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 社会保険労務士

「簡単に言うとね……会社が人を雇うといろんな業務や問題が発生するの。社会保険の手続きやお給料の計算、そういう『人を雇うことによって発生する業務』をすることが私たち社労士の仕事。もちろん書類仕事や法律にかかわる仕事もあるけれど、本当に私たち社労士が力になれることは社長さんの不安を取り除くことや、トラブルが起きた時に対応してあげることだと思う。」

 

社会保険労務士、略して『社労士』の仕事をこのように語ってくれた礒田さん。私はウィキペディアに書いてあった『労働関連法令や社会保障法令に基づく書類等の作成代行等を行い、(中略)労務管理や社会保険に関する相談・指導を行うことを職業とする為の資格、およびそれを職業とするもの。』という文面との違いに驚きを隠せなかった。もっとワカリニクイ仕事ではないのか?もっとカタクルシイ業務ではないのか?頭にたくさんの『?』が浮かんでいる私に礒田さんは優しい口調で語ってくれた。

 

社会保険労務士 礒田翼

 

社労士という仕事

 

何故『社労士』になろうと考えたのですか?
 

私の理由はちょっと変わってるんだけど……私、もともとは生命保険の外交をしたり、男性物のスーツ販売をしたり全然違う仕事に就いていたんだけど、父が定年退職をして、自営業で古本屋さんを始めたの。その時父に「手伝ってほしい。」って言われて仕事を辞めて手伝うことになったのね。でも5年経った28歳の時に「このまま古本屋で終わるのかな。」って考えたの。そしたら「私がやりたいことは本屋じゃない!」と思って……で、転職を考えた時に歳も歳だったし、学歴がいいわけでも経験があるわけでもなかったから資格を取ることにしたの。それが最初のきっかけかな。

 最初に取った資格は『行政書士』で、たとえば飲食店を始めるときにいろいろ提出しなきゃいけない書類を作成できるのがこの資格なの。別に行政書士になりたかったわけじゃなくてね、この資格を取れば開業できるって聞いたから取ったの。でも行政書士だけでは生きていけないからステップアップして『社会保険労務士』の資格も取ることにしたのよ。「人を雇うことはこの先消えないだろう」と考えたら、「じゃあ社労士の仕事も消えないかな?」と思ったのがこの資格を取った理由。

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おもしろい考え方ですね!たしかに『雇う、雇われる』という関係は消えることがないように思います。
では、社労士の仕事の中でなにか印象的なエピソードはありますか?

 社労士の仕事は『雇う』ことに対して絡んでくるいろんな手続きやトラブルに対応するからお客さんの業種は問わないの。その中で一番印象的だったのはオカマバーの経営者!もちろん経営者もオカマちゃんで雇われる人もオカマちゃんなの(笑)。私たちからすると容姿はたしかに違和感があるけど、経営者として抱いている悩みは同じで、働いている人たちのことを一生懸命に考えている。この仕事じゃなかったらわからなかったことかもしれないなって思うの。

 

会社との出逢い

 

たしかにオカマちゃんと知り合うことってなかなかないですもんね(笑)。 
今の会社にはいつ入社したのですか?

 社労士の資格を取ったのは一昨年の12月でその翌月には今の会社に入ったの。取得して翌月から働く人ってあんまりいないから珍しいタイプだと思う(笑)。

 

今の会社の何に惹かれたんですか?

 んー、共通の知り合いが「社労士知ってるから紹介するよ。」って言ってくれて、この会社の所長に会ったの。1回目は知人を交えて飲みに行って、2回目はその人のプレゼンを見て、3回目会った時に「お給料要らないから修行させてください!」って言っちゃった。所長は当時29歳だったんだけど、私がついていくのはこの人だ!って思ったのよ。若いのに『岡山県知事になりたい』という目標をブレずに持っていて、今はそこに行くための準備期間だって言い切るの。私の周りにはそんなに熱く夢を語る人がいなかったからすごく惹かれた。暑苦しいとは思ってるけどね(笑)。

 

なんだかロミオとジュリエットのような入社の経緯ですね(笑)。
実際に働いて「この会社で良かった!」と思うことはありますか?

