木下さん

TED―Technology Entertainment Design

アメリカ、カリフォルニア州モントレーで年に一度カンファレンスを主催する非営利団体。
Technology, Entertainment, Designの3つの領域が一体となって未来を形作るという考えのもと、あらゆる分野から一人 15分程度のプレゼンテーションを行う。プレゼンターは無名の一般人からアメリカ合衆国元大統領と身分、人種、年齢問わず選抜される。

 

TEDxKGU-Kansai Gaikokugo University

2013 年4月28日(日)に開催されるTEDxKGU。『TEDx』とはTEDの精神「ideas worth spreading」のもとに世界各地で発足し ている、TED形式のイベントを開くコミュニティ。今回は関西外国語大学が、日本では8大学目としてTEDxを開催する。

TEDに魅了され、TEDxKGUの代表を務める、木下 翔太。何が彼の行動を引き起こし、何が彼の熱意の原動力なのか。追ってみるとこれまでの様々な経験によるものだとわかった。

ー木下翔太 TEDxKGU代表

 

 

英語だけで満足しない

―TEDxKGU、開催決定おめでとうございます!

早速ですが、何故TEDxKGUを開催しようと決心されたんですか?

 

 有難うございます。TEDxKGUを開催しようと思ったのは、まあ、ただ単純にTEDが好きだったからです。TEDを関西外大で開きたかったですよね。

 

 

―TEDは世界的に有名ですよね。私だったら「いくら大好きでも自分で開くとなると…」と身が引けますが、木下さんをそこまで突き動かす想いとは何なんでしょうか?

 

関 西外大って、人種という面ではすごい多様性で溢れてるんですよ。いろんな国から留学生が来ていて、そこにいるだけでインターナショナルな環境にいると錯覚 してしまうんですよね。でも学問の分野からみると、多様性という言葉には縁遠い大学なんです。やっぱり『関西外国語大学』の名の通り、外国語に精通した方 ばかりなので、経営学や法学などの他の分野の方と出会うことはそうそうないんです。だから、関西外大にTEDを持ち込むことによって、あらゆる分野の方々 とコラボレーション出来たらなと思ったんです。

そ こで、去年の10月後半にTEDのライセンスを同大学の糟谷あかねと共に取得しました。TEDを開催するにはライセンスが必要で、その申請書を書くのに1 か月は費やしましたね。そこから、メンバーは関西外大生だけで40人、当日スタッフや他大学の学生を合わせれば50~60人ほどの団体の代表になりまし た。

『TED』のHP⇒ http://www.ted.com/

 

TED

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左:カンファレンスの様子

 

―『錯覚してしまう』とおっしゃいましたが、何がきっかけでそのように感じたんですか?

 

 大学2年生の時の経験です。

僕 は1年生の時、授業受けても英語が全然わからなくて…あるとき、外大内で英語を聞ける時間を単純計算してみたんですよ。僕は週に4コマ、ネイティブの先生 の授業を受けていたので、単純計算すると1週間で1時間半×4コマ=6時間。1か月で1日分。半期でだいたい4日分しか英語を聞けてないことに気づいたん です。「たった4日分のために学費払ってんだ」と思ったら、「留学しちゃえば、毎日英語を聞くし、話さなきゃいけなくなるから、残りの大学生活は有意義に 過ごすには留学するべきだ!」と思って休学し、半年間、カナダのトロントへ留学に行きました。

 

 

―面白い考え方ですね!

 

ありがとうございます。

留学中は3か月間、語学学校へ通い英語を学び、残りの約2ヶ月間はビジネススクールへ行き、現地の学生とビジネスについて、もちろん英語で学びました。帰国すると『英語が話せる』ということで「すごいね」「賢いね」と外大の友達は言ってくれました。


そして、2年生になり、ある施設のインターンシップに参加しました。合計12名の学生の中でほとんどが阪大生でした。僕は「自分は英語ができるから阪大 生に劣ってはいない」と思っていたんです。そして、インターン初日、ペアになって自己紹介をすることになり、僕とペアになった阪大の男の子は、僕が関西外 国語大学だと知ると英語で話し始めました。もちろん、僕も英語で話していましたが、ある質問をされた時、何も返せなくなったんです。

 

 

―な、何を聞かれたんですか?

