隣の国・中国で起きていること、様々な問題。

どうすればこの状況を変えられるか?

イリシャットさんの答えは、「勉強すること」だった。

  

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イリシャット・イブラヒム
中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市出身、仙台市在住。日本在住6年目。高校卒業までをウルムチで過ごした後、上海の大学に進学し法学を専攻。卒業後日本に留学し、語学学校、研修生を経て東北大学で法学修士号を取得。2013年11月、中国に帰国。

 

 少数民族はいらないという考え方が頭にきて…


どうして日本に留学しようと思ったのですか?

日本に対して小さい頃から憧れを持っていました。実はこう見えてアニメが大好きなんです() 特にブリーチ(※1)が好き。アニメが日本に憧れを持つようになったことの一つ目の理由です。

※1「BLEACH(ブリーチ)」…週刊少年ジャンプで連載中の漫画、及びそのアニメ作品。

もう一つの理由は、中国があまり多民族に寛容な国ではないことです。僕は中国の中でもナンバー3か4の大学を卒業しています。それにも関わらず、上海で就職することが難しいのです。民族的な差別が理由で良い働き口はなかなか見つかりませんでした。自分がウイグル人だからかはわかりませんが、中国では「少数民族はいらない」という考え方が根強く存在しています。それが頭にきて、だったら日本に留学してやろうと思って日本に来ました。 

 

 イベントや学校でウイグル文化を紹介


イリシャットさんはウイグル文化の紹介をする取り組みを行っているそうですね。

はい、今年で3年目になります。せんだい地球フェスタ(※2)でブースを出展したり、小中学校や高校で話をさせてもらったりしています。せんだい地球フェスタのブースでは興味を持ってくれた人には説明するようにしていましたが、ほとんどの人はアクセサリーだけを見ていきましたね() ウイグルの文化に興味を持って質問してくれたのは5~6人でした。小学校ではほとんど遊びのようなものですが、中学・高校では授業のような形で写真を見せながらウイグルの地理や文化、言葉などを紹介しています。

 ※2「せんだい地球フェスタ」…仙台市で毎年開催される国際交流イベント

どうしてウイグル文化の紹介をしようと思ったのですか?

自分の文化に限らず、小さい頃から「こういう人がいるんだ」と知ることはお互いを理解するために大切だと思っています。日本では国が奨励して小中高の段階から異文化交流の機会を積極的に作っていますよね。普通、こうやって異文化を持つ人とコミュニケーションを取ることは大切だと思うでしょう。ところが中国にはそういった考え方はありません。大学には留学生がいましたが、大学に入るまで外国人と接するは機会はほとんどありませんでした。

中学生・高校生はウイグルのことを知っていましたか?

僕の記憶している限りではウイグルのことをもとから知っていた生徒は一人もいませんでした。先生が事前に「中国人」と説明してしまうことがよくあり、いざ教室へ入ってみると生徒たちはびっくりするんです。「中国人って聞いたけど…?」って。僕たちウイグル人はほとんどの中国人と顔つきが違うし、僕の自己紹介は名前が漢字じゃないですしね。授業では自分の文化のことだけを話します。中国のことはノータッチ。中国の文化を知る機会はたくさんあるでしょう。余談ですが、僕たちウイグル人は現在仙台にたったの6人しかいないんですよ。

生徒たちの反応はどうですか?

手を挙げて質問をしようという生徒がとても少ないですよね。それも学年が上がるほど減る。寂しいです。だから正直に言うと、高校にはあまり行きたくない() まったく興味を示してないんだなと伝わってくるので。「知らないし興味もない」という態度です。逆に小学生はなんでもよろこんで聞いてくれますね。

 


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 ウイグルと中国のこれから

 

そもそもの話なのですが、新疆ウイグル自治区ってどのような地区なのでしょうか?

新疆ウイグル自治区は中国の北西部に位置しています。6000メートル級の山脈が東西に走っていて、北側は自然が豊かで南側は砂漠地帯です。観光地として有名なところなので、普通に観光客が来ますよ。多いのはヨーロッパ人ですが、日本人も結構来ます。あとはロシアやカザフ、ウズベクなどからビジネスで来る人が多いです。ウイグルはシルクロードの通り道で重要な場所ですから。民族的には、イスラム教を信じていてウイグル語と中国語を話します。

─日本と中国の最大の違いは何だと思いますか?

日本は民主主義の国です。例えば今外に出て、「アベノミクスきらい」って叫んでも誰にも咎められませんよね。ただ変な人って目で見られるだけ。でも中国で同じことをやったらすぐに捕まりますよ。日本には言論の自由がある。自分の意見を主張することができる。これはとても貴重なことです。僕たちにはできないことだ。

それから、中国では農民の割合が高いんです。そういう人たちはあまり学校に行けないから文字も読めない、世の中でなにが起きているのか理解できない。学校に行けたとしても中国の教育には多くの問題があるし、海外に出て勉強する人はいますが割合としては少ないです

知識というのは力ですよ。頑張って知識を身に着けて、なにか行動を起こそうという人が増えればなにかが変わるかもしれない。だからまずは自分の勉強を頑張る…そんなかんじですね。

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 日本とビジネスを

 

イリシャットさんはこれから中国に帰ってどうされるんですか?

できれば日本とのビジネスをやってみたいです。自分の地元で、ウルムチでやります。日本語も忘れないようにしなきゃ。狙いどころは、ベビー用品と女性用品ですね。日本のこれらの商品の品質はとても高い。よく買い物をする層はどんな人たちだと思います?女性でしょう。日本はこどもを好きな人が少ないと個人的に感じていますが、私たちは違います。私の地元では子どもをとてもかわいがるので、なんでも買って与えてやりたいと思うんです。まずは日本のものを輸入して、それから民芸品や玉など、日本人にとって珍しい物を輸出したり。ビジネスがうまくできたら、また日本に来ます。

 

 

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「知識は力」。

日本に留学して一から日本語を習得し、
修士号まで取得したイリシャットさんの言葉は強く響く。
私ももっと知識を身に着けて、
言論の自由を持つ日本人としてできることを
考えていきたいと思った。

 

                                                     (文・写真 豊田亜美)