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大学生の中で教員を目指している学生はたくさんいる。

そのなかで一体どれくらいの学生が『教育』について多くの時間を費やし、常に熱意を持って向き合っているのか。 


彼は現在、中学校の英語教員を目指して日々の勉強に勤しんでいる。

彼の目指す教員とは何か。インタビューの中で『教育』に対する熱い思いを語ってくれた。

 

―よろしくお願いします。まず初めに、教育に興味を持ったきっかけを教えてください。

はい。もともと近所に同年代の子がいなくて、年下の子たちと遊んでいたので子どものことは昔から好きでした。教育に興味を持ったきっかけはこの時で、最初は保育士さんになりたいと考えていました。

 

―では、教員を目指すようになったきっかけを教えてください。

高校の半ば頃、『教育』というものを考えていく中で、僕の中で思い当たったのが、中学の時に万引きをした子のことでした。その子と直接の関わりはないのです が、その時に『どうして万引きなんかするんかな?』と思いました。万引きするにもいろんな環境要因があると思います。家庭環境が悪かったり、金銭的に困っ ていたり、それこそ周りの子がお金持ちだったりとか……。僕は絶対にどれだけ欲しくても万引きはやりませんし、『ここから先は絶対やらない、やってはいけ ない』というラインを自分の中で持っている人は持っていると思ったのです。

そこで『常識やモラルを教えるのは誰だろう、自分は誰に教わったんやろう』と考えた時に、思い浮かんだのはやっぱり親でした。でも、それができてない親が いるのは事実です。では、親の次に影響を与えられる人は誰かということを考えた時に、親の次に近い大人である『教員』という結論に至りました。

—教員を志し、そういった子どもたちにどのように接したいか考えていますか?

僕 が教員になって何ができるかを考えた時に、自分の価値観を押し付けるようなことはしたくないと思いました。自分の価値観を押し付けても、『なんでこれしな あかんねん』と自分の中で分かってなかったらやらないですよね。そうじゃなくて、ひとりひとりが自分の中で、『これはやったらあかんことや』ということを 見つけられるような、そんな働きかけができるような教員になりたいですし、『自分がなれるのかな?』というのを試したいということもまた、教員の道を選ん だ理由ですね。

 

―坂東さんは教員の中でも中学校の英語教員になりたいということでしたが、その理由を教えてください。

英語を教えたいと思ったきっかけは、『英語の楽しさを伝えたい、楽しいって思える瞬間を与えてあげたい』と思ったことですね。僕自身が小学校の頃に英会話教 室に行っていたことで、楽しい思い出があったんです。海外旅行で出会った外国人の方に英語で自己紹介することになった時に、僕の英語が伝わって、それが嬉 しくてたまらなかったんです。そのあとも、親のすすめで二週間のホームステイをした時にすんなり英語が出てきくると『英語が身に付いた!』と感動して、 『やっぱり英語って楽しいな』と思いました。

 

―英語により多く触れる機会があったからこそ、生まれた気持ちだったのですね。

それまで中学受験なんて考えてなかったのですが、親が英語に特化したコースのある学校のチラシ持ってきてくれて、『ああ、じゃあ行ってみるか』ということで 進学しましたしね(笑)。でも、いざ入ってみたらクラスは女子ばっかりでしたし、だからといって少ない男子とも仲良くなれませんでした。だから、休み時間 に僕の進学したコース専用のスタッフルームに行って、そこにいるネイティブの先生数人とよく雑談をしていました。今思えば、留学より先生たちと雑談したこ とが、英語の勉強になったと思います。

n                                          Photo by bandou

—より生の英語に触れたからこそ今の思いができたのですね。またどうして中学校教員なのですか?

『英語が楽しい』と思える瞬間は、英語で自分の思いを相手に伝え、それが伝わった時に感じる『自分の言ったことが伝わるんや!』という感動だと僕は思っていま す。そして、そういう英語に触れる機会を与えられる時期を考えた時に、小学校では早すぎると思ったからこそ、中学校か高校の教員だと思いました。

しかしながら、万引きの子の例のように『道徳的な面も教えたい』と考えたときに、時期が早ければ早いほうがいいという考えがありました。そこから、英語のこと、道徳のこと踏まえて、残った選択肢が中学校の英語教員でした。

 

―なるほど。そこまで考えた上で中学校の英語教員を目指しているんですね。でも、どうして教員を目指しているのに、関西外国語大学に入学したんですか?