 

  彼は「What’s your major?」と尋ねてきました。「君の専攻は何?」と聞かれたんです。僕は答えることができなかった。外国語学部、英米 語学科で学ぶことはもちろん『英語』です。でも、目の前の彼は自分より英語が話せて、法学の勉強もしてる。彼の中では『英語』は専攻することではないんで すよ。その時に「自分の視野は狭い」と感じました。

 「英語が話せるだけですごい」と、特に関西外大生は思い込みがちなんです。でも彼との出会いで僕は「英語だけで満足しない」と思うようになりました。これがTED開催の根源です。

 

 

―留学、大学、インターンシップ、これらの経験がTEDxKGUにつながったんですね。

では、木下さんが代表としてこれまで一番大変だったことは何ですか?

 

 『人』と関わる事が怖くなった時期がありました。いわゆる鬱予備軍ですね。あの時期は本当に辛かったです。人と何かを作り上げたときの喜びは、自分1人で 成し遂げた時より何倍にもなるが、その反面辛さもある事を学びました。ただ、メンバーや周りの方々からの『がんばってるね』って言葉に支えられました。本 当に感謝してます。

 

 

プレゼンテーションとの出会い

―周囲の方の応援って本当に嬉しいものですよね。

その他にもオープンキャンパスに来た高校生に、関西外大についてのプレゼンを行う活動もなさっていますよね。その経緯を聞かせてください。

 

  よく調べましたね(笑)。僕は関西外国語大学へ編入し、Garr Reynolds先生と出会いました。先生は日本で行われた過去3回のTEDxのプレゼ ンターとして出演しています。今回のTEDxKGUでもプレゼンしてくれるんです。僕は彼から【プレゼンテーション】を教えてもらいました。彼はシリコン バレーのApple社で働いたことがあり、デザインに精通してる方で、言葉だけでは伝えきれないことをジェスチャーや写真、視覚で伝えることを教えてもら いました。なかなか厳しく指導してもらいましたね。スライド1枚、文字のフォントサイズ1つまでとことんこだわるんです。TED開催は彼の影響も大きいです。

 そんな先生からある日、オープンキャンパスで高校生に向けて英語でプレゼンしないかと誘われ、約200名の高校生の前で5分間、英語で関西外大の魅力をプレゼンしました。

 

 

―やってみてどうでした?

 

 いやぁ、このプレゼンが今までで一番辛かったですねぇ……。とにかく、たった5分間で言いたいことを伝えるのはすごく難しいということを痛感しました。言 いたいことを言えないことが苦しいんですよ。ちょうど、授業のプレゼンやテストが重なっていて、時期的にも頭パンパンだったんです。

そして、この1回のプレゼンを皮切りに、プロジェクト化して活動するようになりました。今は活動を休止している状態なのですが、またやりたいと思ってます。

 

 

木下さん3

 

「元・英語テスト赤点高校生」から「現・関西外大のエリート学生」

―英語もプレゼンも本当に大好きなんだなって、お話を聞いていると感じます。

そもそも何故関西外国語大学へ進学したんですか?

 

  僕、最初は関西外国語大学の短期大学に入学したんです。高校のときはほんとバカで、英語なんて全然好きじゃなくて、テストでいうと30、40点…50点取 れたら喜んでいました。高校時代はサッカーばっかりやってて、部活を引退したのは高3の9月ぐらいですかね。そこから塾に入るためにテストを受けたのです が、点数が良くなくて入塾を断られてしまいました。

 

 

―え!?本当ですか!?

 

  はい(笑)。 でも「ここで引いたらもう大学受からない」と思い、塾にお願いして……めちゃくちゃお願いしました(笑)。そして「そこまで言うんだった ら」といって入塾を許可してもらいました。そこで英語の参考書『ターゲット』と『即ゼミ』を渡されて、「とりあえずこれを勉強しろ」と言われたんです。


もうそこからは寝る間も惜しんで勉強して……、そうやって勉強すると、英単語を覚えてきて、単語がわかれば英語の文章も少しずつ読めるようになりまし た。その時に「英語話せたら俺かっこいい!」と思ったのが、英語が好きになったきっかけですかね。まあ、関西外国語短期大学を選んだのはそこしか行ける大 学がなかったからです(笑)。

 

 

―では、より英語を学びたいと思ったから関西外大へ編入したんですか?