 今の事務所には社労士が3人いるうちの私だけが女性なの。それでもちゃんと平等に扱ってくれて、「女だから」って言われることはないことかな。だからもっと頑張ろう!って思えるの。

 あとはお客さんときちんと向き合えることかな。他の社労士事務所では社長さんに会わずに仕事を終えるとこもある。でもそんなやり方じゃ本当にそこで起こっている問題は解決できないと思う。うちは不満がある社員さんとは個別に面談して、その結果をきちんと社長さんに報告するから、社員さんとも社長さんともきちんと向き合うことができてるって感じるの。

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キャリアウーマンの恋愛事情

 

礒田さんは自分の仕事を誇りに思っているということがすごく伝わります。
では、ちょっとぶしつけな質問をさせてください(笑)。
お仕事をバリバリこなす、30代キャリアウーマンの恋愛事情って実際どんな感じですか?

 恋愛はね~……仕事をしていたら難しいのよ。特に私は「あっちもこっちもうまくやる」ことができないからどっちかに偏っちゃうの。今は仕事を優先してしまうし、資格取得の勉強中の時は彼がうっとうしくなっちゃうし(笑)。難しいなぁ、結婚はしたいんだけどね。

 20代のころはある程度相手の男性に合わせることができたのよ。「彼氏色に染まる」って言うのかな、そんなふうにできてたんだけど、30歳超えるとそれができなくなっちゃうの。理想像がはっきり定まるからその像からはみ出す人は違うなって思っちゃうのよね。

 

 うぅ~ん、それは恋愛が難しくなりそう!
でも結婚はしたいですよね?

 したいよ~!理想は35歳までにしたいなぁ……でもね、結婚はしたいんだけど、仕事も続けたいのよ。結婚した時に仕事と家庭との両立をちゃんとできるのかなって最近考えちゃって……子供が出来たら尚更、仕事を優先することはできないでしょ?でもさっき言ったみたいに私、どちらかに偏っちゃうから。35歳超えると出産だって大変になるって聞くしね。

 ただ、焦っている反面、今は今で楽しいからいいかなって考えたりもするのよね。

 

『人を育てる社労士』

 

礒田さん、すごくお綺麗なのに……私は将来が怖くなってきました(笑)。
では、礒田さんの「これから」についてお聞かせください。

 私ね、子供のころの夢が『学校の先生』だったの。だからこれからは誰かを育てたい。今までは『人を支える社労士』だったけど、次は『人を育てる社労士』になりたいなって思ってる。今後同じように資格を取って社労士を目指す人や会社の社員さんに対してできることをしたいと思ってるの。

 

『人を育てる社労士』、素敵です。

 私は社労士になって2年目だけれど、社労士になったばかりの時はわからないことだらけで大変だったの。経験ももちろんないし。弁護士は司法試験をして資格を取ると研修があるんだけど、社労士には研修なんてないから、資格を取っただけで活かせてない人がいるのよ。そういう人たちのお手伝いが出来ればいいと思ってる。

 

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では、最後に『礒田 翼』さんから読者の皆さんへメッセージをお願いします。

 私が古本屋の店長をしていた時に人を育てることや使うことって本当に大変だなって思ったの。でも、ある程度最初に雇っている子のことを創ってあげると、その子ものびのび働けるし、経営者も大変さが減るの。『創る』っていうのは仕事の楽しさを教えてあげたり、「あなたの頑張りがこの会社のこういうとこに反映される」ってことをきちんと伝えてあげるということ。仕事の目的をきちんと理解すればやりがいが湧くと思う。

 

 私も続けて人を雇ったことがあったけど、どんどんやめていっちゃったの。人を雇って使うことってすごく難しいんだけど、うまくいかないのは結局は経営者の責任。彼ら彼女らのモチベーションを上げることは経営者の仕事なの。社員が辞めてしまうことも、働かないことも、経営者次第で解決できることなのよ。

 だからバイトや仕事がうまくいかないからってあんまり悩まなくてもいいよ。経営者の責任なの。私はそうやって悩める経営者を支えていくから。あなたは悩まなくてもいいのよ。

 

 

私はちょうど悩んでいた。
『バイト辞めたい!』って。
でもそんなことを思ってしまった
自分をすごく惨めに感じていた。

 礒田さんにはそんな話一切していないのに、
「経営者の責任なの。」とメッセージをくれ、
私はすごく勇気をもらえた。 

バイトで悩んでいる学生、
会社に居場所のない社員、
彼らを雇う経営者……
礒田さんはそんなあなたを支える
素敵な社労士さんなのです。

 

文:原優衣 写真:田中瑞穂