待ち合わせ場所に立っていた彼の足元はピンヒール。

でも、なんの違和感も覚えない。

 

どうして?

その疑問はすぐに解決する。

 

服を想い、魅せる。

彼は服と相思相愛だったのだ。

yamauchi

-No. 272- 関西外国語大学英語キャリア学部2年         
山内勇佑さん    

 

服の気持ちを考える

 

―では、よろしくお願いします。まず、ファッションにおいてこだわっていることを教えてください。
僕、小物にはこだわりがあるんです。安物を持つのは絶対に嫌なんです。

―どうして小物にこだわりがあるのでしょうか。
よく「小物を制する者はおしゃれを制する」と聞きませんか?例えば全体のコーディネートが安物であれば、ハイブランドのバッグを持っていても浮いてしまいますよね。

―確かに。
だからブランドバッグを持つなら靴も安物を履いてはいけないと思うんです。一流のホテルマンはお客様の靴を最初に見るとも言います。だから小物をこだわることは大切なんです。それに、僕にとって靴は一生を共にする「友」でもあるんです。

―なるほど。じゃあ靴も安物は履かないんですね。
そうです。実は僕の父親がアパレル業界で働いているので、服は結構貰えるのですが、中には30年前の靴もあります。

―え!?靴って30年も履けるものなんですか!
しっかり手入れをすれば長年良い状態で履くことが出来ます。僕はよく父親の服を着ますが、世代を超えて着られると、服はきっと喜ぶと思います。だからしっかり手入れをして1シーズンだけ着るなんてもったいないことはしません。

 

―愛情かけて長年使っているんですね。それでは、そんな山内さんが考えるおしゃれな人を教えてください。
難しい質問ですね。でも条件が二つあります。まず一つは、スモーキーカラーが着こなせる人です。

―それはどうしてでしょうか。
スモーキーカラーって着こなすの難しいんですよ。だから着こなせている人を見ると、この人おしゃれなんやなあと思います。

―なるほど。ではあともう一つは?
服を理解して着ている人です。やっぱり着方を知っている人がおしゃれだと思いますよ。たとえ服がおしゃれでも、その人自身がおしゃれでないと意味がないと思いますし。

―なかなかハードルが高いと思いますが、山内さんがおしゃれだなと思う人は周りにいますか?
いますよ。そんなハードル高くないですって(笑)。

―山内さんは周りのおしゃれな人にファッションの相談をすることはありますか?
しますね。自分だけのスタイルを貫こうとは思っていません。

―他人の意見に耳を傾けることは大切ですもんね。
僕の今のファッションがあるのは、自分と他人の世界を混ぜて自分の世界を新しくすることが出来たからだと思うんです。他人があるからこそ自分のしたいことができると思っています。

061

力をくれる洋服たち

 

山内さんがこんなにファッションに対して熱くなったのはいつからなのですか?
実は僕、昔は全然ファッションが好きじゃなかったんですよ。

―えっ。
小中学生くらいの時は何にも気にしない、髪の毛がボサボサのメガネをかけた子でした。でも、中学三年生くらいから気にするようになったんです。

―何かきっかけがあったんですか?
父親がアパレル関係ということもあり、服を貰ったことで服の歴史や知識に興味を持った部分もありますが、服装を気にするようになったら、自分の中で変化があったんです。

―それはどんな変化ですか?
ファッションに気を付けることによって自信を持てるようになりました。まるで服に力をもらっているようで、今では服が自分を変えてくれたとさえ思っています。

 

―なるほど。
それに、外見をよくしないと損をするんです。外見が全てではないと言いますけれど、やっぱり世の中外見なんです。

―外見が全てではないといいますけれど、第一印象は外見から入りますもんね。
もちろん、話してみなければ分からないこともあります。でも、仲良くなりたいと思うのは外見を見てのことですよね。僕はいろんな人から興味を持たれていて、会ってみたかったなんて言われることもあります。

―そうなんですね。
でもそれは僕の外見が前提としてあるんです。だから僕の中身がその人の期待に応えられるのかなんて分からないですし、そういう時に人間は見た目から判断しているんだなと思いますね。

 

―山内さんは常に外見を気にしているのですか?
常にではありません。家にいる時や、休みの時は友達にびっくりされるくらいオフの状態になります。ボッサボサの髪の毛に意味分からんTシャツ着て、中学のときの「山内」って刺繍の入ったジャージを履いています(笑)。

―…それ、すごいギャップですね(笑)。驚きです。何か理由があるのでしょうか?
外出時に自分の見た目が変わっていく過程を見て楽しむんです。そのためにあえて家ではオフでいるんです。

―なるほど。あえて切り替えを作って、だんだんとドレスアップする過程を楽しむんですね。
そうです。最後に家を出る時に鏡で全身を確認して、「よし、行こう」ってなります。

shita

 

ピンヒールに、恋をした

 

 

―それでは、今日一番力を入れてくれたところを教えてください!
ピンヒールを履いてきました!学校にはそんなに履いてきたくないんですけどね。

―実はさっきからずっと気になってました。どうして学校にはあんまり履いてこないんですか?
やっぱりしんどいんで(笑)。7.5cmとか9cmくらいならいいんですけどね。今日は12cmなんです。

