ある日、私の大学に
パーマをかけた髪にサングラス、
黒の革ジャンをばっちり着こなしたロックなオジサマが現れた。

オジサマは私たち大学生を前に高らかと語った。
「『イクメン』って言葉をなくすことがゴールなんだよ!」

 

安藤さん 

このロックなオジサマは父親支援を行っている
NPO法人Fathering Japanを立ち上げた張本人。

現在、育児に協力する男性は『イクメン』と呼ばれている。
だが、そのような言葉が流行るのは【当たり前】じゃないから。
つまり、オジサマが言っているのは『イクメンを当たり前にすること』。

 

1時間30分にも及ぶ講演で話してくれたのは
現代社会の家族の現状、
固定概念による家族形成の弊害、
この時代だからこその幸せ、
全国のお母さんの気持ち
お父さんの気持ち・・・

安藤さんの話を聞いたら考えちゃうよ。
「どんな家族を創りたいかな」って。

 

NPO法人Fathering Japan ファウンダー
安藤 哲也

6歳年下の奥さんと結婚後、3人の子宝に恵まれる。出版関係の仕事に携わり、何度も転職を経験。2004年に楽天ブックスの店長に就任し、その間にNPO法人Fathering Japanを立ち上げる。(ちなみに転職回数計9回!)楽天を退職後はNPO活動だけでなく、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」の顧問、日本子育て応援団の共同代表などなど多くの社会活動に従事する。2011年には新たにNPO法人タイガーマスク基金を立ち上げ、児童養護施設で育つ子供の自立を応援している。 インタビュー記事よりも経歴の方が長くなりそうなので、気になる方はこちらをご覧ください。

 

現代の『家族』

 

かつては一方(たいていは父親)の所得が上がっていたから、片方が働いて片方が家事や育児に専念していた。その中で、子供が成長し、家を買い、大学に行かせてやることができた。

だけど、今は難しいんだよ。

 

時代が変わって所得が順調に上がらなくなってきたでしょ。
だからこの成熟化した時代に適した、結婚の在り方、お父さんの育児、そういうものを新しく作っていかなきゃいけない。今までの『父親が外で働き、母親が家で家事、育児をする』という構造ではみんな疲れちゃうよ。

お父さんもお母さんも働けばいいじゃない。
女性も働くことに喜びを感じている人はたくさんいる。それをお父さんも、社会も認めてあげればいいんだよ。

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家族ってね、結婚したから家族になれるわけじゃないんだよ。

子供が生まれたから親になれるわけでもない。
うまく絆を築きながら家族を創っていくにはそれなりの意識、行動、作業が必要なんだ。

 

でも、そんなの誰かが教えてくれた?
学校で『家族の創り方』って習わないでしょ?

教わらないままやってしまうからエラーが起きちゃうんだよね。
教習場で練習しないまま路上運転しちゃうのと同じだよ!
そんな車乗りたくないよね?
ある程度高速教習や路上運転でヒヤッとする経験のなかでみんな上達するんだよ。

 

これまでの社会では母親が子育てを毎日やっていたけど、父親だって毎日やっていれば誰でも上達する。それが毎日できないような働き方をしてしまっているっていうのは社会の構造上の問題だよね。

そういうことも含めてFathering Japanではお父さんが育児に参加しやすい環境づくりをしているんだよ。お父さんの意識改革だけじゃなくて。

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お父さんが育児に参加しやすい環境

 

男女共にどちらが家にいるとかじゃなくて、それぞれの能力がちゃんと活かせる社会でお互いをリスペクトしあえるような、そういう環境だよ。

男性だけが働くことを頑張らなくてもいい社会。
贅沢を望まなければ、僕はそんなに難しいことだとは思ってないよ。お父さんが1人で働いて年収400万もらうのと、お父さんとお母さん、それぞれ200万稼ぐのって同じだよね。

でも日本人は栄華を極めてしまって、特に僕ら世代(50代)はバブルを知っているから、『また夢をもう一度』って人がたくさんいるんだよ。

自分の子供に苦労はさせたくないからって早い時期から競争に勝つための教育をしてしまい、自分の狭い経験でしか夢や家族の幸せをイメージできない愚かさがあるよね。
でもね、今の時代にあった生き方にしたらいいんじゃないかな。あまり背伸びせずにがんばったらいいのに。

