mitanisann

何かに惹かれて、夢中になる。 

彼の場合は、それが「ふんいき」だった。

 

周囲に左右されず、貪欲に、自分に正直に、

その理由を追い求め続けた人。

 

三谷裕樹。

 

常になにかに魅了されていた彼は、

「建築」を通して、私たちに可能性を提示してくれる。

                                                                                                                                     

三谷裕樹
大阪府豊中市出身。修成建設専門学校卒業後、三重大学工学部建築学科編入。
同大学院修了後、三重大学施設部非常勤職員として一年勤務。2014年春から建築設計事務所勤務予定。
2011年に建築学生団体ASIT-アジト-を立ち上げ、三重県津市を軸として様々な活動を行う。

【主な受賞暦】
「あいちトリエンナーレ2013 現代美術企画コンペ」出展、「Design Review 2013優秀賞」受賞など。

 ・ポートフォリオ(作品集):http://www.slideshare.net/miiarchi

 

【用語説明】
コンペ:建築設計の競技。すぐれた設計案を,複数の設計者で競い合う。      

 

ふんいきに魅せられて。

さあ、三谷裕樹という生き方を見ていこう。
建築に関わり始めたきっかけは高校時代に遡る。

実は高校に入ってからちょっとして、
フリーターになろうと決めてたんですよ。

15、16歳のときに違和感を感じて。
このまま、勉強を続けて、いつ自分のやりたいことが出来るんだろうと考えたんですね。
「それが今だ」って考えた途端、勉強もしなくなり、成績も悪くなっていきました。

進路の話になっても、「とりあえず、フリーターになります」って話して。
卒業して、晴れてフリーターになりました。

フリーターになってからの生活はどうだったのだろう。

色んなショップ、カフェや居酒屋、クラブなど人が集まる場所に遊びに行きまくってました。
その中でも、雰囲気の良い場所、そうではない場所、その違いはどうなのかと気になり始めて。

きれい、煌びやか。
だから雰囲気が良いとなる訳ではない。
ごちゃごちゃ、汚い、だけども引き寄せられる雰囲気を感じる場所が多くあります。

それは美味しい料理、流れている音楽、共に過ごす人、その店の人が醸し出す空気。
あらゆる要素が絡み合い、その場の雰囲気が作られ、そこには空間という要素も絡んでいる。

 

建築という言葉を使ったこともなかった当時。

ただ、その雰囲気に魅せられ、その理由を無意識に探していました。
それで、色彩検定とか、インテリアの資格の勉強をしながら、
ひたすらバイトして、ひたすら遊ぶ生活を1年ぐらい過ごしましたね。

 

それが1920歳。

それで、そろそろちゃんと働こうかと考え始めて、
建築っぽいことをしている仕事の面接を受けました。
その後、施工の事務所で働き始めました。

働き始めたところはショップの内装などを手掛けているところ。とても忙しかった。
出張に行けと言われて、一週間の予定で行ったら、三か月東京で仕事したこともあります。
ひたすら毎日、事務所で寝泊まりして、車で寝泊まりして、現場から現場へ行ってましたね。

そのときに、もう1回考えて。

三谷さん3

目的に、正直に。

そのときに転機になったのが建築家、安藤忠雄氏の本だった。

人がどういう風に集まっているか、その理由を考えて、
それを形にしている職業があることを知りました。
じゃあなんでもいいから建築を勉強できる場所に行きたいと考えて、専門学校に進学。

同時に、いろんな建築の人の話を見てると、どうやらみんな海外に行くということを知って。
「あぁそうかあ」と思って、50万くらい貯めて、イタリアに一週間ぐらい行きました。
その建築物や空間に魅力があって、それで満足して帰れたとき、
建築に一生かけて学んでいく価値を感じられるかなと思って行ったら、仰天するほど、感動して。

それから、やりたいこと、目標みたいなものが一気に見えましたね。

 

そして入学から1か月。

専門は知識を自分で考えるっていうよりも、授業を受けて、
高校の延長のような感じで授業があるから、大学行きたいっていう想いが芽生え始めた。
そこから、いろいろ調べて3年生から大学に行けることを知って。
編入の勉強、建築の勉強。建築物見に行ったり、コンペに出したり。

その辺から生活ががらりと変わりました。
遊ぶ時間もなくなって、バイトの時間もなくなって、
寝る時間も、ご飯を食べる時間も惜しくなって。
必死でしたが、「建築をやりたい」という目的に支えられましたね。

 

