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皆さんはTFTをご存知だろうか?TFT はTable For Twoの略であり、直訳すると『二人の食卓』。これは、先進国の人々と途上国の子どもたちが、時間や場所を越えて食を共にする、と いうことを意味している。ヘルシーなTFTメニュー1食につき20円が、TFTを通して1食分の給食として途上国の子どもに渡るというシステムである。このTFTを大学生が主体となって取り組む団体、それがTFT-UAだ。TFT-UAは各地方に支部があり、学生団体としてはとても規模の大きいものである。しかし、学生におけるTFTの認知度はまだまだ低い。海外ボランティアに興味のある学生が増える中、果たしてTFTの活動は広まるのだろうか。

 「イイコト=ボランティア」?


——TFT-UAに入ったきっかけは何ですか?
 最初から、国際協力やボランティアをしたいという気持ちはありませんでした。大学に入ってから勉強というインプットはたくさんできていたのですが、アウト プットする場所がなかなか見つからなかったんです。でもそんな中、周りが留学とかカンボジアの支援団体に入って活動しているのを見て、自分にも社会的価値 を見出したい、社会人としての学生として自分も何か役割を果たしたいと考えるようになりました。でも、かといってそこまで本気でサークルや学生団体を探し ている訳ではありませんでした。とりあえず大学に入ったから何かしよう、という気持ちで京大のバレーサークルと国際交流サークルに入ってはいました。
 そんな中、2回生の4月に国際系の合同新歓に誘われたんです。その新歓が面白そう、という理由だけで参加したのですが、そこで出会ったのがTFTでした。話を聞いて活動に興味を持ちましたし、皆いい人たちでした。それで、思わず入っちゃいました(笑)。

 

——西尾さんは、現在は関西代表という立場にいますよね。そんな西尾さんの考えるTFTの良さって何なのでしょうか?

  僕、募金が嫌いなんです。だってまず用途が不明瞭じゃないですか。例えば、『貧しい子どもたちを救います』というような募金があるけれど、全く具体的では ないですよね。それに募金をするという行為自体、なかなか気軽に何回もできないと思います。第一、募金箱にお金を突っ込むという行為は、すごく一方的なも のだと思うんです。だから僕、募金はしません。そ れに対して、TFTは自分が実際に食べることで相手の食事になるということが分かっているし、食べるだけなので気軽に何回でも出来ます。それに、ヘルシー なメニューなのに美味しくて、さらに誰かを助けるということまで出来てしまうのです。美味しそうだから買う、というだけで人助けができるなんて良いですよ ね。
 こう言ってしまうと、『そんな軽い気持ちでTFTをしないで!』と思う人も中にはいるとは思いますが、僕はそういう理由で協力する人がいてもいいのでは ないか考えています。『これ美味しい』、そこからTFTについて興味を持ってくれたらいいですし、結果的に貢献数が増えたらいいじゃないですか。動機がど うであれ、まずは子どもたちに1食でも多くの給食を届けることが大切なのではないかと考えています。

 

——確かに、TFTって協力する側にも嬉しい仕組みだと思いますし、私も西尾さんの言う通り、『美味しそう』という動機からで協力をする人がいてもいいと思います。そうそう、私、TFTの仕組みを調べたときに、初めてTFTがNPO法人であることを知りました!

 そうなんですよ。NPO法人なのでどうしても『儲け』が絡んできます。こう言うとあまり良いイメージを持ってもらえないのですが、僕は社会貢献が必ずしもボ ランティアであるべきだとは考えていません。ボランティアという、無償で誰かを助けるという行為は素晴らしい事だと思います。でも、それをずっと継続して いくのは正直難しいことですし、どこかで限界が来てしまうと思います。社会貢献をする人にも生活がありますし、やっぱり良い事をしたら報酬は欲しいですよ ね。そう思うのは何も悪いことではないと思います。何か、こんな事を言うと皆の反感を買いそうな気がするんですけどね…(笑)。

 

—— 確かにそれは否定できないです(笑)。でも、西尾さんの言うことは一理あると思います。皆が皆、善意の塊ではないですし、同じことをやるなら報酬があった ほうが私も嬉しいですし、そのほうが頑張れます。お話を聞いていると、西尾さんはビジネス的な考え方を持ってTFTに参加していると思うのですが…。

 そうですね。僕は経済学部ですし、ビジネスに関心があります。それに、TFTのことはソーシャルビジネスのはしり的な存在として捉えていて、そこに関心が あったから参加したというのもあります。TFT-UAの長所は、僕のようにソーシャルビジネスに関心がある学生、国際問題や、栄養管理、広報やイベント企 画など、いろんな方向に関心を持った学生が集まって、それぞれが得た技術や視点をTFTを通じて人の役に立てることができるところにあるのではないかと思います。          

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学生が、学生に広める

——西尾さんの意見、とても新鮮で面白いです。TFT-UAは全国にたくさん支部がありますが、その中でも関西ならではの良さを教えてください。

 関西ならではの良さということなら、『楽しんで活動しよう』ということを一番に考えて活動していることですかね。あまり生真面目に活動しても面白くないですし、どうしたって規模は関東には敵いません。大学の数だって違います。でも、その分面白さでは負けたくありません!