高校の留学から帰ってきた時には、もう教員を目指すことを決めていましたが、英語は続けたいと思っていました。最初は教育大に行くことも考えましたが、教育 大にはネイティブの先生も、留学生も少なくて、英語を続けられないと思いました。でも、外大なら留学生がいっぱいいますよね。『今まで通り休み時間とか、 暇な時間に英語をしゃべることができる環境が外大にはあるはずや』と思ったんです。

そして、結局どこの大学へ行こうが、『何を勉強するか』とか、『教師になりたいから何をするか』というのは自分で選べばいいと思いましたね。自分がやりたい ことやったらいいと思いますし、自分のやりたいこと見つからなかったら探せばいいじゃないですか。始めるのはどこでもできますよね。

でも、外大には教員になるためのサポートが充実していたので良かったです。入る前はそこまで考えていませんでしたが(笑)。

 

―それはラッキーでしたね(笑)。関西外国語大学でも、教員を目指す人たちのための活動があるのでしょうか?

大阪のいろんな大学が、授業外でいろんな特色をもった合宿をしているのですが、外大は一泊二日の英語合宿『サマセミ(サマーセミナー)』というのをやってい ます。一回生の時に参加させてもらいましたが、本番まで休み時間とか空き時間などで集まって、ちゃんと子どものこと考えられているか、どうしたら子どもた ちが楽しんで英語に触れられるか、『何かを学んだ』という実感を持って帰ってもらえるかなどをずっと考えて、内容を何度も何度も練り直しました。

内容としては英語を使って謎解きをしていくものなのですが、去年は『天の川が逆流した』という、ありえない内容でしたね(笑)。

 

―面白いですね(笑)。本番に向けて時間を費やして何度も何度も子どもたちのことを考えているんですね。参加した子どもたちは英語のこと好きになるでしょうね。

それがそうでもないのです。元々英語が好きな子はもちろん楽しいと言ってくれますが、強制的に参加させられたり、仲良しの子と別のグループになってしまったりして、全然楽しくなかったという子も中にはいますね。でも、そういう子のサポートをするのも僕たちの役目です。

こ れ以外にも二回生の時に、小学生が英語の活動を楽しめるようにと一年間継続して小学校に足を運び、学生だけで月一回土曜日に英語の活動をやっていました。 これは、普通のボランティアでよくあるような、先生のサポートや勉強についていけてない子の補助をするものではありません。年間のスケジュールを自分たち で組んで、子どもたちと一緒に活動するのですが、これは本当に楽しいです。あとは、僕にとって先輩とのつながりができるのが大きかったですね。

 

―先輩から直接アドバイスがもらえたり、お話を聞くことができるのっていいですよね。

 そうですね、サマセミに参加した時の四回の先輩方の行動や意見が今でもすごく印象に残っています。先輩を見て、『こういうやり方があったんだ!』とか、子ど もの見えてなかったところや、考えてあげられなかったことに気づかされたことが多々あります。それに先輩との飲み会で、先輩の教育についての熱い思いを聞 くのもすごく刺激になりますし、それがむっちゃ楽しいです。

do                                                               Photo by Bandou

―坂東さんは、そういった活動をしたり、先輩の話を聞いたりすることで、教育に対する考えを深めていったわけですね?

