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大学生とは、カフェを好きになる生き物なのだろうか。
 
おしゃれなカフェ、おいしいカフェ、変わったカフェ……
誰かが工夫をこらしたその空間に、いつの間にか酔いしれる。
 
”これからのカフェ”
 
そのカフェという空間に新しい哲学を生み出そうとする
ひとりの大学生に迫った。
 
 
石躍凌摩
大阪府生まれ。joshu A tree(ジョシュアツリー)代表として、カフェのプロデュースを手がける。コピーライターとして他団体に関わる経験を活かし、カフェのコンセプターとしても能力を発揮。出会いやハプニングを大事にした『これから』を作り出すカフェを目指し、想いを持った若者達で日々奔走している。ただ、お店は……?
 
 

カフェって、誰にとってもハードルが低い存在なんです

コミュニケーションが生まれる、プチ社会?
 
 
 
学生の彼がカフェを開こうと思った理由
それは、自身のコンプレックスだったという。
 
 
「僕自身、一つのことが続かなくて、ずっと口だけの人生を歩んできたんです。やってきたスポーツを見ても、サッカーとバスケを同時並行でやっていたり(笑)、いろんなことをフラットにやってきたんです。
 
そんな自分がコンプレックスで、何かひとつのコトをやり続けたり、そこで結果を残す人がかっこ良くてずっと羨ましいと思っていました。
 
やけどある時から『これが自分の生き方や!』と開き直ったんですよね(笑)。そうして新しい何かを探していた時に、”コモンカフェ”という本に出会ったんです。」
 
 
コモンカフェとは、大阪にあるちょっと変わったカフェ。
普段は会社員の人々が日替わりで運営しているそうだ。
 
 
「ここは食べ物を提供したり、劇をしたり、ライブやったり、すごく自由な空間なんです。この本を読んだことで『カフェって受け皿が広くて、できることの幅がすごい広いな!』と気づいたんですよね。
 
そして『僕はいろんなことをフラットにやりたくなるけど、カフェをやれば、何でもできるんちゃうか?』と直感的に思いました。
 
人がいて、何かを飲んだり食べたりして、しゃべる。これだけでカフェは成立する、あとはカフェというハコに何を詰め込んだっていい。それが大げさに言ったら『プチ社会みたいだな』と感じたんですよね。」
 
 
仮にも、彼は学生だ。
そこに迷いは無かったのだろうか?
 
 
「自分ができる確信はなかったですが、好きをつなぐことは逆に向いていると思ったんですよね。やから『とりあえずやっちゃおう!』と、本当にノリで始めました。
 
こんなアッサリした理由なんで、結構ガッカリされるんですよ(笑)。『アツい想いあったんじゃないの?』と言われますが、最初からそんなもんあるわけがないんですよ。今はもちろん、ありったけの想いを持って取り組んでます。
 
この経験から、何もしないで悩むよりも『とりあえず何かやる』ってすごく大事やと思いましたね。何もない中でノリで始めてみたら、カフェを切り口にコトがどんどん広がっていったんです。」
 
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お客さんもスタッフも、『好き』をカタチにできるカフェ。

たくさんの想いを、空間に乗せていく。
 
 
 
淡々と語る石躍くん。
紆余曲折がありながらも、集まった個性的なメンバーたち。
 
 
「3月くらいから動き出して、現在では14人のメンバーが集まりました。メンバーにはデザインをやりたい子だったり、東北の食材を通じて東北のことを伝えたい子もいたり、想いも持っていてすごく個性豊かなんですよね。」
 
 
 
どうやら、ハチミツをこよなく愛する女の子が居るらしい。
 
 
「このハチミツの人は、『バーテンダーで独立したい!おっちゃんにお酒を広めたいんや!』という想いもあるんです。そこでハチミツがお酒にすごく合うことと、二日酔いを抑える効果があることを掛け合わせて、ドリンクを提供しようと思っています。
 
しかも養蜂界のお偉いさんと繋がっているので(笑)、青空レストランのように養蜂家を訪れて採れたてのハチミツを食べたりなんて、そんなイベントも起こしていきたいと思います」
 
 
話を聞けば聞くほど、 なんだか普通のカフェとは違うにおいがする。
 
 
「こういった『好き』を持ち寄ったイベントだったりを提供するコトって”お客さんにもできるコト”でありたいんですよね。
 
joshuという空間はお客さんもスタッフも無くて、『ただ場があって、人がいて、あとはお好きにどうぞ』というスタンスなんです。『何かを提供する』というより『これ作るから一緒にやろっ』という態度で、組織として核の部分は持ちながらも、自由度は高くありたいですね。
 
興味がある人をどんどん巻き込めるようにオープンな作り方で、お客さんやメンバーなど関係なく、ずいずい進めていこうと思ってます。」
 
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変態を共有したいんです。

自分ごとを、みんなごとに。
 
 
自分の『好き』なモノの話になると、誰もが興奮するものだ。
彼はソレを『変態』だという。
 
 
「自分が変態だと思う時ってありませんか?(笑)
 
僕、余白がすごく好きなんです。一時期はほんといきすぎてて、見える風景全てに余白を感じてたくらいでした(笑)。自分でも変態やなぁと思っていたんですけど、ある時『余白が好き』という想いを共感してくれる人が現れて、その時にめちゃくちゃ幸せやったんです。」
 