晴れて三重大学入学。

 専門学校を卒業する頃に、小さいコンペで良い賞を取って、卒業したんです。
「大学に入っても、そんな感じでいけるかな」と思っていたら専門と大学の違いを痛感しました。

専門と大学の学びの違いに驚いた三谷さん。
大学ではどのように学んでいったのだろう。

大学で、学内で優秀な作品作って終わりみたいな雰囲気を感じたんですよ。
それを変えるという選択肢を広げるのは外から来た自分の役目かなとも感じて。
三重大にある部分を俺は盗んで、自分にしかない部分を三重に還元したいと。

 

同時に、大学生に対してもこう思ったという。

ほとんど建築に対して、目的をもって大学に来てる人はいなかった。
そんなに明確なビジョンを持っていない。僕はそれが嫌だったから、フリーターになった。
目的ってものが出来た瞬間に、学ぶ意欲も変わってくる。

「勉強したくなったら、勉強します」っていう話は高校のときからずっと話してたんですよ。
高校の時は、クラブに行って、イベントを開く。その部分が目的だった。
中学は釣りだけ、高校はクラブ、そして働いて、今は建築。

はまったらそれだけしかやらなくなる。
でも、どっかで飽きる時期は来る。だけど、建築だけは飽きなかった。

三谷さん2

諦めない力。

そんな三谷さんも大学卒業が近づいてくる。

卒業設計が4年生にあるんですよ。
三重大は卒業設計を夏に提出して、後期は卒論を書かなくてはいけない。 
でも、コンペをやりたいっていう想いもあったので、卒業設計が終わればコンペに取り組んでました。

だいたい、週1回コンペを提出するので秋から冬にかけて、
ほぼ家に引きこもり状態でそればっかりやってましたね。
それで10個近く出したけど全然勝てない。
卒論と両立しながらコンペに取り組んで、卒論出したら1月、2月。
コンペもまったく歯が立たなくて、卒業設計のコンペもあったけど、全部ボロ負けした。

全部中途半端で終わってしまって、このまま大学院行ってもやばいなって思って。

 

しかし、彼は諦めなかった。

悔しかったので、卒業設計終わっても、ずっとコンペを続けました。
それでそのまま大学院入学したんやけど、1年くらいやって結果残してから辞めようと思って。
大学院入って、初めてのコンペで賞を取って、やっと結果が出た。

「まだまだやれる、もう少し頑張ろう」とコンペをひたすらやって、
レクチャー行ったり、本を読み漁ったり、大学に行ってもコンペのために活動してましたね。

そこで何個か入賞して、次はなにをしようってなった。

そして、次に取り組み始めたのが三重大学周辺の雰囲気作り。

三重大学周辺の寂れたなんとも言えない感じ。
それをどうしていくかということを考え始めた。

そこで発足したのが三重大学建築学生集団「ASIT」。

 大学の使われなくなった著名な外国人建築家が設計した文化施設で、
「ASIT」として展覧会や、後輩の卒業設計展を開きました。

さらにいろんな人を巻き込む手段を考えて、
一線で活躍している建築家を招いたレクチャーを行うなど、
「活用」を通して、大学のあるスペースをどう使うか考えていきました。

 
当時を振り返って、こう語る。

目標を掲げるたび、それを越えてきた。
だけど、越えられていないときにこそ気づくものもあったし、
もがき苦しむときほど、辞めようと思ったときに目標を越えてきた。

その越える瞬間、悩みに悩んで苦しんできたこの時間が自分を強くしてくれたように感じる。

バイトにインターン。
どんどんやりすぎて、それでもいろんなことやりながら、自分としての軸が少し見えてきたかな。

 

そんな彼も大学院を卒業し、大学での1年間の勤務を終えた。
これからはどうしていくのだろう。

2020年東京オリンピック、2027年東京-名古屋間リニア開通、2045年東京から大阪までリニア開通。
時代の中心地を意識して、その都度、雰囲気について考えていたい。
だから想像しておこうと。

オリンピックの頃は、東京で働いていたいし、
亀山にリニアが開通する頃は、三重で働いていたい。
そして大阪でリニアが開通する頃、地元である大阪で働いていたいんです。

三谷さん1

時代の中心で考え続ける。
しかし、その根幹はいつも変わらず。

どの場所に人がどう集まって来るか考えていたい。
その土地の魅力や雰囲気を考えて、人が集まる建築とはなんなのか考え続けていきたいですね。

 

 

考え続ける。

 考え、思い描いた理想は必ず実現させてきた。

  

その彼がふんいきの理由を見つけ出したとき、

どんな作品を作り上げるのだろう。

  

時代の中心で、魅力的なふんいきを生み出してきた男。 

それが三谷裕樹。

 それはこれからも変わらない。

 

 

Twitter:@miiarchi

Facebook: YUKI MITANI

Blog: http://miiarchi.blog.jp/

 

【文章:江口 春斗】

【写真提供:三谷 裕樹】