大前拓也

 

とあるボランティア団体の集まるパーティで
ひときわ大きな荷物を背負った男の子が現れた。 

大荷物の理由を聞かれると
「今から東北行ってくんねん!」

屈託の無い笑顔で、そう答えた。

 

嵐のように去っていった彼と、まさかこうして再び出会うとは。

 

大前 拓也(おおまえ たくや)
大阪府出身。復興促進団体Investor(インベスター)大阪支部代表。
世界最大の社会起業家のネットワーク『アショカ』の日本支部『アショカ・ジャパン』にて、『東北ユースベンチャラー』に認定される。復興支援活動に限らず、将来の夢に向けて、高校生対象に講演なども行っている。

 

僕の人生を変えてくれたものだから、人生を賭けてやっていきたい

ターニングポイントなんて、最初から分かりっこないよ。

 

——関西代表を務める大前君ですが、Investorに入ったキッカケを教えてください。

もともと僕自身はInvestor(http://www.investor311.com/)の運営する『スタディツアー』の参加者でした。東北で様々な学びを受けるツアーなのですが、気がついたら団体に入っていたかんじですね(笑)。
というのも、参加したのも軽い気持ちで、被災地の『ひ』の字を考えることもなかった大学生でした。でも、いざ参加するとみんなの意識がとても高かったんです。そして僕はこの場所が心地良く感じました。被災地の為に何かをしたいと考える学生だらけのこの環境が良いと思って、サークルも辞めました(笑)。サークル以上に自分の価値観と似た人が必然的に集まった子の場所に惹かれたんですよね。
今では関西支部代表を務めながら、2011年の12月に初めて行ってから、団体でも個人でも12回くらいは東北へ行きました。メンバー内でも一番東北に行っていますね。

 

——12回!東北への想いがとても強いんですね。

新しい人に会ったり、繋がってきた人に会ったり、それをどんどん継続していきたいんですよね。それに、気仙沼にある“望洋”というホテルでいつもお世話になっているのですが、我が子のように接してくれるんです。
こうして行ったぶんだけ、また別の出会いがあるのがめっちゃおもしろいんです。それに気づいてからというものの、毎月行っていますね。まあ、若いですからね(笑)。

 

——それもまた、大前君の原動力だったんですね。

『現状を見てどうにかしたい』という想いより、仲間に出会って、被災地の人に出会って、そこに魅力を感じて動いてきました。それもこれも僕にとっては、人生で一番変わった瞬間だったんです。震災に、支援に、僕の人生を変えてくれたものだから、人生を賭けてやっていきたいと思っています。僕はただ、その価値をみんなにも感じてほしいんですよね。

 

——『人生で一番変わった瞬間』があったとは、一体何があったのですか?

先ほど話した望洋の社長さんに『自分の楽しいと思うことを全力でやれ』と言われたことですね。1週間ひとりで気仙沼のNPO団体のもとで活動した時に、2日目まで「何かせなあかん!」と焦っていた自分が居たんです。
やけど、そんな僕を見てか社長が「大前君、自分の楽しいと思うことを全力でやりなさい。自分が楽しいことをやっていたらみんなに伝わるんだ。自分の良さが伝わるんだよ。」と言ってくれたんです。そう思ったらすごく心が軽くなって、めちゃくちゃ楽しめるようになりましたね。
それまで団体の仕事として次にできることを見つけてきたのですが、1人で行ったことで僕にとっての『これや!こういう支援がしたいんや!』というものが見つかったんですよね。学習支援のお手伝いをしたり、自分が思ったことを提案することもできて、大人の方々も話を動かしてくれるのが、とても楽しかったです。

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リスクをあえて負って行動できるのは、若者だけなんです

想いをカタチに、できる今。

 

——そこで見つけた大前君の『これや』は何でしたか?

“人と出会って、人と繋がって、そこから何かを生んでいく”というのが、自分のスタイルだということですね。被災地支援を始めたからこそ、自分がやりがいを感じるポイントを知ることができました。
僕はやっぱり、自分が動かないのが嫌で仕方ないんです。経験だったり、人にどんどん当たっていかないのは勿体ないと思いますし、人に会えることをチャンスと思わずに動けていなかったりする人を見たら、自分から獲得していってほしいですね。

 

——動かないのは勿体ないですよね。大前君自身が動いたことによって、何か得た経験はありましたか?