 
人間は表層よりも、奥深いところが面白い。
 
 
「誰にとっても、”自分ごと”が”みんなごと”になるって幸せなコトやと思うんです。
 
喋るの苦手で、だから知らないだけで、でも、実は面白い人っていますよね?僕も口で伝えるのが苦手ですし、そんな人でも思わず態度が変わる。そんな場所であればいいなって思っています。
 
だから心理学的な面からもインテリアの配置とか考えてます。ふらっと入って、ぽろっと言っちゃうような空間を作りたいです。イメージとしてそこはぶれないですね。」
 
 
なんだか『広告みたいな考え方だ』と思っていたら
やはり彼は、すごく言葉を大事にしているようだった。
 
 
 
「ある哲学書を読んだ時に、『言葉が先か、存在が先か』という考え方に出会って、感動したんです。例えば、イヌという生物がいてイヌと名付けるのか、イヌという言葉があってその生物がイヌと呼ばれるのかという感じで。僕は後者のように言葉から始めるってコトをしたいと思ったんです。
 
それからコンセプトを書いていくなかで、インプットとアウトプットの両輪回していきながら、言葉ってのをより意識するようになりました。言葉からモノだったり空間が生まれていくんやなぁと、より強く思うようになりましたね。」
 
 
joshu A treeという名前も、コンセプトに沿っていると言う。
 
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「これは、アメリカの乾燥地帯に生えてるなんか気持ち悪い木の名前からきています(笑)。
 
というのも、乾燥地帯は栄養も水も無いので、ジョシュアツリーは地面の下で根っこがつながってるんです。栄養をお互いで分け合い、支え合って生きてる植物で、その姿が、作りたいカフェのイメージにぴったりだったんですよ。
 
日本のカフェでは隣の人と話すことがないですし、それが勿体ないと思うんですよ。やから、ふらっと入って会話できてしまう、そうやって繋がれる空間が作りたいなって意味を込めました。」
 
 
 
メンバーとのロゴ作りにも、その想いは込められていた。
 
 
「空間をイメージしながら、言葉を紡ぎながら作っていったんです。そしたら前から持っていたイメージがよりしっくりと落とし込めて、それで生まれたのが『パズル』だったんです。
 
パズルのロゴってありきたりなんですが、『最後のここはあなたが埋めて』という意味ではなく、『最初の1つ目のピースは僕らが置くから、一緒に新しい絵を作っていこうよ』というメッセージなんです。それにパズルってフレームがあるものですけど、今はその限界を見たくないから、あえて描いてません。枠のないパズルだからこそ、どうくっついてもらっても良いよってスタンスが表現できたと思います。
 
『こんなにロゴを大事にしているカフェないやろな!』て半分笑いながら作ってましたね(笑)。」
 
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彼には何か、使命感があるのだろうか?
 
 
「僕は『自分がやらなきゃいけないことってないんやな。』と思ってます。もし自分が死んだとして、周りの人は悲しんでくれるやろうけど、まぁ生きていくし、世界は回っていくんです。
 
だから何がなくとも回る世界で、カフェをやる意味なんて無いんです。日本にカフェなんてごまんとありますし。やけど、そんななかでもわざわざカフェやるんやから、ふり返ってみて、”あぁ良かった”って、誰かの心の中に残ってれば嬉しいなぁなんて欲張ってみたりもしてます。
 
ゆるくゆるく、自分本位で始めたことでも、他人に影響を与えているわけで、『こんな自分がコミュニティを作ったらどうなっていくんやろ』と今は楽しみです。イメージはぐっと固まってきたので、あとは、場所だけですね(笑)。」
 
 
 

地域をもっと楽しくする、ナカツーリズム。

お店は、まだない。
 
 
個性的な想いに満ちたメンバーも集まり、コンセプトも出来上がる中で
まさかの、お店の場所が決まっていないという。
 
 
「12月にオープン予定なのですが、空き家はめっちゃあるのに借りれないんですよ(笑)。
 
やから最近は、僕たちが今カフェ物件を探している、大阪の中津というまちで『ナカツーリズム』と名付けた探索をしているんです。その中でお店さんと仲良くなったり、住民の方と接したりしていますね。
 
「僕たち若者でカフェをやるんですよ!」と言っては、頑張っていることを伝えて絆を深めようと思っています。」
 
 
joshu A treeが、中津を選んだ理由とは?
 
 
「中津は『これからの町』のニオイがするんです。可能性しかないなって、そんな直感があって。
 
都市部の梅田からすぐ近くなのに、高架下をくぐると一瞬で静かになる町なんです。でも中津独特のおもしろい店もあって。だから僕らも町に寄り添いつつ、新しい風を入れてって、カフェ、引いてはまちを作っていきたいですね。
 
今狙っているのが中津商店街なので、joshuに関わる人たちや中津の人と、まちを遊びたいなと思ってます。」
 
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場所にゴールも終わりもない。
ゴールや終わりはjoshu A treeにあつまる
ひとりひとりが持つだろうから。
 
今ここを楽しみながらも、これからを向いて
絶えず変わりつづける。
(joshu A tree文章より)
 
 
お客さんもスタッフも関係ない
みんなで育むカフェ、なんて新しい。
 
どんな笑顔で溢れるのだろう どんな”これから”が生まれるのだろう。
オープンが、とても待ち遠しいのです。
 
 
Facebook :Ryoma Ishiyaku
Twitter:@rm1489
 
『joshu A tree』Facebook→ https://www.facebook.com/joshuatreecafe
 
【文・写真:三宅瑶