 

安藤さんの『パパスイッチ』が入った瞬間

 

そりゃ、一人目の子供が生まれた時だよ。

子供が生まれると生活が分刻みになるんだよね。その中でかつてのような『男は黙って飯出てくるのを待つ』って態度は、おばあちゃんのような家のことをやってくれる人がいない限り現代の共働き家族には無理なんだよ。やらないと自分も楽しくないし、家族が大変になるし、親子や夫婦の関係が悪くなるばかりだからさ。やらなきゃなって思ったし、そういう切迫感とか義務感だけじゃなくて、人生の楽しみの一つとして子育てをしていたよ。

 

父親になったことで人生が開けてくるんじゃないかな。一人の人間としても、社会人としても、ステップアップできるチャンスだと思ったんだよ。子供が生まれたことで、自分の単調な人生に変化をつけてくれて、仕事だけじゃない視点を見せてくれる。

 

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幸せを感じるとき

そんなの3か月に1回しか来ないよ。

小さい子供がいるとそんなものはなかなか来ないんだよ。
だって毎日子供がニコニコしてるなんてありえないし、兄弟喧嘩がなかった日って、君、ないでしょ?それは親にとっては全然幸せじゃないよ。

 

たまに(あれ、今日、なんかみんな風邪ひいてないし、揃ってご飯食べてるし、奥さんも機嫌良いし、今日・・・これ、幸せかな?)みたいに感じるときは奥さんに「なんか今、うちに幸せが来てない?」って言うんだよ。奥さんも「あぁ、そうね!」って言って、じゃあ乾杯しようかってなるんだけど、30分も経つと、また下の子供二人が喧嘩始めたり、3歳児がうんちしちゃったりして、「あぁ、また3か月後だね。」って言って、日常に戻るんだよ。

 

まぁ、本当に幸せを感じるときは、子供3人が自立して子育てが終わった時かもしれないね。

 

僕の幸福論は「幸せはいつもそこにあるわけではなく、お金で買えるものでもなく、日々やるべきことをやって一生懸命に生きている中で、たまに舞い降りてくるもの」。

 

未来のパパ、ママへ

 

「人生はシナリオのないドラマだ」とか、よく言われるけど、そんなことないよ。

 

自分でシナリオを書いといたほうが人生楽しめるな~と思うのね。ただ、そのシナリオも最初に書き上げた第一版で終わりじゃなくて、主人公は自分で、思わぬ脇役が出てきたら、そこで書きなおせばいい。結婚とか子育てってそういうことだよ。これまで全く違う文化の中で育った人と一緒に暮らすってことを「これはちょっとシナリオが面白くなるぜ」って思えばいいんだよ。で、上書きしていけばいい。

 

この上書き作業が面白い人が幸せだろうし、結果的に面白いドラマだよね。終わってみたら視聴率良いドラマだったよねってなるからさ。

 

講義の中でも私を含め、全長構成が感動した話がある。

 

「会員のパパでね『安藤さん、僕、ママより、子供の夜泣きあやすのうまいんです!』って言うやつがいたからさ、『競っちゃダメだよ。子育ては協力しなきゃ。』って言ったんだよ。

ある夜、その子供の夜泣きが激しくてパパはお手上げ、ママも半泣きになりながらあやしてたんだって。その時、パパが僕の言葉を思い出したそうでね。

半泣きになりながら子供を抱っこしているママを後ろから、子供ごと抱きしめて、

『ママ、いつもありがとう。ママがいつも頑張ってくれてるから、この子はこんなに元気に育つんだよ。ありがとう。』って言ったんだって。

そしたら、ママの目から涙がほろりと出て、子供は30秒後にスヤスヤ眠ったんだって。

つまり、ママの焦っている気持が子供に伝わって夜泣きが止まらなかったんだよね。それに気づいた時に、パパの役目はママを安心させてあげることだ、って感じたそうだよ。

子育てはママだけじゃ辛いよ。ママもパパも協力して家族を創らなきゃ。」

 

ね?考えたでしょ?想像したでしょ?
将来のパートナーをぎゅっと抱きしめる自分の姿を。

 

(文・原優衣 写真・小畑宏介)