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(写真左から藤吉豊さん、メンバーの斎藤充さん)

 

今回はフリーランス編集者&ライターである、藤吉豊さんにお話を伺った。

 

藤吉さんが見てきた『就職のリアル』とフリーランスで働く意味

そして、私たちに若者に向けたメッセージ、とは。

 

 

藤吉豊さん

編集プロダクション、出版社勤務を経て2001年に独立し、現在はプロモーションツールの編集とビジネス書の編集制作・執筆などを軸にフリーランスでご活躍している。一方で学生団体のフリーペーパー制作をサポートし、大学生対象の出版業界セミナーを行うなど、私たちにとって身近な存在でもある。

 

 

フリーランス=自由とは限らない

制限との戦い、自分との戦い。

 

 

——藤吉さんは、どうして会社員からフリーランスにならはったのですか?

 

『自 己成長のため』でしたね。僕は32歳の時に、勤めていた出版社で月刊誌の編集長になりました。雑誌全体を俯瞰して見る編集長の仕事はとても面白かったので すが、編集長は一番偉いので誰も僕に口を出さないわけで、そうするとつい、僕も怠けたくなりました(笑)。『面倒なことはやらなくてもいい。無難に卒なく こなしていれば、それなりの結果は出る』と思うようになり、成長している実感が乏しかったんですよね。


ある時、編集者になったばかりの頃に社長から『20代の仕事の成果と経験で、30代の仕事ができる。30代の仕事の成果と景観で40代、の仕事ができる』 と言われたことを思い出しました。すると「僕の30代の過ごし方は正しいのだろうか?慣れた場所で、慣れた人たちと、慣れた仕事を続けた先には、何も変わ らない40代の自分がいるのではないか……?」と疑問を感じたんです。


そこで僕は自己成長のためにも環境を変えようと考え、フリーへの転身を決心しました。

 

 

——いざフリーランスになった時はどうでしたか?


「藤吉さんに、この仕事をお願いしたい。」と、僕個人に対して仕事の依頼があり、そして僕個人の成果に対して報酬を得られました。働くうえでも生きるうえでも、『承認欲求を満たせるベストな形』だと感じましたね。

 

 

——フリーランスは名前の通り、自由なイメージを受けます。

僕もそう思ってフリーになりましたが、浅はかでした。自由ばかりじゃないですよ(笑)。たしかに会社員ほど時間的な制約もありませんし、仕事を自分で選ぶ こともできます。けれども立場としては仕事を受ける側なので、相手に合わせるべきこともたくさんあります。 


フリーランスになってすぐに、20代前半の若手編集者と仕事をしたことがあり、『自分が指示を出される側』になったことが新鮮でした。そこでまた、「僕は 元編集長だし、この子より経験しているし……。」と、自分は正しいとどこかで思っていたり、プライドの殻が出来上がっていたことに気づいたんです。年齢も 経験も関係なく、相手の考えを尊重する姿勢が、フリーランスには必要だと学びましたね。


そう考えるとむしろ、出来ないことの方が多いくらいです。自己主張するだけでは、フリーランスの仕事は成り立ちません。

 

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フリーランスとして成功する近道は、社会人を経験すること

失敗は、最高の栄養剤。

 

 

——最近は学生の就職においてもフリーランス志向が広がってきていますが、何かアドバイスはありますか?


フリーランスとして成功する近道は、一度は会社員を経験してみることだと思います。それというのも、会社は『若いうちの失敗が許される場所』だからなんで す。

 

人は失敗から沢山のことを学びますが、フリーランスの場合は一度の失敗が致命傷になることがあります。それなら失敗が許されるうちに、沢山の経験を積 んだほうが良いですよね。

 

将来的にフリーランスになることを見越し、その前の準備段階として会社に入るのも、一つの選択肢なんです。

 

——『失敗が許される場所』という考えはなかったですね。

「組織に合わない、縛られたくない!」と言って就職しない気持ちは分かりますが、それってただの言い逃れではありませんか? 本当に『組織に合わない』のか、それとも『我慢が足りない』だけなのかもしれません。


だからこそ、『会社員が嫌』なのか『最適項としてのフリーランス』なのか、よく考えてみる必要があると思います。「会社員は嫌だからフリーランスになる!」という動機では、少し弱いかもしれませんね。

 

 

——お話を聞いても、やはり会社で勤めることは大切なんですね。


僕はそう思いますね。以前、高野登さん(前リッツカールトン・日本支社長)とお会いしたとき に、「仕事が思いどおりにいかないときは、『いまは、心の筋トレをする期間』ととらえればいい。」と教えていただきました。

 

心も体も、自己成長するために は、負荷をかける必要があります。ですから、フリーランスになる前に『会社員』として経験を積み、心の筋肉を鍛え、『仕事の土台』をつくっておくのも得策 でしょう。

 

——心の筋トレは、何ごとにも大切ですよね。

負荷をかければしんどいし、痛いし、辛いですけど、基礎体力をつけておけないと、その後の成長は見込めません。

 

思い通りにいかないことがあったとしても、 それを我慢をしながら『心の筋肉を鍛えた人』と「やだやだやだ!」と言って辞めていく人とでは、その先の結果が大きく変わっていくと思うんです。

 

自分の弱 さを棚に上げて会社や上司のせいにする人は、フリーランスになっても、やはり誰かのせいにして逃げてしまうかもしれません。実際、そうやって消えていった フリーランスを沢山見てきました。


僕のまわりで『結果を残しているフリーランス』は、一度は会社に入って、心の筋トレをして、仕事の基礎や社会人としての常識を身につけている人がほとんどです。

 

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1人であることに限界を感じていたんです

フリーランスの、新しいカタチ。

 

 

——フリーランスになったからこそ、気づいたことはありますか?

