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知っていますか?

あなたの着ているその服に
何リットルの水が使われるのでしょうか

あなたの食べているそのチョコレートに
何人の命がかかっているのでしょうか

 

だから伝えたい、知ってほしい
あなたの生活に選択肢を。 

あなたの心をやさしく動かしたい

社会貢献に、広告の力を。

 

 

伊藤望
静岡県出身。ボランティアへの違和感を感じ、高校時代にソーシャルビジネスに関心を持ち始める。大学進学後は国際協力のサークルに入部し、その後は『FTSN』というフェアトレード活動に関わる全国の学生を中心としたネットワークで、全国代表も務めた。しかしそれらの活動の中で現実と理想のズレを感じ、広告のコミュニケーションの力によってフェアトレードの問題を解決していきたいと考えるようになる。 

※フェアトレードとは
バナナやカカオの農場など、南の疎外された生産者や労働者の人々の権利を保障し、彼らにより交易条件を提供することによって、公正な国際貿易の実現を目指す貿易パートナーシップのことを言う。そして消費者の支持のもとに、生産者への支援や人々の意識の向上、従来からの国際貿易ルールや慣行を変革するキャンペーンを積極的に推し進める団体がフェアトレード団体である。

 

 

『ボランティアなんて効率的じゃない!』

苦手意識から、変えたい責任感へ。

 

「僕が国際協力の分野に興味を持ったのは、懐疑的な入りだったんです。『ボランティアなんて効率的じゃない!』と思う嫌なタイプだったんですよ(笑)。

やから『フェアトレードってどうなん?』という気持ちだったんです。」

 

高校生の時に、ソーシャルビジネスの代表例”グラミン銀行”について知り
『社会貢献×ビジネス』のカタチに感動したそうだ。

 

「そこで『社会貢献の新しい取り組みについて知りたい』と思ったんですよね。

やから大学生活でもそういったことに関わりたいと思い、国際協力の中でも特にフェアトレードに力を入れるサークルに入りました。

その後にフェアトレードに関わる学生のネットワーク”FTSN”の全国代表を引き受けた、という流れですね。」

 

そうして1年生の終わりにフィリピンを訪れ
その経験がターニングポイントになったという。

 

「スラムや農村に泊まったのですが、床が抜けていたり、窓がなかったりしても、案外楽しい生活を送れたんです

行くまでは『フィリピンの人はお金がなくて、どんよりして、辛い生活なんだろうな……』なんてイメージでだったのですが、実際は”豊かではないけれど楽しそう”だったんですよ。

そうして『お金がないから不幸だ』なんて向こうの人たちは感じてもいないのに、『もしかして自分たちは価値観の強要をしていたんではないのか?』という小さなズレを感じたんですよね。」

 

お金がないから不幸だ、誰もが思ってしまいがちなことに気づいた彼。
その苦悩のあとにも、避けられない現実があった。

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押し付けるのではなくて、『選ばれるモノになる社会』へ。

難しいのは分かってる、だからこっちを見てほしい。

 

「違和感を持ちつつも活動をしていて、『日本人と慈善事業というものが馴染みにくいんだ』と気づいてしまったんです。

ヨーロッパ地方で慈善事業が盛んなのは、植民地支配に対しての贖罪という理由もありますが、日本は島国独特のムラ意識があると思うんですよね。やから『外のモノは知らない』コミュニティ社会なんですよ。

フェアトレードのためには、仕組みやマインド、文化すら変えなければできないんですよね。
東日本大震災があった頃に「日本が大変な時に、どうして海外のことをやってんの?』と言われることもありましたし、だからこそ日本人とフェアトレードが結びつきにくいとは感じました。」

 

そこまでしてでも、日本にフェアトレードが必要なのだろうか?

 

「フェアトレードが絶対に良いとは断言できませんし、いつかきっと問題も生まれるとは思います。

やけど、僕の考える”フェアトレードの理想的な状態”は、誰もが慈善的なエシカル(※)のことにも目も向けて、賛成も批判もしてくれる状態なんですよ。

フェアトレードが100%ではいけないですし、エシカルやオーガニックが良いと押し付けるのではなくて、『選ばれるものになる社会』がベターだと思っています。」

※エシカル…環境保全や社会貢献といった倫理的活動のこと

 

悩んできた、考えてきた。
そうして見えた、フェアトレードの可能性。

 

「僕は『事実をいかに抵抗のないカタチにして、インパクトを残すかが重要なんや!』と感じたんです。

そこから広告の世界に入り込んでいったんですよね。電車広告などの意味ではなく、”コミュニケーション”という意味で、広告プロモーションに興味を持ったんです。」

 

フェアトレードは、コミュニケーションの問題を抱えている業界なんです。

僕に出来ることは、社会広研。

 

どうしてまた、突然”広告”に興味を持ったのだろうか?

