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ラグビー部キャプテン、スタバ店員、カフェ経営、イベンター、DJ、ライター。 
彼は医学部生だ。

 「要領が凄く良い人なんだろうな。」

 確かに。
でも、それだけじゃない。

 これは、彼が、自分の手で、欲しい未来を、1つ1つ泥臭く掴みとってきた証。

 そんな彼は
可能性を還元し始めた。

 

-No.317- 森維久郎
三重大学医学部医学科5年。
潰しがきくと周りから勧められて医学部に入学。しかし入学後4年間医者になりたくならず自分の人生に疑問を持ち医療系以外の活動に手を伸ばして自分探しをする。世の中の常識に常に疑問を持ち行動した結果「社会を変える医療」に着目し医療の道に行く事を決意する。小児分野に進む予定。

 

―文字にしてみると、彼はとてもたくさんのことをしているように見える。
そこで素直に、本人に聞いてみることにした。
「何をしている人ですか?」

 なにをしている人?(笑)えっと、ただ、ひたすら迷い続けてる人。
今は医者になるんだっていう想いはあって、
そのなかで、医者という職業のなかに新たな可能性を見出したいって思ってる。
だから、医療系以外のことをやってる感じ。今は医学以外のことで医者とつながる可能性を探している。

そんな彼は「医療」というものをどのように捉えているのだろう。

 やってみないと、実際に医療に携わってみないと分からないものだけど、
みんなが求めている「医療」と医療者が考えている「医療」はちょっと離れているなって感じる。
悪いことではないけど、供給側の「医療」が「社会」のための「医療」ではなくて「医療」のための「医療」になっていると考えていて。
 社会において、人は「昨日」があって、「一昨日」があって、今ここにいる。
それに対して、医療はその時の病気を治す。
けど、根本の原因はその人が引きずってきた社会にあると思う。
 
 僕は子ども関係の医療に進みたいんだけど、子どものなかでも、
精神的ないじめや虐待に関わる母親の社会的な負担やそうさせてしまう社会構造に着目していきたい。
そこに医療の立場からなんとかできないかなって思う。

―その考えの根源は大学1年生の頃の行動が大きいと言う。

 大学1年生ってなにもないじゃん。人から何も指図されずに、自分のやりたいことやっていいよって言われて。
自分がその状態になったとき、何をしたらいいか分からなかった。で、とりあえず海外に行こうって思って。
そしたら俺の価値観と全く離れるものを持って生きてる人がいっぱいいて、「なんだこれ」ってなった。
 でも、同時に「いいな」とも思った。

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「自分が絶対にない」ことをしてみよう

 スタバでバイトして、DJも始めて。そのとき、部活をしていたから時間も限られてたんだけどね。
そのあと、自分でカフェを経営して。
ありえないこと、医学生以外の人たちと何かをやろうと思ったんだよね。
そこから、「自分で決めて自分でやる」ってすっごく面白いなって感じた。

 

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―「現実」を受け入れていくうちに、「夢」を語り始めた。

中学まで、死んでも良いと思ってた。だけど、今がすごく毎日が楽しい。
この感覚って、もしかしたらみんな持ってるはずなのに、僕は持っていなかったのかなって。
 けど、今、大人になって、就職とか考えるようになって、
現実的なものを1つ1つ受け入れていくうちに、夢を語り始めたんだよね。
みんなとは逆だよね。夢→現実ではなくて現実→夢。
例えば、子どものときにパイロットになりたいって夢を語るのとは逆なんだ。

―その「経験」を未来の子ども、そして親御さんに還元したい。

受験や就職といった「人生の境目」に立ち向かう子どもや親の可能性を見出せたらと思ってる。
それを「医療」に触れるなかで、できないかなって。
 その答えは全然出ていない。でもその兆しの1つは情報発信かな。

ライターでもある森維久郎。
そんな彼は自身のブログや「M-Labo」で記事を書いている。

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 M-Laboは医療系大学生が集まり、
ライターそれぞれの強みを生かした記事が集まったWEBマガジン。
創設3か月弱で多くの閲覧者を引き寄せる魅力あるコンテンツのなかで、
森維久郎は、他のライターとは一風変わった記事を書き、人気を集めている。
そんな彼に記事を書く上での「こだわり」を聞いた。

 俺は数を書くんだよね。
M-Laboには、凄い人ばっかなんだよ。(笑)
 人にはなかなかない経歴を持ってる人もいれば、「本めっちゃ読んでます」っていう人もいて。
でも、俺にはそんなバックグラウンドはない。
そんな俺にとって「可能性」がキーワードになってくるんだよね。

