
自分の言ったことが理解されてるかな?と考えること。
同じ立場になってコミュニケーションすることが大切だと思います。

ボランティアのときも、自分の今までもっていた価値観を、
現地にもっていくと全然受けいれてもらえないことがありました。
なので、
お互いの価値観の調整が必要だと感じます。

中国では喜んでくれるのになんで?と悔しくなることもあります。
でも、おかしいのはこちら側なんです。
自分の価値観はいったん置いて、相手の立場になって考え、
話し合い、分かり合うことが大事だと思います。

 

−−相手の立場に立って考えることは、すごく大事なことですよね。
現在は大学院で勉強されていますよね。
どうして大学院に進学しようと思ったのですか?

最初は、中国で就職を考えていました。
実は、中国である企業に内定をもらっていたんです。
でも、もっと勉強したかったので、大学院に進学しました。
中国では、いったん社会人になったら、学生に戻るのは難しいです。
目の前の給料など、目先の利益だけじゃなくて、
5年後、10年後のキャリアをどうするか考えた結果、
もっと知識をつけてから働いた方がいいんじゃないかと思い、進学を決意しました。

 

−−なるほど。遠い将来を見据えての進学だったのですね。
具体的にどのようなことを勉強されているのですか?

経営管理を学んでいます。経営の実務の勉強がとてもためになります。
私自身のボランティアの経験から感じたことを、
経営管理学の理論とつなげていこうと思っています。
私の学部はMBAを取るコースなので、社会人の方もいて、刺激になります。

※MBA…Master of Business Administrationの略で、
経営学の大学院を修了した者に与えられる学位のこと。

 

−−最後に、将来の夢をお聞きしてもいいですか?

チベットの小学校に、新しい校舎を立てたいと思っています。
しかし、それには日本円で約320万円の資金が必要となります。

そうした活動を通して、SHVの活動を国内だけでなく、海外に広げていきたいです。
また、SHVの活動を継いでくれる人がいつでもいるように祈っています。
学生の成長を見守りたいんです。

 

 

様々なフィールドで

活躍してきた彼女なら

必ずや世界を良い方向に

導いてくれるだろう

そのために、今日もいちにち

心をこめて、人を笑顔に

【文:小川 亮】