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まず驚かされたのはなんといっても彼の経歴だ。

彼は映像クリエイターとして数々のコンテストで賞をとり、また若者から高齢者を対象に映像制作を行う活動を行っている。

しかし、そんな彼は自分に対して謙遜し、

僕には夢がないんですと語る。

彼が口にする「自分なんて何者でもない」と語るその背景には何があるのか。

また、夢がないのに映像を創るその理由とは一体なんであろうか。

 

 

初鹿 敏也(はつしか としや)

慶應義塾大学総合政策学部3年

 

映像クリエイター・水墨画アーティストとして活動していて、テレビ番組、広告代理店でインターンを行い、最近では東京オリンピック招致CM、衆議院選挙CM等の制作も行ってきた。数々の映像コンテストで賞を受賞している。

 

受賞歴–

 

総務省yahooネット選挙映像コンペティション 総務大臣賞
ACC賞 学生部門 特別奨励賞受賞
TCC presents C-1 GRAND PRIX Finalist
映像クリエイター登竜門 ひかりTV大賞 学生部門
MADE IN OSAKA CM AWARD 最優秀
MADE IN OSAKA CM AWARD 優秀賞
第22回大学生広告制作講座 TOYOTA賞受賞
東京都北区 CM AWARD 優秀賞  他

 

 

人の喜ぶ姿が見たい。考えるのは常に相手。

 

 

最近取り組んでいることや夢中になっているものってありますか?やはり映像に関することでしょうか?

 

——僕はずっと昔からやりたいことがあんまりないんですよね。僕は何をやってもいい。人が喜ぶことに関すれば何をしてもいいんです。

 

 

その答えは意外ですね。そう感じる理由を聴いてもいいでしょうか?

 

——僕は子供の頃に褒められるという経験をしたことがないんですよね。褒められるということにすごく敏感なんです。褒められたらすごく嬉しいんです。

 

 

なるほど。映像を昔からやっていたそうですが、その経緯を教えてもらえますか?

 

——映像に関していえば中学3年生の頃からずっとやっています。それもきっかけは中学3年生のころにクラスでスライドショーを作るという話になって、誰が作るんだとなって、そういうときってだいたい絵を描いている人が頼まれるんですよね。僕は、部活は書道・水墨画といった芸術系のものを続けてきていたので。結果、僕が頼まれたので作ることになりました。それが喜んでくれる人を想像しながら作るのがのがすごく楽しくて。作ったら先生も生徒も喜んでくれました。

 

 

人の喜ぶ姿を想像しながら作る、ですか。

 

——そうですね。映像を作って受賞するときも審査員に対してどういう映像を作ったら喜ぶかなというのを想像しながら作るんです。例えば審査員に中川翔子さんがいるとなったらアニメーションが好きなのかなと想像しながら作るんですよね。

 

 

そこまで考えるんですね!奥が深いです(笑)。では、自分が好きなものを作るというより相手に合わせて作る、自分より相手の立場を優先させるということでしょうか?

 

——僕は子供の頃に本当は自己表現をしたかったんです。自分がやりたいと思うことをやりたかった。親が書道家なのですが、自分はあまりほめられなかった。お前の書いた字は全然うまくないとか、蛇の這ったような字だとか言われていました(笑)。そうなってくると、僕は自分の表現ではなく、どうすれば母親が喜んでくれるかということを考えるようになったんです。母親が書道家だから書道で勝負するのではなく、水墨画だったら喜ぶかなと思って。水墨画をやりたいと思ってやったわけではなく、母親が喜ぶかなと思って水墨画を始めたんです。だから自分のことを表現したいというよりかはその人がどの表現で喜ぶかなということを考えるのが好きです。

 

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求められるから作る。頼まれないと無理なんです。

 

 

相手重視という考え方の中で、自分が映像を作るということで、満たされることってなかったんでしょうか?やはり相手重視なんでしょうか?

 

——人から求められたり、頼られていると感じたらすごく嬉しいですよね。映像を作っているときもコピーを書いているときも絵を描いているときも基本的に同じスタンスで、これをやっていると今自分は求められているなと思います。だから自分から映像を作りますって言ったことはないんですよね。頼まれないとやっぱり無理で。

 

 

映像や絵を描く以外の他の能力、もし例えば音楽ができるという場合でも気持ちは同じでしたかね?

 

——絶対にそうですね。映像以外でも人に喜ばれることが自分にとって一番軸になっていると思うので。映像以外でもなんでも良かったと思います。

 

 

映像を作っていて面白いと思ったことはないんでしょうか?

 

——映像を作るということに面白いと思ったことはないですね。どちらかというと不安を感じています。映像を作るというときに学園祭やどこかの学生団体から頼まれることがあるんですが、自分が作った映像で盛り上がらなかったらどうしようとか今までイベントを頑張ってきた方たちなどに対して、僕の映像でその頑張りを台無しにしたらどうしようとすごく不安で。そこに自分の表現はいらないんです。その人たちが客観的に見ても喜んでもらえるものを作りたいですね。作っているとどうしても自分の“我”が入ってしまうからできるだけ入れないようにして喜んでもらえるものを作りたいです。

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信頼を得るために賞をとるんです。

 

 

学生団体をやっていたと思うんですが、Uithを立ち上げようと思ったきっかけ、想いってありますか?

