ぷっち記事1

 

 

“負の連鎖を断ち切りたい。”

 

「ぷっち」の愛称で親しまれる、

朗らかな笑顔が素敵な彼の

過去と胸に秘めた熱い想い。

 

 

米沢辰弥(よねざわ たつや)

岐阜聖徳学園大学 教育学部 数学専修。

あしなが学生募金事務局にて、募金活動を積極的に行う。母親に女手一つで、自分を含めた五人兄弟全員を進学させてもらった経験から、同じ境遇の子供たちにも進学をしてほしいと心から願っている。

現在、あしながの活動で出会った全国の仲間と、児童養護施設の支援団体『MHP』を立ち上げ、今後特に心のケアに重点を置き、様々な面から支援を行う予定である。

また、12月15日に開催される『遺児と母親の全国大会(※)』に参加する予定である。

 ※『子どもの貧困対策法』の制定を訴えるため、2009年より24回にわたって『遺児と母親の全国大会』を行い、ついに今年の6月19日に制定された。しかし、まだ施行には至っていない。そこで、今年行われる同会では、対策法の具体的な内容を決める際の要望を訴える。各政党の議員を招き、遺児や遺児の母親の生の声を伝えたり、要望を訴えながらデモ行進をしたりする。

Twitter:@3217pucchi Facebook:米沢辰弥

 

 

 

■自分のやりたいことをやりたい

 

―どうしてあしながの募金活動などに積極的に取り組もうと考えたのですか?

あしながでは、片親だったり両親がいなかったり、親が重度の障害を持っていたりする子供に奨学金を貸し出しているんです。

実際に僕の家庭も父親がいないので、高校の時から奨学金を借りていました。

高校奨学生は特に活動はないのですが、大学奨学生は活動があり、募金活動などをしています。

 記事2

 

MHPという団体は、あしなが育成会での活動をきっかけで立ち上げたのですか?

あしなが育英会では年に一回ずつ、高校奨学生の集い、大学奨学生の集いがあり、地域ごとに集まって、色んな人を呼んで講演を受ける機会があるんですね。そこで、ある学生団体の代表の方に講演をしてもらったのですが、それがとても印象的で、皆ものすごく刺激を受けたんです。刺激を受けた内の一人が、自分たちも学生団体を立ち上げようと言い出して、全国で呼びかけて、あしながを中心に色々な大学の人が集まって作ったのが、『MHP』です。

 

―なるほど。でも、どうして新しく団体を立ち上げようと思ったのでしょう?

大きな団体の一部になって、本当に団体自体を動かせるのか、自分のやりたいことがそこで出来るのかな、と考えました。インターネットで調べてみて、児童養護施設というテーマは無くはないけど、児童養護施設の支援そのものをやっている団体がなかなか見つからないし、既存の団体でそれを本当に出来るのかな、という思いがありました。

それなら、新しく団体を立ち上げて、自分の思いを直接反映させよう、と思ったのです。

 

■境遇が似ているからこそ出来ること

 

―児童養護施設の支援とは、具体的にはどのようなことをするのでしょう?

金銭的支援や、心のケアが中心です。

特に力を入れたいと考えているのが心のケアです。心のケアは、実際に施設に出向き、直接行いたいと考えています。児童養護施設の子は勿論、あしなが育英会の高校生もそうなのですが、お金が原因で進学を迷っている子が多いと思います。その子たちの悩みを聞いたりアドバイスをしてあげたいと考えています。

 

やはり自分を含めMHPのメンバーは、あしなが育英会に所属していて、片親や障害を持った親がいる家庭で育ってきました。そういう点で児童養護施設の子たちと、割と境遇が似ているんですね。裕福な環境で育った人が、その子たちに対してアドバイスをしても説得力が無いと思うし、適切なアドバイスをすることは比較的難しいと思います。でも、境遇が似ている僕たちなら、きっとその子たちに共感してあげられるし、逆に僕たちがその子たちから得られるものもあると思うんです。

 

―そこまで心のケアに対して熱い思いがあるのはどうしてなのでしょう?

先ほど話しました「集い」のなかで、奨学金を借りている高校生と大学生が、合同でキャンプをする機会があって、そこで片親だったり親が障害を持っている子の心のケアをするんですね。心のケアは主に進路相談が多くて、お金のせいで進学を迷っている子が多いので、大学生がその子たちの悩みを聞いたりアドバイスをしてあげるんです。自分が昔それに参加して、悩みを聞いてもらってすごく気持ちが楽になったし、為になることも聞けて、本当に嬉しかったんです。

なので、似た境遇の僕たちが、そういうことを出来たらいいな、と思っています。

 記事3

 

■負の連鎖を断ち切りたい

 

―進学を強く望むのもまた理由があるのでしょうか?

負の連鎖を無くしたいんです。お金が無いから大学に進学できなくて、就職する。でも平均的に大卒よりも高卒の方が、生涯で稼げるお金は少ない。稼ぎが少ない状態で子供が出来て、その子供がその環境で育って行けば、将来またお金が無いから就職する。こういう負の連鎖を断ち切りたいですね。

例え将来の夢が決まってなくても大学に進学すれば、そこでやりたいことが見つかるかもしれないし、年収も変わってくる可能性が高い。

 

僕は片親であることが「普通」でした。自分の知らないところで母親が色々とやりくりしてくれていて、高校時代は全く事情を知らなくて、勉強ができなかったり、部活ができなかったり、なんてことは一切ありませんでした。片親だって自覚は全くなかったんですよね。でも、大学に進学してから話を聞いたり、自分で調べて世間一般の平均年収と比べてみたりして、本当に厳しい状況だったんだな、と気が付きました。

 

母は、片親じゃない家庭と同じことをしてあげたいと思っていたそうです。お兄ちゃんが進路変更をしたいと言った時も、やりたいことをやりなさいと言って、反対しませんでした。自分がその状況だったらきっとそんなことは言えないと思います。

 

そうやって、自分が親にしてもらったことを、恩返しではないですけど、次の世代にも繋げていきたいという思いが僕の原動力になっています。

 

 

同じ境遇だからこそ解る悩み。

不安を

取り除いてあげたいという想い。

 

様々な現状に目を向けて生まれた、

「負の連鎖」を断ち切りたいという願い。

 

人との「出会い」を大切にして、

彼がこれからも成長できますように。

明るい未来が訪れますように。

 

【文・写真…大竹莉花】