そうですね、『アショカ』という、世界最大の社会起業家のネットワークがあるのですが、その日本支部である『アショカ・ジャパン』では、20歳以下の子が選出される『東北ユースベンチャラー』に認めてもらえました。(http://japan.ashoka.org/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC)これは、アショカの中で活躍する社会起業家の方々からアドバイスをもらいつつ活動をしていき、社会起業家の育成のキッカケを作っていく試みなんですよね。
というのも、“ベンチャー”って単語は動詞やと“リスクをあえて負って行動する”という意味なんです。若者はそういった行動ができますが、大人は失敗すると自分の人生を終えてしまう可能性があるからできないんですよね。やから、社会を変える動きをあえて若者だからリスクを負ってやっていくというものなんです。
自分が社会に関わっていったら、自分の自信に思えますよね。もっと僕もコミットして、立案したプロジェクトも夏から実行していく予定で楽しみです。

 

——では将来は社会起業家を目指しているのですか?

いや、僕は自分で起業する力は無いと思っています(笑)。ただ、自分で新しい企画をたてて、総合的にできるようになりたいと思うんです。
僕には大切にしている価値観が2つあって、1つめは『常に挑戦をしていきたいこと』、2つめは『レベルの高い意識の高い仲間としていきたい』なんです。
やから僕は企業に就職し、社会貢献の形が見いだしたいんですよね。仕組みを創出したいと思っています。
やけど、僕は途中で仕事を辞めて、教員になりたいんです。

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引き出しがたくさんあって、キッカケを与えられる教師になりたい

僕らを変えてくれたのは、先生でした。

 

——教員ですか!?突然すぎてびっくりしました(笑)。

僕の想いを、子どもたちにもどんどん引き継いでいきたいんですよね。というのも、僕は中学の部活の顧問の先生やったり、高校2・3年生の担任の先生やったり、先生に影響を受けて生きてきたんです。
やからツアーに参加するまで教員一本だったのですが、広い世界を見て、『すぐに教師になるよりも、普通の教員ではやってないことをやって、おもろい教員になりたい』と思うようになりました。そうして子どもたちにキッカケを与えていきたいんです。

 

——大前君の考える、おもろい教師とはどんな姿ですか?

引き出しがたくさんあって、キッカケを与えられる教師ですね。教師が知らなければ、子どもたちに伝わらないじゃないですか。自分が大学の経験だけでは教えきれないから、自分が企業に入って、将来の子どもたちの選択肢を増やしてあげたいんですよね。
塾講やったり、バスケ指導やったり、いろんな先生の世界を見てきましたが、その人たちの視野が狭くて……、正直『しょうもない』って思うようになったんですよね。やからこそ、自分の少ない知識だけでなくて引き出しを作りまくりたいですよね。僕は人の意志やことばから感じとってきたと思っています。
だから僕は高校に行って、講演会を行っているんです。

 

突き進んで、自分の価値を見つけてほしい

考えて、行動して、知ってきた。僕だから伝えたいこと。

 

——高校で講演をしているんですか?

そうなんですよ(笑)。はじめはお世話になっているNPOの方についていって高校生に語る機会があったのですが、進路で大学生へと進んでいく中で、後輩たちにも幅広いことをやりつつ突き進んで、自分の価値を見つけてほしいと思うようになったんです。そうして自ら高校に講演のアポを取るようになり、僕の母校でもやらせていただくことになりました。

 

——そのような想いをもって、ことばで伝えているんですね。高校生に講演している大学生って、初めて聞きました。

これは僕の持論ですが、自分の価値を見つけやすいのが、この大学4年間だと思うんです。高校まではコミュニティ広げにくかったですが、大学はすごく広くて、言ってしまえば全国区ですよね。ただ、社会に出たらまたコミュニティが企業の中だけに戻ってしまいますから。
それに、高校生は教育期間に震災教育をしているということもあって、僕はタイムリーな人間やと思ったんです。ボランティアやったり、社会貢献の意義を伝えていきたいですし、それをキッカケに校内ボランティアが増えたり、もっと活動を活発にできたら嬉しいですよね。

 

——失礼ですが、大前君はすごく考えて動いているんですね。

僕は目的のないまま行動したくないですもん。僕のことを知らん子は『大前君はがむしゃらに動いてる』って思われるんですが、ちゃんと考えてるんですよ?行き当たりばったりじゃないんですよ(笑)!
その上での失敗がおもろいんです。考えて、行動して、知って、『こんな世界無いな』と勉強になってきました。
だからこそ「大学で経験していなかったら飛び出すことが分からないんやで!」ということを、次に進路を考えている子たちに伝えたいんです。自分の経験してきたことを周りももちろん還元したいですが、高校生も巻き込んでいきたいと思っています。

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レベルの高い環境で戦うことは、とても勇気がいることだ。 

彼は笑顔の裏で
たくさん考えて、たくさん傷ついてきたのだろう。

だからこそ彼は
信頼も、チカラも、チャンスも

たくさん手に入れられたのだ。

 

こんな先生がいたら、人生楽しいだろうな。

彼の底知れぬパワーに触れて
私が元気にしてもらったような気がした。

 

Facebook:大前 拓也 (Takuya Omae)
Twitter:@harukun_t

【文・写真:三宅瑶