(学生団体Uith…「つくりたいと思っても、つくれなかった人のために」を掲げて、他の大学の学生団体と連携して映像や、グラフィック制作を行っている。)

 

——映像は大学に入ってからも作ることが多くて、でもこれって他の大学はどうしているんだろうかと思うようになりました。他の大学では映像機材や編集ソフトなどないだろうなと思っていて。この大学だけでいいのかと思ったことが始まりです。ミスコンの映像を作りたいけど写真しかとれないとかPVも本当は作りたいという声をけっこういろんな場所で聞いていたので需要はありました。コンセプトは「必要としてくれる人のために」。昨年の今頃立ち上げましたね。今も続けています。

 

 

初鹿さんの想いがコンセプトに込められていますね。TOKYO DESIGN COMPANYについてお聞きしたいです。

(TOKYO DESIGN COMPANY…「これまでデザインされなかった場所を、デザインする」をコンセプトに、市町村や商店街、NPOと連携して活動を行っている。)

 

——これは僕含め4人で立ち上げました。活動の対象はおじいちゃん、おばあちゃんが多いですね。おじいちゃんやおばあちゃんって本当はパソコンとかいじりたいとか思っているんですよね、きっと。例えば、僕のおばあちゃんはFacebookの本を買っていたりしましたから(笑)。商店街のおばあちゃんがポスターを作りたいと思っていても予算がなくて作れなかったりするので、少しでも喜んでほしいと思う気持ちから作ったりしますね。まだ立ち上げて1年経っていないです。

 

 

■UithとTOKYO DESIGN COMPANYの違いってなんでしょうか?

 

——根本的にはどちらも同じですが、Uithは学生対象、TOKYO DESIGN COMPANYはおじいちゃん、おばあちゃん中心にやっているといったところですね。学生団体ってなめられるんですよね(笑)。おじいちゃん、おばあちゃんが頼みやすいようにTOKYO DESIGN COMPANYのほうは作りました。Uithのほうは、映像を作りたいという人が多い。それに対して、TOKYO DESIGN COMPANYのほうはこれまで映像を作ってきたメンバーが揃っているので、作りたいという欲よりかはどういう風に作るのかというところに興味があって。ただ良いものを作ればいいというわけではなくて頼んでくれた人が喜んでくれるかというところを考えながら作ります。必要となれば個人個人で連携しますね。

 

 

活発に動いていますね。

 

——基本的に僕は個人で仕事を受けることが多くて。映像って不確かなものと感じていて、映像を作れるっていう指標があまりなく不安に感じていました。実績や受賞歴があると安心して頼んでくれるんですよね。コンテストに作品を出す理由もそれです。

 

 

美大や芸大ではなく慶應のSFC(湘南藤沢キャンパスの略)を選んだということはどこかに魅力を感じたのでしょうか?

 

——SFCは作ることもそうだけど、作って人に伝えられるまでを勉強できると思いました。世の中にすごいものを作る人はたくさんいるけど、その中で伝えられる人って少ないなと思いました。作るとなったらちゃんと人に伝えないといけないですよね。いろんな人に対して自分の作ったものを伝えられたら、自分はもっといいものを作れるんじゃないかと思いますね。

 

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僕には夢がない。けれど人のために動く。

 

 

慶應生や他の大学生にどうなってほしいという想いとかありますか?

 

——それを毎回聞かれるんですが、難しいんですよね(笑)。でも、いろんな人に会ってほしいですね。僕が頑張っていたときっていつだろうと考えたときにいろんな人に会って力の差を見せつけられたときなんです。自分が興味あるところで、自分が良いと思った世界に飛び込んでみることですね。

 

 

「自分なんて何者でもない」という言葉をいろんな媒体で見かけたのですが、その言葉に込められた想いを聴かせてください。

 

——僕、つねに不安なんですよ。自信がないんです自分に。だから賞もとるし実績も積むんです。人からどう見られているかということをすごく気にするんですよね。ときどき自分がすごいなと思ってしまうこともあるから「自分なんて何者でもない」と言うのだと思います。自分から作ることはしないし、頼んでくれる人がいるからこそ僕は作るんです。周りの人のおかげですね。

 

 

今後の目標、メッセージがあれば聴かせてください。

 

——難しいんですが、みんなきっと頑張っていると思います。躊躇している人もいると思うのですが、その人にもきっと理由があると思います。その人たちに僕は「頑張れ」なんて言えません。頑張れない理由もあるだろうから。自分も「なんで描けないの」など言われることも多くそのときは描けない理由もあったし。自分だったらどう思うか、相手のことを考えてほしいですね。

目標はわかっているとは思いますが、僕には夢がないから目標がないんです。

 

 

夢を持ちたいと思いますか?自己表現をしたかったとおっしゃっていたので最後に聴いてみました。

 

——夢を持つことに対して羨ましく思うこともあります。けれど、それで夢を持ちたいとは思わないです。これからもありのままの自分でいたいですね。

 

 

(編集後記)

いかがでしたでしょうか。これだけの実績を重ねている彼がインタビュー中も謙遜をし続け、自分よりも相手の立場を考え、相手を大事にしたいという想いが伝わってきました。インタビュー後、自分のことに興味がないから筆者の話を聴きたいとおっしゃってくれました(笑)。初鹿さんの人のためにという想いは、筆者も同じく親や先生を喜ばせたくて勉強を頑張っていた時期がありました。人のために頑張るということってすごく素敵なことですよね。取材日は台風の予報が出ていましたが、話を聴きたいという想いが台風を吹き飛ばしてくれたように思います。初鹿さんのこれからの更なる成長に期待しています!頑張ってください!

 

現在、初鹿さんの作品が国際CMコンテストで1015作品中の51作品に残っています。-10/21(月) 15:00までweb投票期間-

『GATSBYとともに』

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【文・写真・インタビュアー…木村 優志

 

 

Facebook…初鹿 敏也

 

学生団体Uith…https://www.facebook.com/Uith.sfc?fref=ts

TOKYO DESIGN COMPANY…http://tokyo-design-company.com