―私そんなに高いヒールを履いたことないです!
ヒールを履いてると歩き方も変わりますし、歩いてるときの気分が違います。と言ってもヒール履き始めたのもここ2カ月くらいなんですけどね(笑)。

―2ヶ月!?それで12センチのヒールを履くって…山内さんすごいですよ(笑)。
最初は慣れなかったので歩きにくかったですよ!でも、素敵なブランドの靴なのにブサイクな歩き方をするのは嫌だったので、ネットで検索して綺麗な歩き方をひたすら練習しました。

 

―ものを魅せるために自分を磨くんですね。
ブランドが霞まないように自分自身を綺麗に見せる努力をするんです。ハイブランドのものを持つんやったらそこにも気をつけたいんです。

 ―ぜひ、綺麗な歩き方を伝授してください!
まず、つま先に重心を置いて、つま先とかかとを同時につけることを意識します。歩くときはお腹に力を入れて、できるだけお尻を振る感じで歩くんです。あとは、ヒールの部分が一直線になるように歩くと、綺麗に見えますよ。

 

 ―そもそも山内さんがヒールを履くようになったきっかけって何ですか?
僕は本当にヒールが大好きなのですが、中でもピンヒールは靴の真骨頂だと思っているんです。百貨店のレディースアパレルのセレクトショップでバイトをしているのですが、お店に置いてあるヒールの形がすっごい綺麗なんです。

―なるほど。身近にあるヒールに憧れていたんですね。
そうなんです。それで、挑戦してみようと思い立って、自分の店で購入したショートブーツを履きはじめたのがきっかけです。

 ―でもどうしてピンヒールが靴の真骨頂だと思うんですか?
フォルムが一番美しいと思いませんか?特にスティレットヒールという、先に向かって鋭くとがっているピンヒールは本当に美しいと思うんです。あれを履かないのなら女じゃないと僕は言い切ります!

 ―わああー!そんなこと言われたら履きます!絶対履きます!
履いてください!第一、男の僕が履いているんですから!

 

 

 ゲイでよかった

 

 ―レディースアパレルということは、男性は山内さん一人ということですよね?居づらくありませんか?
お気づきかもしれませんが、僕はゲイなんです。それに、男の人が苦手なので女の人に囲まれている方が生きやすいんです。

 ―それには何かきっかけがあったのでしょうか?
僕は生まれた時から自分がゲイだということに気付いていました。潜在的に絶対自分はゲイだなと思っていたんです。

 

 ―気になることを聞いてもいいですか?ゲイの方と女性の方って内面的にどう違うのでしょうか?
簡単には言えることではないと思います。ゲイの人は何割かは女性の気持ちを持っていますが、人によってその割合は変わるので、男らしい人も女らしい人もいます。ただ共通することは、「男として男が好き」ということです。

 ―では恋愛対象は同じくゲイの方なんでしょうか?
僕はそうですね。でも、ストレートの男性が好きな方もいらっしゃいます。

 

 ―ゲイをカミングアウトしたり、ゲイであることで息苦しかったり、辛いことは何かありますか。
僕の場合は見て分かるので、一々カミングアウトする必要がなくて楽ですね。息苦しさは感じないと言ったら嘘になりますが、僕は気にしていません。自分のしたい恰好や喋り方をして、男性が好きだって公言して、女っぽい仕草だって普通にします。

 ―でももっと周囲に自分のことを理解して欲しいと思いますか?
そうですね。今の時代、異文化理解だ国際理解だと言われていますが、まず隣の人を理解してから世界についての理解を深めていくのが筋なんじゃないの?とは思いますね。

 ―ご家族にはカミングアウト済みなんですよね?
そうです。今、爪を赤く塗っているのですが、これは姉がしてくれました。

 ―お姉さんと仲がいいんですね。
僕にとって姉は親友です。もし僕がゲイじゃなかったら普通の姉弟だったと思います。ゲイだからこそこんなに仲良くなれたんだと思います。だから僕はゲイでよかったなと思っています。 

062

大好きなファッションとのこれから

 

―山内さんはこれから留学するそうですが、留学先はファッション関係ですか?
はい、ファッションの中心地であるフランスに行って貿易学を学びたいんです。

―え、貿易学ですか?
僕はバイヤーに興味があるんです。でも、ファッションのことは業界に入ってから勉強しないといけない状況になると思うんですね。だったらそれまでにもっと基礎を極めていくべきだと思っているんです。

 

―なるほど。そういう考えがあったのですね。それでは最後に何か服に関して皆さんにお伝えしたいことはありますか?
服の歴史をもっと知ってもらいたいです。ブランドやその服自体にも様々な歴史がありますし、トレンドからはその時代の情勢を知る手がかりにもなります。なので、今自分が着ている服のことをもっと知ってもらいたいと思いますね。

 

 

 

「服は人物像を映し出す鏡なんです。

クローゼットを見れば、その人の性格も、歴史も、

ターニングポイントだって分かってしまうんです。」

 

 そう教えてくれた山内さん。

あなたは自分を映し出す鏡を大切にしていますか?

 【文・写真 市川陽菜】