社会福祉について専門的に学んでいない人は、
介護職しんどい仕事と思っている方が多いのではないでしょうか。

「介護が楽しい。現場が好き。」と話す、山田さんのお話を聞くまでは、
私もそう思っていました。

介護職が、こんなにもきめ細やかで温かい仕事だなんて、思ってもいませんでした。

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(会社名)社会福祉法人 信愛  (施設名)まんてん
法人事務局長 介護福祉士 山田弥香

大学卒業後、現在の旦那さんと結婚。専業主婦だったが、夫が介護施設の運営を始めたのをきっかけに、事務局長として働くことに。
「職員採用をしながら介護職まで、多岐にわたるお仕事を楽しみながらしているんです。」と話す山田さん。
そんな山田さんに、介護の世界について教わってきました。

 

“まんてん”は福祉施設ではなく、“家”です

 

“まんてん”は家庭的なホームを作ることにこだわっていらっしゃるようですが、家庭的なホームを作ろうと思った経緯は何ですか?

介護施設に入ってからも、いままでと同じような造りの“家”で、今までと同じように買い物に出かけたり、飲食店に行って自分でメニューを選んだり、今までと同じように趣味やお稽古を楽しみたいって、誰もが思っているはずなんですよ。

だから、利用者の方には、介護施設に入ってからも、家で生活していた時のような生活をして欲しいんです。

 

入居者の方の事を考えて、施設ではなく家庭的なホーム作りを心掛けていらっしゃるんですね。その中でも一番、心掛けていることって、ありますか?

そうですね。施設に入られるお年寄りの中には、認知症の方もいらっしゃいます。そのため、認知症の方に配慮したホーム作りを心掛けています。認知症の方は、自分がどこに居るのか分からなくなったり、自分がどこに向かって歩いているのか分からなくなってしまって、混乱する時があるんです。その混乱を少しでも減らせるように、“安心して暮らすことができる、家のような場所”を作るように心掛けています。

「施設に入った」と感じるより、「知り合いの家に来た」と感じることのできるホームの方が、入居される方だけではなく、そのご家族の方も、安心して、お父さんやお母さんを預けることができると思うんです。

 

31共同生活室

 
 

ご家族の方の気持ちに配慮しようと思うようになったきっかけは何ですか?

施設を見学に来られたご家族の方から「お父さんやお母さんを施設に入れないといけなくなってしまって…。せめて良い環境が整っている施設に入居させてあげたいと思っています。」という声をよく耳にするんです。

自分のご両親を施設に入れるということに、負い目や不安を感じているご家族の方は多いので、そういった方に安心して頂けるような福祉施設を作るということが、私たちの仕事だと思っています。

 

家のような空間にする為に、何にこだわりましたか?

滋賀県では田舎の家の造りに合わせて、ホームを造るように心掛けました。というのも、入居される方は今まで田舎暮らしをされていた方が多いんです。その為、建物を建てる時に、建物の外観を紅がら色の塗装にして、周りの環境に馴染むようにしています。内装は和の雰囲気に調和した造りにしました。

家では、裸足で過ごすことが多いですよね。だから同じように裸足で生活できる環境を整えられるよう、いつも利用者の方と一緒に床を掃除しています。

また、四季を感じていただけるように、生け花を常に飾るなどの工夫もしています。

02東南面外観

 

施設っぽくならない為の徹底的なこだわり

外観以外にもこだわった部分はありますか?

福祉施設っぽい“もの”は、置きたくないんです。
世の中には、足腰が弱くなり、普通の椅子に座ることが難しいお年寄りの方を対象にした介護用の椅子が販売されています。でも、介護用に作られた椅子は、色合いが施設っぽいんです。普通のお家には施設っぽい家具はありませんよね。出来るだけ普通のお家のような空間にしたいので、インテリアデザイナーさんと協力で、独自で福祉用の椅子を作りました。

 

なぜそこまで椅子にこだわったのですか?

それは利用者さんにできる限り、椅子に座って欲しいと思っているからです。「普通の家で普通の生活を、出来るだけ長く続けて欲しい」と思って、“家”のような空間の介護施設を作ることにこだわっているのです。“家”のような空間をつくる為には細かい部分にまで心遣いをしないといけないと思っています。

 

“まんてん”では、生活におけるすべての動作をひとつひとつ取り上げて、みんなで話し合い、利用者さんがいつまでも自分らしく暮らせる方法を、模索しているそうです。

 

07玄関ホール

 

介護職だったら誰でも受かると思っていませんか?