教育に対する考え方はいっぱいありますが、人によって中心となる考え方は特に違うと思います。僕やったら今は、『子どもの多様性』が教育を考えるにあたって中心となっています。

例えば、中学生やから、こういう行動するんや』という捉え方もあると思いますが、それを言ってしまったら中学生やからしょうがない、となってしまいますよ ね。ひとりひとりには、それぞれの生い立ちがあります。だから、その子に見合った対応をしないと、子どもからしたら『ああ、やっぱり俺ら“中学生やから” でまとめられている』と感じてしまいますし、そのような見方をしたら駄目だと思っています。

それで、僕が今できることは何かな、と考えたときに思い浮かんだのが、児童養護施設に関しての本を読んだり、情緒障害短期治療施設の院長の方の著書を読んだ りすることだったんです。本当なら、実際にいろんな子どもたちがいるということを体験するほうがいいと思いますが、自分の時間割の都合上できません。だか らそのかわりに、実際に体験したことのある人の本を読んだり、テレビのドキュメンタリーとかを見るようにはしています。

 

―なるほど。坂東さんは本やテレビを通して『子どもの多様性』を大切にしようと思ったんですね。

例えば親という存在がいないだけで、家族のなかで育った子とそうでない子とでは、いろんな違いがあると思います。それなのに、クラスでは『みんな同じやから 平等に』というのは違うと思うんです。確かに平等は大切なことですが、元々が違うわけだから、完全に全部を平等にしてしまうのは違うと感じますね。よく 『男女平等』と言いますが、男と女だったら体のつくりも違うし、考え方だって違いますよね。それを全部平等にしたら変じゃないですか。それと同じで『子ど もにもいろんな子がいるんやな』ということを理解しておく必要があると思っています。

みんな考え方も違えば、住んでいる環境も違うし、日頃のことに関する捉え方も違うし、それによって『何が大事になっていくか』というのも違うんですよね。このことを知ったときから多様性というものを一番に考え始めました。

でもこれに気づいたのは最近の話なので、またこれから何が一番大事かっていう考えは変わっていくかもしれないです。今の僕にとって、『多様性』が教育を考えるにあたって一番大事なことですね。

そういうところから、今は『自主ゼミ』というものをやっています。

 

―その『自主ゼミ』について教えて詳しく教えてください。

勉強会みたいなグループなのですが、周りの教職とってる十何人かで、教室を使って週二回、教育に関してみんなでディスカッションしています。

いろんなトピックについて考えた時に、言うことは人それぞれですが、どれが正解とかじゃないですし、たくさんの人の意見を聞いてく中で納得することや、自分とは違う意見を知っていくのは大事なことだと思います。

教育に対する多様な考えを知ることを通して、自分の教育に対する考えも変わっていきます。自主ゼミはすごく楽しいですよ。

u                  自主ゼミの皆さん/phto by Bandou

 

―自主ゼミ、いろんな人の熱い思いが聞けて楽しそうです。では最後に、坂東さんが教員を目指すにあたっての『これから』について教えてください。

 生徒が『この先生やったら相談していいかな?』『この先生やったら信じたろ!』という気持ちになることは大事だと思います。だからこそ、普段から自分の行動や発言には責任を持とうと思っています。『普通の人としてしなあかんこと』はしていきたいのです。

教 員になったからといって、いきなり規則正しい生活ができたり、いきなり信号無視しなくなるのかといったら、そういうわけじゃないですよね。困っている人が いたら助けてあげるというような、道徳的なことは教員になったからといってできることじゃないと思います。自分ができてないのに生徒に「ああしろこうし ろ」と言っても無理な話ですよね。

 友だち同士やったら自分が実際できていなくても、『こうしたほうがいいんちゃう』と言ってあげることは優しさだと思いますし、相手のことを思ってのアドバイ スだと思いますが、生徒に対してそれができるのかといったらできないと思います。だから今は、『自分を変えていかなあかん』と思っています。

 

―なんか、すごく意識が高くて素晴らしいなと思います。たくさんいいお話が聞けました!どうもありがとうございました。

 いやいや(笑)。意識高くふるまうのが得意なんです。しょうもない話でしたが、そう言っていただけて嬉しいです。ありがとうございました。

 

「自分が教育について考えたときに、一番の目標は英語を伝えることと、『良いことと悪いことって何なんやろ』ということを考えてもらうことです。そこをベース にしたうえで今自分が大事にしたいのはやっぱり子どもたちの多様性。『いろんな子がいるんやで』というのを自分の中で知っておきたいんです。」

 

英語が大好きで、教育に対する熱い思いを持った坂東先生―

彼の未来の教え子たちを、本当に羨ましく思った。

【文・写真:市川陽菜】