 

「もともとはサークルで取り扱う、商品のドライマンゴーのデザインを新しくしようとして、デザインに関する本を読む機会が増えたんですよね。

その中でデザインが感性的なものではなく理論で作られているとを知ったり、”デザイン”自体に興味を持つようになったんです。」

 

フェアトレードのことを考えつつ、デザインに興味を持っていた2年生の夏、
彼は神戸大学の広告研究会に出会ったそうだ。

 

「広告研究会に入部して、それまで関心のあったデザインそのものから、『コミュニケーションとしての広告』というカタチで腑に落ちたんです。

というのもフェアトレードは、全体的にコミュニケーションの問題をかかえている業界なんですよ。『その全てを解決する手助けになるのが、広告なのではないのかな?』と直感的に思ったんですよね。」

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彼の直感は、広告を学んで確信に変わった。

 

「フェアトレードのように社会にいいはずなことが根付かないのは、その人にとっての”自分ごと”にできていないからなんですよ。広告には”人の心を変える”という事例が沢山生まれているからこそ、広告的な視点でアプローチしたいんですよね。

人を動かさなければ、人の心がついてこなければ、仕組みだけを変えても意味がないんですよ。

フェアトレードが目指す構造を変えるという大きなものより、人の心の動きやったり、気持ちの部分にアプローチしていきたいんです。フェアトレードという業界に広告の分野から切り込みたい、貢献していきたいと思ったんですよね。」

 

広告の専門性を武器として、フェアトレードに関わっていくことを決心した。
そんな彼が伝えたい、世界の真実。

 

「今着ている服って、1枚のTシャツに2700リットルもの水が使われているんですよ?作る段階で綿花の栽培に使われ、染める段階に使われ、めちゃくちゃ水を使うんです。

世界ではは30キロの服を廃棄し、服の染色が排水汚染において20%を占める原因であり、一方で世界では水不足に陥って水を飲めない人もいるわけです。
肉を食べるにも、その動物の飼育には大量の水が使われていて、だから食べちゃダメというわけではなくて、それを知ったうえで選んでほしいんです。

そういうことを知っているのと知らないのとでは、生活に対する姿勢も変わると思いませんか?」

 

事実を知ったうえで買うのは個人のチョイス、知らない状態で消費しているのは良くないと語る。
だから『伝える手段として広告の力が必要なのだ』と。

  

フェアトレードって、先が見えないんですよ。

ゴールがない、答えがない。鮮やかな”答え”を創っていく。

 

広告は、とにかく考える仕事だ。
彼はもともと考えることが好きだったのだろうか?

 

「僕は高校が理数学科で、入試問題を1年生から解かされたり、鬼のように数学をやってきました。その中で『自分は苦手ながらも頭を悩ませて考える時間が好きなんや!』と気づいたんですよね。
そして数学って、答えを知ったときがすごく鮮やかで、それがすごく美しいと感じたんです。

広告のプロモーションも同じなんですよ。ブランドや社会の問題を、頭を悩ませてクリエイティブに乗せて、鮮やかに解決するのがカッコいいんです。」

 

その原体験と、フェアトレードにも共通する想いがあるという。

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「フェアトレードもすごく難しい問題で、答えがあるものではありませんからね。というのも制限がすごく多いんですよ。

課題と手段が設定されている状態で、道徳的にどうなのかも踏まえて解決策を考えたり、さらに現地の人の気持ちを考えることは本当に大変なんですよね。
フェアトレードの成功事例も少なく、そういったもどかしさを感じるからこそ逆に燃えるのかもしれません。

それにフェアトレードは、貿易で生じる不均衡などを改善しようというものなので、社会構造を変えようとしているんです。これはなかなか終わりが見えませんよね。」

 

社会の仕組みを良くするものの、
『全てがフェアトレードになるのは良くない』と彼は語る。

 

「例えば、途上国でバナナを作る人たちと、日本で食べる僕たちの間の卸売りを無くしたら、それまでに貿易の途中で生まれていた仲介のためのお金は省けますよね。そうすれば生産者に直接お金が行くということもありますが、一方では今まで中間で稼いでいた人々が職を失うことになるんです。

フェアトレードは社会正義という意味で語られがちですが、仕組みが先行してしまって中の人を考えられていないこともあるんです。

『生産者に対して利益を上げようよ』という話だったのに、システム重視になってしまいがちで、ちゃんと生産者の気持ちになれていない現状ではありますよね。」

  

組織を変えるのは、『アウトサイダー』なんです。

たくさんの視点で解決する、だからもっと知りたいんだ。

 

たくさん悩み、考え抜いてきた彼だからこそ
今の選択は後悔していないようだ。

 

「フェアトレードも広告も、全く違う興味を持ったのに、今となっては繋がっているんですよね。自分が無意識な時は、感性のエンジンがかかっているのかもしれません。

ただ、どうして自分がエシカルに関わり続けようとしているのか答えが出ているわけでもないんです。だけど『誰かがそのモノをつくっている過程で辛かったり、死んでしまっているモノを買って嬉しいの?』という疑問は強くありますよね。

これはフェアトレードというものを、エシカルというものを知ってしまったからこその責任ですし、後戻りするつもりもありません。」

 

一生をかけて関わっていく、そう覚悟を決めた彼は
これからのビジョンをどう描いているのだろうか。

 

「これからは一年間をかけて、社会系の広告会社でインターンしたいなと思っています。

たくさんの学びを受けて活かして、僕はTRUTHとIMPACTのあること、誰かを無意識から『ハッ』とさせることをしたいです。いいアイデアは鳥肌が立ちますし、”自分ごと”にできることをアプローチしていきたいですよね。

僕は人生をかけて関わっていく覚悟がありますし、ずっとやっていくと思いますよ。今は『課題過多時代』だからこそ、自分から挑んでいきたいですね。」

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「僕、かっこいい言葉とか言えないんです。
だって、無責任なことは言いたくないですから。」
 

優しい笑顔で話す望くんには
強く逞しい、覚悟が感じられた。

 

日本は確かに、平和な国かもしれない。
だけどそれは知らないだけ、見ていないだけ。 

もう他人事なんかじゃないんだ。

 

フェアトレードを、社会貢献を

あなたにとっての自分ごとに。

 

 

Facebook:伊藤望(Nozomi Ito)
Twitter:nzmt_i2o3 

『FTSN』HP→http://www.ftsnjapan.com/

 

【文・写真:三宅瑶