山田さんは新卒採用も担当されているそうですね。介護職は資格がなくても就く事が出来る職業にも関わらず、希望する学生は少ないと思うのですが、現状はどうですか?

そうですね。一般的に介護職は人手不足だと思います。しかし、高齢化社会はこれからも加速していき、介護施設はどんどん増えていきます。今よりもっと人手が必要になるので、介護職に就く人材を沢山確保したいと考えています。

 

もっと人材を確保したいとのことですが、何か打開策はお考えですか?

まずもっと多くの学生さんに、「大学や専門学校で福祉について勉強していない学生でも、介護職に就くことが出来る。」という事を知ってもらい、「介護職に興味を持って貰いたい。」と思っています。


介護って、普段生活する上での家事や洗濯が出来る人なら誰でもできる仕事なんです。資格を持っていなくても構いませんし、介護の世界に入ってから自分で勉強さえすれば、働き続ける事ができます。それに今のところリストラもないですし(笑)。介護職にもっと興味を持って貰いたいです!

 

でもさすがに、誰でも採用するわけではありませんよね?(笑)

そうですね。介護のお仕事は、とても繊細なお仕事なので、決して誰でもできるというわけではありません。

ですから、“まんてん”では、採用するまでに、3回以上の面接を行っています。介護職って、特殊な仕事だと思うので、“本当に介護職として働き続ける事ができるかどうか”ということを、面接を通して何度も確認しています。

例えば、2次面接の際には、実際にホームに来ていただいて、入居者の方と一緒に数時間過ごしてもらいます。実際に現場を体感し、“自分が本当にここで働き続ける事ができるかどうか”を確認していただく為に、このような場を設けています。

昔ね、面接をした時に、「通りますよね?“介護職だったら通るやろ”と言われてきたので。」って言われたことがあるんです。

介護の世界に入るのは簡単かも知れないけど、そんな甘い仕事じゃないんですよ。私たちは利用者さんと毎日、向き合いながら働いているんです。そんな気持ちで面接を受けに来る人に、介護職の仕事を続けられるとは思えません。

 

確かに、「介護職だったら受かる」と思っている学生は多いと思います。就職活動をしている時は“職に就きたい”という気持ちが強すぎて、その後のことまでは頭が回らないのかも知れません。

 

29廊下

 

介護職を志望する学生さんに何かアドバイスはありますか?

良い意味で、“誰でも働くことができる”ということに気付いて欲しいです。実際そうですからね。でも、介護というお仕事について、きちんと理解する必要はあります。そのためにも、ボランティアなどに参加して、現場を体験することをお勧めします。

 

一番大切なのは、コミュニケーション能力

 

介護の現場は、どういった雰囲気なのですか?

介護職の人が働いている姿を見ていると、いつも忙しそうに動いているというのが印象的ですよね。でも、実際に現場で働いている介護職の方達は、そうやって忙しく動き回りながらも、利用者さんのことを常に考えながら行動しているんです。

たとえば、“利用者さんが自分でお箸を持てるようになる為には、どの位置にお箸を置いたら良いか”
“今まで何にも喋らず一日中ぼーっとしているだけの利用者さんに、笑って頂くためには、どんな声掛けをしたら良いか”など。

ありとあらゆる事をみんなで相談して決めて、行動しているんです。決して甘い仕事ではない、というのがよくわかると思います。

 

最後に読者の方へ、メッセージをお願いします!

介護のお仕事って、“三大介護(食事・排泄・入浴)”と言われていて、しんどい仕事だというイメージが強いと思います。だけどね、“利用者さんの為にどれだけ自分が考えたか”によって、“利用者さんの様子が目に見えて変わっていくので、とてもやり甲斐のあるお仕事なんですよ。ですから、まずはもっと多くの方に介護職について興味を持ってもらいたいです。

 
 

「人を笑顔にする職業に就きたい。」
「コミュニケーションが好き。」
という人に介護職って、向いているのかも知れません。

【文・写真 野田安那】