 

  学びたい…というより、2年間通って、関西外大が好きになったんです。ほんとに自分の周りには素敵な人が多くて、夢にあふれている人が多いんですよね。関 西外大は人種の多様性がありますが、日本人だけでもいろんな素敵な人がいるんです。その中で自分も学びたいと思ったからです。

 

 

Designに心惹かれて

―今年が最終学年ですが、木下さんが今考えている自分の将来についてお聞かせください。

 

 これからは「感性を高めたい」と思ってます。いろんな人に出会って、いろんなものを見て、いろんなとこへ行きたいですね。今まで見ることができなかった世界を見たいんです。そして、最終的にそのデザインを形にする会社を起こしたいと思っています。

 

 

―会社を起こす!夢は社長になることですか?

 

 夢はたくさんありますが、その中の一つが「社長になること」です。僕、小さい頃から周りに「俺は社長になる」と言ってきて、言い続けているうち夢の一つになりました。

 

 

―何をする会社にしようか、今から考えてますか?

 

 僕、デザインが好きなんです。モノや空間、アイデア、ヒト……、自分が作ったもの、デザインしたものを認めてもらってお金に変えたいと思ってます。これも特にきっかけはないんですけど、【デザイン】に心惹かれて。プレゼンもデザインの一つだと思ってます。

 

  僕、TEDと自分がすごいマッチしてるなぁと思うんですよ。アイデア、デザインという言葉がほんとに好きで、それはTEDを語る上で欠かせないものなんで す。TEDはカンファレンス(イベント)後のアフターパーティ(交流会)がより重要視されてます。アフターパーティにはプレゼンターも参加するのですが、 お客さんがプレゼンターのアイデアを受け取り、自分の中でそのアイデアと考えを混ぜ合わせて、それをプレゼンターに返すってすごい素敵だなぁと思うんで す。自分はその空間を、お客さんがプレゼンターにどんどん話しかけれるような、いろんなアイデアが湧くような雰囲気を作りたい。これも一つの空間デザイン だと思ってます。

 

 

点と点が線で繋がった

―こうやって聞いていると、木下さんのこれまでの経験や将来への考えって全てTEDに関係していますね!

 そ うですね。TEDxKGUを開催するにあたって、今みたいに自分の経験や考えを話す機会をもらっています。こうやって過去を振り返ってみると、今までやっ てきたことが全て「TEDにつながっているな」と思いました。何か新しいことを始めるときに、「これからやろうとしていることって本当に意味あるのかな」 とか思ってやっていましたが、今考えると、あの時これをやっていたから今これやっているんだな、やれてるんだなと気づきました。『点と点がつながる』とい うSteve Jobsの言葉の意味がやっとわかりましたね。点(過去の経験)と点がつながって、今はTEDxKGUへと線でつながっています。

 

 

―私はやりたいことをやるかやらないかで迷っているときは「とりあえずやっちゃえ!」と思ってこれまで生きてきたので、木下さんのお話を聞いているとなんだか励まされます(笑)。

 

 素敵な考えですね。一歩踏み出す力を持ってる人って、なかなかいないんですよ。今まで留学、インターン、他団体の活動などいろいろやってきましたが、だんだんやっていることがステップアップしているなと思うんです。

 

僕は、TEDxKGUのようにリーダーをやる経験がなかったんです。今まで何も活動してこなかった子がいきなりリーダーになることは無理でも、自分には今までの経験を通してできたいろんなつながりがあると気付いたら、それがリーダーになる自信になりました。

だから小さな一歩からでいいからどんどん踏み出したら、最終的に大きなことをできるようになるんだと思います。

 

 

―今日は木下さんのお話を聞けて本当に良かったです!

最後にTEDxKGUを楽しみにしている方々へ一言お願いします。

 

ただシンプルに、楽しんでください!僕らは全力で接待するんで。たくさんインスパイアされて素敵なコラボレーションを生み出して頂ければ嬉しいです。

 

『TEDxKGUの代表』と聞くと近寄りがたいが、
『木下 翔太』としてインタビューを受けた彼は等身大の自分を語ってくれた。
挑戦、挫折、気付き、そしてまた新たな挑戦。

そこにいたのは始めの一歩を踏み出し、

どんどん大きなフィールドへ飛び出した青年だった。

彼の情熱が注がれた4月28日の『TEDxKGU』は、

これからさらに広い世界へ羽ばたく彼の大きな一歩になるだろう。

 

【文・写真:原優衣】