「少女時代」よりも「AKB」でいたい。

 想いとしては、読んだ人が「俺もがんばろう」って思ってほしいんだよね。僕の記事がなにか考えるきっかけになればって。
M-Laboで書いているときの自分は、そこらへんにいる普通の人をイメージして書いてる。
凄い人が話していても、「凄い」っていう感想を持たせて終わっちゃうと思うんだよね。
 だからこそ、「少女時代」か「AKB」であれば、俺は「AKB」でいたい。

―医療がメインでない人も読みやすい文章。
彼の影響で、自分の考えを発信するようになった人も増えた。

 俺の周りでも、ブログを始めた人は増えた。僕みたいなただの普通の人を見て、ブログを始めた人がいる。
それがとても嬉しい。特に三重で増えた。
ブログとか関係なしに三重県の大学生って面白くて、そんな人たちがどんな発信をするか楽しみ。
「三重」は熱いなって思うよ。

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―影響力を与え続ける彼。
なにか工夫していることはあるのだろうか。

俺なんにもしてないよ。(笑)
基本的に、人に「GO!」って言ってるだけ。

 それにはある「きっかけ」があった。

 俺が1年生のときラグビー部に入ってたんだけど、そのときの5年生にカリスマ性があってかっこいい人たちがいた。
でも、その人が抜けた瞬間に、みんなバラバラになっちゃったんだよね。
カリスマ性って怖いなって感じた。追っていくもの、残されたものは脆いなって。
だから、みんなそれぞれがリーダー的思考を持つことが大事なんだなって。そこからは主体性を持って動いた。

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―奮闘した日々。

まず1つ下の学年に1人1人面談をした。「お前はこれからどうしていきたい」って。
みんながしたいってことを実現しないと意味がない。
ラグビーって15人でやるんだけど、15人それぞれの意識が明確で、意思疎通が取れないとダメになるんだよね。

「最低」が「最」。

そのときのリーダーシップは、自分は「雑魚」っていう立ち位置を取って、
人の意見はちゃんと聞くということを軸にしてた。
キャプテンなのに本当にラグビーが下手だったという事もあるけどね(笑)
 
 でも結果、それが上手くいったんだよね。
「こうやったほうがいいよ」って言うんではなくて、
その子が考えてることがあったら、「できるできる!」って。

 自分が考えてることって後押しされないと辛いから。
違うなって思うことはちょっと修正してあげるくらいで。
少なくとも、失敗はするかもしれないけど、形になるから。

だから「道を作ってあげない」っていうのが俺の考えかな。
「一緒に作ってこか」みたいに。
たぶんどんな人でも「これがしたい」っていう思い描いた理想はあって、その時点でもう道は作られてると思うんだよね。
道を作ってあげる自信は自分にはないし、厚かましいとも思う。

そんな彼は「1つ」の選択肢を取るか、頭を悩ませる。
それは「休学」。当初、彼は「休学」をしようと考えていた。

 簡単に言うと物事を難しく考えた。
社会に入ったらドロップアウトできない、だから医療現場に入る前の今しかないなって。
僕にとって「休学しない」ことが怖かった。
医者になりたくなくて、まわりの子たちが医者になる想いを熱く話してるのを聞いても、
当時はほんとに響かなくて。で、実習も子どもと関わる以外面白いと思えなかった。
だから、1年間休学をしたら選択肢が増えるかなと思ってた。

―そんなとき、彼は分岐点を迎える。

「軸を作る」という

日本で一番ぐらいに有名な病院の副院長さんとお話をしたことがあって。
そこの総合計画に携わりたいと思って、話をしに行ったんだよね。
そしたら、「なにか軸はあるの?」って聞かれて。
 「軸がない人間に何もできるわけないでしょ」って。すごく響いたんだよね。
社会に対して何かしたいと思うのに、自分の軸がない。
そんな状態で「休学」してドロップアウトしてもなんの意味もない。
1年ドロップアウトするなら、なにか軸を持ってドロップアウトしないといけない。

 だから、とりあえず軸を作ろうと。
そしたら「軸を作る」という軸ができた。
その代わり、そこで1つ俺が覚悟したのは、
なにかしたいと思ったら社会人になっても、家族を持っても俺はそれをしたいって。

彼の覚悟は、時間をかけたぶん、強い。

統計上、それが難しいことは分かってる。
社会人になればなるほど、自分に時間を費やすことが難しいことも分かってる。

 

森さん4

なにかを変えるなら、いつでもできると。

 そう、なにかを変えるために、社会をドロップアウトする、レールを外れる心の決意が出来た。
そして、先送りした。そしたら「医者」になりたいっていう気持ちがでてきた。

 

彼が築いた、たくさんの「引き出し」。
その引き出しを決して見せびらかすことはなく

 何かやりたいとあなたが思ったとき
彼はあたたかく、柔らかく、背中を押してくれる。

 彼自身が、「何か」を求め、探し、掴み取ってきたから。
彼は「何か」を求める「他者」に優しい。

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【文章:江口春斗】

【写真:森維久郎・江口春斗】