1014041_387008241443730_755658917_n

2011年3月11日
私達はこの日を忘れはしないだろう 

いまだ傷跡の残る被災地に向けて
人々の心の拠り所になるよう

「わらべ地蔵」を送る
彫り師、冨田睦海さん

 活動にかける思いをうかがった

 

 

 

自分たちに出来ることを

 

 

「今まで居た人が突然いなくなるということは
とても悲しいことですよね。
 小学校が津波におそわれたという報道を見て
自分も一人の親として、被災地の方々、
特に亡くなられた方に何かしたいと思ったんです。」 

冨田さんの同級生の中にも多くの東北出身の方がいらっしゃるそう。

 

「最初は”お位牌”を作ろうと思っていたんですね。
 でも、それはまだ早いんじゃないか
っていうアドバイスをいただいたんですよ。
 被災された方々の中には、まだ死を受け入れられてない方もたくさんいらっしゃる。
 もし、自分たちがそこで手を合わせる対象である”お位牌”を送ってしまうと、
死の押しつけになるんじゃないかって言われたんですね。
 お経をあげるのも行政から自粛要請があったぐらいでした。
 でも、実際に自分も被災地を訪れてその言葉の意味がすぐわかりました。
 紙一重のことをしようとしていたんだなと痛感しました。」 

いまだに行方不明のままの方もいらっしゃる。

  

「そこでもう一度自分に出来ることは何なのだろう
って考えた時にやっぱり彫刻だなって思ったんです。
 瓦礫撤去にはそのプロの方がいらっしゃる。
 僕らは彫刻のプロです。
 彫刻で被災された方の心の拠り所になるものを
って考えたのがきっかけですね。」 

                     
o0300040011321972810

こちらがわらべ地蔵

わらべ地蔵には愛がこもっている

 

 「僕たちだけでわらべ地蔵を作るのではなく
彫り師でない人も、皆で作って被災地に送ろうと考えていました。
 そんな時、縁があって山梨のお寺の和尚さんと一緒に作ることになったんですね。」 

しかし一つ問題があった。

 

 「彫るのには彫刻刀が必要です。
 でも彫刻刀なんて日頃から使うものではないし
完成させることが出来るのかどうかは
僕らもやったことが無いですし、正直わかりませんでした。
 けれども、初めての方が完成できるように簡略化するのも
僕らの仕事やなって思って一度シュミレーションしようって
第一回を開催しました。」 

結果は・・・。

 

「結果は大成功でした。
 初心者の方達ばかりにも関わらず、
色んな表情のとても可愛らしいお地蔵さんができたんです。」

 

 o0300040011297924786

 「今までに80回以上、このわらべ地蔵をみなさんと一緒に作ってきました。
そのすべての開催をお寺で行っているんですね。
 それにはやっぱりお寺は特別な場所だという思いがありますし、
彫ることにとても集中できる場所なんです。
 彫るのに集中することで自問自答ができ、
また『誰かのために』という思いで彫ることで一生懸命になれるんですよ。」 

わらべ地蔵作りに協力してくださった方によく言われる言葉があるそう。

 
「『彫っているうちにとても愛着が湧いたから今回のは自分で持って帰って
またもう一回次作るからそれを被災地に送って欲しい』と言われることがあるんです。
 でもそれは一切お断りしてるんですね。」 

どうしてなのだろう。

 

「愛着がわくってことはそのわらべ地蔵に
とても気持ちが入ってるってことだと
思うんです。
 その気持ちが大事だと思っています。
 今や3Dプリンターなんかもある時代で、
機械で彫ればわらべ地蔵も素早く大量に作ることができます。
 でもそれでは意味がないんです。
 持って帰りたいぐらい愛着があって愛がこもっている地蔵さんを
送ることに意味があるんです。
 また、彫ってくださった方も自分で一生懸命彫ったわらべ地蔵を
手放すことで被災者の方にも共鳴できる部分もあると思っています。」

 

 人は一人では生きられない

 

 「わらべ地蔵を被災者の方に渡すと、色んなことを話してくださるんですね。
 このプロジェクトを始めてから
二年半の間で三千体以上をみなさんと作ってきました。
 震災から日がどんどんだっていくなかで
大事な人が亡くなっているかどうかもわからない人が
切り替えるまでの気持ちの拠り所が必要だと思うんです。
 さあ今日からって切り替えることはとても難しいことです。
 僕たちがわらべ地蔵を渡すことで、皆さんの話を聞くことで
次のステップに進めるお手伝いになればいいなと思っています。」 

人と人との繋がりの大切さとは。

 

 「人は一人では生きられません。
 けれども『誰かのために』という気持ちが
必ずどんな物事も不可能から可能にしてくれると思います。」

 

 続けることの大切さ、これからの未来

 

 「僕はこのプロジェクトを続けることに迷いはありません。
 色々他のことで迷うことはあります。でも考えても
答えはないのだろうなって思います。」 

続けないとわからないこと。

 

「続けないと完成はないと思います。
 それと同時に完成は永遠にないと思ってもいます。
 一年で仏像を彫るのをやめてもその作品は完成しています。
 でも、それを十年続けた時に、
一年目の作品をどうしても手直ししたくなると思うんですね。
 続けてた意味は後からわかるんです。」

 私達に向けてメッセージをいただいた。

 

 「色んなことにチャレンジしてください。
 でも、何でもいいわけじゃなくて
意味のあること、自分の夢に繋がることにチャレンジしてください。
 そしてそれを続けて下さい。
 続けることの意味はあとからついてきますから。」

1560567_387008211443733_1543693883_n

 被災者の方の心の拠り所になるように

冨田さんは
「わらべ地蔵」を送り続ける 

「わらべ地蔵」が必要なくなる日まで

わらべ地蔵を被災地へプロジェクト 

 

【文・写真:酒井 美佳】