 

フ リーランスは、才能やスキルや、職能を磨くだけで結果を残せる世界ではなく、むしろ磨くべきなのは、『人柄』だと気づきました。

 

人は鏡と言いますが、周り を拒絶する人は自分も拒絶されるし、人を好きにならない人は、好かれることはありません。損して得とれではないですが、まずは自分からから差し出すことが 大切なんだなと感じますね。

 

フリーランスは『自分のやりたいことができる』と思われがちですが、むしろ『相手のやりたいことに協力してあげる』ことで評価 を得るわけですからね。

 

——それはなってこそ分かる気づきですね。藤吉さんはフリーランスのユニットを組んではるんですよね?

そうですね。僕たちはフリーランスの編集者とデザイナー、計4名で、『クロロス』という名前のユニットを組んでいます。


あるときは、それぞれがフリーの立場で、あるときは、4人が力を合わせて、あるときは、外部の協力スタッフの協力を得て、組み合わせを変えながら、さまざ まな制作物を手がけています。僕たちのように、ユニットを組んで編集するケースは、案外珍しいかもしれませんね。

 

 

——私も初めて聞きました。いつからユニットを組みたいと考え始めたのですか?

フリーランスになった当時から漠然と「ユニットの形態で仕事をしたい!」という思いを持っていたんです。というのも、1人では受けられる仕事のボリューム も、ジャンルも、限定的になってしまうじゃないですか。

 

でも、仕事をシェアできる仲間がいれば、大きく展開していくことだって出来るはずです。編集者やラ イターやデザイナーを集めてチームを組めば、雑誌1冊“まる受け”することも出来るのです。


それに、自分では受けられない仕事でも誰かが受けることができれば、仕事を断らずに済みますよね。

 

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仲間がいることで、早く大きく成功する

人と人とで、モノを創り出す。

 

 

——新しい試みだったとは思いますが、何か理想の組織などはあったのですか?


例えるなら、『ウルトラ兄弟』と言ったら分かりますか?古いですか?(笑)。

ウルトラ兄弟って、それぞれがヒーローで、それぞれが怪獣を倒す力を持っていますが、ときおり兄弟みんなが集まるときがあって、それを見た子どもたちはすごくワクワクするんですよ。クロロスも、そんなふうになれたらいいかなと……。

 

つまり、4人それぞれが『一人でも仕事をできる力』と『魅力的な人柄』を持ったプロフェッショナルで、そんな4人が集まったとき、「何か大きな成果を出してくれそう!」という期待感を抱かせる、というイメージですね。

 

ク ロロスは、メンバー同士がお互いにフォローし合って、対等な関係で仕事ができ、『独り立ちしているフリーランス』同士が横並びで仕事をしているからこそ、 バランスが取れているのだと思います。もしも実力のあるメンバーがひとりしかいなかったら、残りは『おんぶにだっこ』の状態で、そのひとりを頼ることに なってしまいます。それではきっと、相乗効果が生まれなかったでしょう。

 

 

——会社ではなくユニットであるメリットはありましたか?

クロロスの場合、編集、デザイン、DTP、ライティング、場合によっては撮影まで対応できるので、仕事をトータルで受けることができます。会社組織よりも 機動力や柔軟性があるので、フットワークも軽いんです。

 

そして、女性メンバーがいるので、女性ならでは案件も受けることができます。フリーランスの良さ と、会社組織(編集プロダクション)の良さをイイトコ取りした感じですね。

 

——フリーランスと言えども、仲間がいることは心強いのですね。

それは間違いありません。ナポレオン・ヒル博士は、『一つの目標を達成するための、二人ないしそれ以上の人たちとの調和』を『マスターマインド』と呼んで います。

 

同じ目的を持った仲間がいれば、自分ひとりではできなかったことでもできるようになるんですよ。実際、クロロスを立ち上げてからの方が、仕事の幅 も、仕事の質も、経済的にも良い結果が出ていますね。


クロロスは僕にとっての、『マスターマインド』と言えますね。みなさんにも、仲間や信頼の大切さを知ったうえで、フリーランスを志して欲しいと思います。

 

 

 

 

就職、フリーランス、起業……

現代にはいろんな働き方があっても

大学生には想像しか出来ない世界だ


藤吉さんからは溢れんばかりに

『楽しい』ということばが自然と出てきた


きっと心から、今の仕事を楽しんでいるのだろう


 

初めての社会人インタビュー


ライターとしても、人間としても

自分のロールモデルに触れられた気がした

 

 

Facebook:藤吉 豊 (Fujiyoshi Yutaka)

【文・写真:三宅瑶】