 

——なるほど。面白さにこだわるあたり、関西気質ですね。

  例えば、TFT-UAの活動の一環としてフットサルなど、TFTを学生に広めるためのイベントを行っていますが、僕は他の支部でやったイベントと同じこと をしたいとは思いません。同じことをしても面白くないし、何だか下請け作業みたいで主体性がないですよね。それに他の支部でそのイベントが成功したからと いって、関西で成功するとは限りません。とにかく、やるならオリジナルのイベントをしたいんです。規模が大きくないからこそ、関西メンバー皆でこつこつと 作り上げることも関西支部の良さなのではないかなと思います。

 あとは、去年の話になるのですが、京大のTFTで京都市内の飲食店30店舗とコラボして、TFTメニューを置いてもらうという活動をしました。これが結構大 変で苦労もたくさんありましたが、実現した時の達成感はハンパなかったです。それに地域の皆さんの理解や協力があったからこそできた活動だと思いますし、その活動を新聞やテレビなどのメディアに取り上げてもらうことができて、話題になりました。そ こまでしなくても、例えば大学でTFTメニューを出しても、新聞などに取り上げてもらうことだってあります。関西だけに言えることではないですが、地方の ほうがいろんな貢献活動が盛んな都市部に比べてメディアに取り上げてもらいやすい、ということも良さの一つだと思います。

——TFT-UAの活動がメディアに取り上げられることで、低いと言われている学生の認知度も上がると思います。でも、どうしてTFTは学生に広まっていないのでしょうか?

 もともとTFTは、サラリーマンのメタボ増加に注目して、ヘルシーさを売りに社員食堂に導入することからスタートした活動なのです。サラリーマンの間ではTFTのことは広く知られていますが、学生にはあまり知られていないことの理由はここにあります。学 生に広めるためには学食にTFTメニューを導入することが最善の方法だと考えていますが、ポッと出てすぐに消えてしまうような導入では意味がありません。 それに、TFTメニューの主な導入方法として生協との交渉を行なっていますが、TFTの団体がない大学や、あっても導入に苦労している大学もあります。そ ういう大学の学生にもTFTのことを知ってもらうためにイベントを開催しているのです。でも、イベントばかりしていたら、本来のTFTの活動目的から外れ てしまうので、イベントは乱発しすぎないように気を付けています。ただのチャリティーイベントを開催するのではなくて、イベントを通じてTFTを広められるようなものにしたいです。でもやはり一番の方法は、継続してTFTメニューを提供することです。継続することで次の世代にもTFTを広めることができますし、それも僕たちの役目だと思っています。

 

——最近は海外ボランティアに行く学生が増えてきて、ボランティアツアーなんかも増えて来ましたよね。だからTFTへの関心も高まっているとは思います。でも実は私、あんまりボランティアブームにはあまり賛成ではないんです。西尾さんはどう考えていますか?

 おっしゃる通り、関西メンバーの中にも『重み』がないと言っている学生がいます。でも、僕はそれでもいいと思うんです。むしろ、ブームになることでいろんなツ アーができて、海外のそういった事情に触れる機会が増えることは良いことだと思います。きっと旅行会社やツアーの主催者たちは、学生に海外の貧困や孤児な ど、国際社会の現状に触れて欲しくてこういったものを企画していると思うんですね。そしたらこのブームは企画者の目的にも合致しているし、学生のニーズに も合致しているので、僕は別に反対ではないです。前提としてコミュニティを傷つけない範囲での活動であればの話ですが、訪問される側としては訪問する側の 動機がどういうものであれ、来てくれたことが素直に嬉しいですし、来てもらうことに意味がありますよね。だから、別にボランティアブームには反対ではありません。            247

 「縁の下の力持ち」のようなリーダーでありたい


——最後に西尾さんのこれからの目標を教えてください。

 まず、もっと多くの大学にTFTへの参加を呼びかけることですね。関西支部のコンセプトとして、『Make notion take action』を掲げています。一つは僕たちTFTのメンバーがいろんな事に気づいて行 動しようという意味で、もう一つはTFTの事を知らない人も含めてTFTの活動について知ってもらって、TFTメニューを食べるなどの活動に参加してもら おうという意味が込められています。現時点で、関西の主要な大学のほとんどはTFTの活動に賛同して参加してくれています。これはとても嬉しいことですね。だから、TFTを学生に広めるという目標は達成されつつあるのかな、と僕は思います。あとは、TFTメニューを提供する頻度を増やすことですね。これは、先ほども言った通り生協との交渉が必要になりますが、大阪市立大学なんかは、通年で TFTメニューが提供されています。どこの大学でも大阪市立大学のように、通年でTFTメニューが置かれるようになることが僕たちの最終目標です。

  さらに、これは内部の話になってしまうのですが、TFTメニューを各大学の学食に提供してもらうようにお願いすることは、内輪だけの活動で出来てしまうの です。つまり、大学内のTFTメンバーだけで活動を完結させることが可能であるということです。でも、内輪だけで活動をしていては、他大学との繋がりが無 くなってしまうじゃないですか。せっかく同じ活動をしている仲間なんだし、交流があったほうがたくさんの人と関わることが出来て面白いと思います。それ に、各大学での活動の刺激にもなると思うんです。

 今はまだまだ各大学のつながりが薄いと感じていて、イベントを開催してもなんだか物足りないと思うときもあります。だから僕はできる限り大学と大学のパイプ役になって、各大学間の繋がりをもっと深めていきたいと思っています。

TFTをビジネスという視点で考えているからこその、西尾さんの意見。彼の意見を冷めていると捉える人も多いだろう。
しかし、彼の話からは支援者を支援したいという思いが伝わってくる。

 
『TFTを大学でしたいと考えている人のサポートは全力でします。僕は前に出るより縁の下の力持ち的なリーダーでありたいです。』

日本生まれの社会貢献運動。
私の一食が誰かの一食になる。あなたも誰かと食事を共有しませんか?
 【文・写真…市川陽菜】