文字入り1

今年もまた一段と寒さが身に突き刺さる12月。
大学三年生は

「内定が決まるまで」

スーツという鎧を纏い、
戦い続ける時期を迎えた。
自己PRを練り上げ、
質問フォーマットに完璧な返答を用意し、
面接に向かう。
 

もちろん倒す相手は、
目の前に座っている
企業の人事採用担当者である。

「どうすれば自分を魅力的に魅せられるのだろう」
「どうして自分は落とされたのだろう」

答えのない問いに
頭を抱える大学生に対して、
人事採用担当者は
決まってこう答える。

「弊社とは御縁がなかったということで」

これが
人事に対する僕のイメージだった。
彼の話を聞くまでの。

彼の採用に対する価値観、思想に、
僕は心が震えるほどの衝撃を受けた。

「彼に出会えた就活生は本当に羨ましい」
と僕は思う。

 

丸尾 拓也

1988103日生まれ。学習院大学卒業。学生時代は、アメリカンフットボール部に所属し、ポジションはクォーターバック。3年生4年生の時、2度リーグ優勝へチームを導く。と同時にチームMVPも獲得。さらに4年時は関東関西選抜選手で戦うオールスターにも選ばれる。そして新卒で株式会社NEXWAYの営業部に就職。新人ながら1000法人超のクライアントを受け持った。2012年秋に社長直轄の採用プロジェクトの責任者を経て、現在は人財開発室に所属。2015年度卒向け新卒採用活動ではナビに頼らない採用を取り入れ、12月就活が始まる前に2000人以上の学生と直接出会い、その学生に合った、型にとらわれない就職支援を行っている。個人でも新しい就活の形を創る「バー活」を主催している。

 

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「人事っていうのはね、文字通りヒトゴトなんだよ。」

彼は上司からこう言われたそうだ。

 

人事は採用のイメージがあるけど、採用以外にもいろんな仕事があります。労務や給与計算、制度設計、社員教育などがありますが、基本的にどれも自分のためではないんです。人事は誰かのためにやる仕事なのです。僕が行っている新卒採用の職務は会社のため、その子のためです。給与や制度設計、教育にしても、社員が働きやすいようにし、その結果、最終的に会社の利益に繋がる流れをバックオフィスから整えるためにあるものなんです。反対に、営業は「ジブンゴト」。もちろんお客さんあっての事は大前提ですが、基本的には自分の提案、自分のトーク、自分のアイディアを磨きぶつかっていける仕事なんです。

 

もともと営業だったため、人事になった最初はそのGapに苦しんだという。
それでも彼は自分を貫いた。

 

僕は自分のことは自分で工夫してやりたい人だし、自分でやったことの結果が明確に欲しい人だったから、最初はめちゃめちゃ苦しかったですね。なんとなく、自分の中で「ジブンゴト」というものを捨てられなかったから。上司に「ヒトゴト」と言われて、確かに実際にそう感じる部分も多々あるけれど。でも、
採用に関してはやっぱり
「ジブンゴト」にしていきたいと思ったんです。
誰かの人生に関わる責任は持つ必要がある。言葉だけじゃなく行動でも責任をとらなきゃな、と思うんです。自分の身ひとつで出来ることはいっぱいやってあげたい。もし自分じゃできないことだとしたら誰か他の人を紹介したり、お願いしたり、巻き込んだりしながら、出来る事の範囲を拡げたり。関わる以上は最大限誠意をもってやりたいなと思っています。文字では「ヒトゴト」と書く人事の仕事だとしても、なるべく「ジブンゴト」にして、学生と話すときは
俺と出会ったから」「俺の言葉が絶対この子の何かに左右するから
と思いながら必死に言葉を探して話しています。

                             

実は彼自身、
ヒトゴトじゃないジブンゴトの採用を
してもらった経験があったという。

 

**

 

就活生だった僕はあるベンチャー企業に訪問に出かけた。
記憶が正しければ創業4年、採用人数若干名、従業員15名程度の東京勤務で初任給もいい会社だった。
ここにはもう10回近くオフィスに足を運んでいる。
その日、社長さんとランチをする機会を頂いた。
「丸尾君に来てほしいんだ」
ついにその言葉を聞いたとき純粋に嬉しさが込み上げてきた。ありがたいと心から感じた。なのになぜかそこには
「一緒に働きましょう」
と言えない自分がいた。だから思った、もしかしたらこの会社ではないのかもしれない、と。
そうして僕は、なぜだか素直に今の気持ちを社長さんに伝えてしまった。
「今A社とB社とC社から内定をもらっています。その中でもA社とB社に興味を持っています。なので正直ここで御社に決めるという覚悟は出来ません。」 

―そうですか。では残念ですがあなたとは御縁がなかったことに。

そう言われると思っていたのに、返ってきたのは意外な返事だった。
「いいんだよ。ちなみにA社はこういう会社だと思うよ。えーと、B社はこういう考え方を大事にする会社って見えるな。丸尾君はこういう思考をする子だからきっとA社のこういう部分が合っているかもしれないね。でも、後悔しないようにきちんと全部の会社に話を聞いておいで。」
まさかこんなアドバイスがもらえるとは思ってもみなかった。そして社長さん自身の思いを僕に伝えてくれた。
 「でも僕は丸尾君、君と一緒に働きたい。だから待っているね。」

**

 「こんな人に出会えて、こんな経験をさせてもらえた自分はラッキーだったと思う。」
「でもだからこそ、そのラッキーを必然に変えていきたいんだよ。」 

このヒトゴトじゃない採用に出会えた経験を
今度は彼が
次の学生に提供していこうとしている。

 

積み重なった経験が、彼の魅力を裏付けていた

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彼のあたたかく丁寧な言葉、
柔らかな表情から
僕との「出会い」を
彼は大切にしてくれていると
心が、思った。嬉しかった。

小澤君ともさ、会うまではどんな学生さんなのかな、と僕もワクワク、ドキドキして待っているけれど、やっぱり会ってみると、いいなと思えて、だから僕も精一杯君に協力しようと思うんだよね。やっぱり、どんなに世の中がより効率的に早く、便利な方向に流れていても、最後は人と人だから。実際に学生さんにたくさん会うことで、その学生さんが今何に悩んでいるのか、そこにはどんな課題があるのか、を一緒に探せるんだよ。だからそのためにひたすら会う。それは営業の頃、受注できなくてもひたすら訪問して、常にFace to Faceを大事にしていた経験と重なるね。

今年からNEXWAY
ナビエントリーや説明会に頼らない採用に挑戦しているという。 

一度会った学生を大事にし、
その学生と会社、社員との相性を
マッチングさせていく。
双方に選んで、選ばれる採用活動だ。

 学生と出会う機会が多い
今」に対して

彼はその熱い思いを
言葉に変えてくれた。

採用担当になってしまうと、やっぱり採用目線でみてしまうから「うちの会社に必要かどうか」といった判断が入ってしまう。それでもFace To Faceで話しているその瞬間は、その子の人生に関われる瞬間じゃないかと僕は思うんです。せっかく出会えて、人生に関われたにもかかわらず、就活が終われば「ハイ終了」ということはしたくない。自分が関わった学生には色んな選択肢を用意してあげたいし、別に就活だから関わっているというつもりもない。いち社会人の先輩、就活を終えた先輩として、自分の持っている経験やしてもらったことはみんなにしてあげたいし、逆に自分自身されてこなくて「もっとこうしてほしかったな」と思ったことはどんどんしてあげたいと考えています。
出会って「コイツのために何かしてやりてえ」と思う気持ちはその就活だけで終わるほど小さな気持ちじゃないんですよ。

 

3  

「現在の就活の仕組みの中では、
学生と企業は対峙する立場に
見えてしまうけど」
と、彼は言う。

僕の中で、大きく意識が変わった企業との出会いがありました。ある出版社さんの書店に対するプロモーションのコンペの時です。要は「新しい本がでました」という情報をどうやって各書店に認知してもらい、いかにそのお店の棚にならべてもらうか、というマーケティング活動の提案です。入社して半年頃でしたが、一からご提案していて、受注を頂けた時のことでした。ハンコを押してもらった後に聞かれたんです。

*** 

「丸尾君ありがとう。今回一所懸命提案をしてくれたし、もらった話に納得感があったよ。素晴らしいご提案だし、是非一緒にやりたいと思う。だからあと一つだけ確認させてもらっていいかな?」
「ありがとう御座います。確認とはなんでしょう」
「丸尾君は営業マンだよね?」
そうですね、と答えた僕はどうしてこの質問をされたのかその瞬間はわからなかった。
「僕も丸尾君を営業マンとしてみてるし、間違いではないんだけど、すごく悪い言い方をしてしまうと、丸尾君はうちの会社からいかにしてお金を取ろうか、と考えていなかった?」
ドキッとした。もちろん、お客さんのためと思ってご提案していたけれど、会社のノルマや目標があったから、なんというか、自分のため、自分都合の話をしてしまったところがあったのかもしれない。それは本当は見透かされてはいけないことだったのに。
「申し訳御座いません。そう感じさせてしまいましたか?」
「すごく感じたよ。でも、丸尾君が一所懸命だったからこの提案に乗ることにしたんだ。この商談は、丸尾君にとっても、僕にとってもいいものであってほしい。確かに、丸尾君と僕は商談をしている、という意味ではテーブルを挟んでいるし、対峙しているのかもしれない。僕にとっては、その提案がどれだけ成果が上がる見込みがあるか、安く発注出来るか戦う相手だし、丸尾君からみればお金を持っている会社をどうやって倒すかという発想でもおかしくない。
でも僕は丸尾君、君には僕の隣に座って、いかにこの本の魅力を世の中により広く知ってもらうか、この提案に乗る事でイマの会社を大きくしていくか、を考えていくために、隣に座るパートナーとして手伝ってほしいんだ」

***

その時の気づきのインパクトは大きくて、意識、行動がめちゃめちゃ変化しました。その一件が今の自分に続いている気がします。営業のときは「対峙するパートナー」はクライアントでしたが、今、採用担当である僕の「対峙するパートナー」は学生です。もちろん、いいな、と思う学生にいかに自社に来てもらえるかは、それは仕事ですから当然やるべきことです。

しかしそれ以上に、適切な情報を伝えたり、その学生が輝ける場所を見つけるかという活動は、対峙すべきじゃない。隣に座るパートナーとして関わることが大事なんだ、といつも思っています。

  

彼の採用に対する
熱意の中身は

出会った人への
愛情で溢れていた。

君がもし

「これからどう社会に出たらいいか」

わからなくなった
としても、

彼はジブンのコト
のように考え、

隣に座ってくれるだろう。

 

 

                         【文..小澤泰山】