IMG_3375結果

 

今回のインタビューは、テレビ東京でアナウンサーを務める森田京之介さん(26)。

 

華やかな職業の代名詞でもあるアナウンサーを務める裏で、森田さんはどんな想いを持っているのか。プレッシャーなのか、はたまた楽しくて仕方がないのか。

森田さんは高校の先輩ということで、疑問を素直に聞いてみました。

 

 

森田京之介(もりたきょうのすけ)

1986年愛知県生まれ。駒場東邦高校卒業後、1年間の浪人生活を経て慶應義塾大学経済学部に進学。2010年株式会社テレビ東京入社。同年7月「ニュースモーニ ングサテライト」にてアナウンサーデビュー。現在は、「ウイニング競馬」や「7スタLIVE」などを担当している。

 

もっと伝えたい

 

―― 高校時代は体育祭や文化祭などで活躍されている姿を見てきましたが、大学時代はどのような生活を送られていたのでしょうか?

 

いま振り返れば、よく言うと、メリハリ・切り替えが上手くいったかなと思っています。

 

私の通っていた慶應義塾大学では三年になるとキャンパスが変わり、それにともなって雰囲気も全く別物になります。日吉は高校生の延長みたいな雰囲気が強いけれども、三田に行くとスーツの人が多い。

ここが自分のなかでもよい機会だと思い、大学三年の最初に、自分の向いていた方向をサークルからゼミに切り替えました。

 

―― 経済学部に通われていたそうですが、どんなゼミに入っていたのでしょうか?

 

非常に地味ですが、経済史のゼミに入りました。マクロ・ミクロの計算が苦手だったので、歴史のほうがいいのではと、消去法で入りました(笑)。

 

―― ゼミで学ばれたことでいまに活きていることはありますか?

 

テ レビ東京では経済関連のテーマを扱うことが多いのですが、経済を伝えるという立場において、相手にするのは現実の世界です。もちろん理論としてマクロ・ミ クロを適用出来ることも多いですが、それが当てはまらない時にどこに解決策を見出すかというところにおいて歴史をたどる経済史が役立っています。

役 立っていることに関連して思い出すのは、大学生活では塾講師を1年から4年まで継続的にやっていたことです。この経験で重要だったと思うのは、相手が小学 生であったということです。同世代になら普通に伝わることが彼らには伝わらない。どのように伝えたら一番分かりやすいかを常に考えていたので、現在テレビ を介して視聴者にいかにわかりやすく伝えるかということに、生きてきていると思います。

 

―― 学業もバイトもと万遍なくやっていたのですね。アナウンサーを志望されたのはどういった経緯があったのでしょうか。

 

さきほど3年生になって切り替えと言ったのですが、そのタイミングでアナウンススクールにも通い始めました。

自分は浪人しているのですが現役で受かった同期たちが就活を始める中、果たして自分は一年後やりたいことがあるのかなと考えました。このままだとないなと思い、とりあえず目標を設定することに。

 

自分は何が好きだったのかなと考えた結果、高校2年生の時に初めて観に行った高校野球のことを思い出しました。神奈川県の決勝戦を見に行ったのですが、すご く面白くて、その年は甲子園球場にも観戦に行きました。それからというもの、ほぼ毎年のように甲子園に足を運ぶようになりました。2006年の田中将大選 手と斎藤佑樹選手の決勝戦も生で観ていました。

そうして、高校野球が好きなんだと改めて思い、そのようなものに関われる仕事は何なのかなと考えました。

 

そう考えた時、甲子園から帰ってきて、「あの試合すごかったんだよ、甲子園ってものすごくいいんだよ」と色んな人に伝えたいと思った自分を思い出しました。友達にも家族にも彼女にも伝えたい、でもまだ何か物足りなかったんです。

 

もっと伝えたい…。

 

あの、「生で観る高校野球ってものすごいんだよ」ということを、より多くの人に伝えられる立場に立ちたい、一番それを伝えられるのは試合を目の前で見て実況するアナウンサーではないのかなと思い、アナウンサーを目指すことにしました。

目標が決まれば、そこに向けて動き出そうとアナウンススクールに、すぐ申し込みました。

 

IMG_3371結果

 

―― 好きなものを取っ掛かりとしてアナウンサーという職業を見つけたんですね。森田さんがテレビ東京を選ばれた理由は何でしょう?

 

率直に言うと、この局しか内定がもらえなかったからではあるのですが、テレビ東京に入って結果的によかったなと思うことは、男性アナウンサーが他の局の約三分の一(現在11人)しかいないこと。現に、私は3年目なのですがまだ男性の後輩がいないんです。

人数が少ない分だけ、必然的にやらせてもらえることも多い。当たり前ですが、練習と実際にカメラの前に出て本番でやってみることでは見え方も学べることも全然違います。

アナウンサーに限らず、若いうちから多くの仕事を与えてくれるということはこの局の一番の強みだと感じています。

 

知らなかった人に魅力を伝える

 

―― 現在、森田さんは毎週土曜のウイニング競馬(午後2時58分~4時放送、BSジャパンでは午後2時30分~4時放送)で実況レポートを担当されています。競馬実況は入社一年目からの目標だったそうですが、なぜそこまで思い入れがあったのでしょうか。

 

実は、大学までの競馬の知識はマキバオーという競馬漫画を読んだ程度のレベルでした。正直、みなさんの多くが思っているような「おじさんくさい」というかペンを耳にかけて新聞と睨めっこしているようなイメージだったんです。

 

ですが、新人研修の時に競馬場に行きそのイメージが一転しました。

芝がすごく綺麗で、そこを駆け抜けていくあの美しい馬体。そして、それを横ですべて言葉にしている先輩方の姿。どれもすごいなあと心を奪われました。

 

― 確かに、素人目線で見ても競馬実況は難易度が高そうです。

 

アナウンサーという仕事は常に読みの技術を磨き続けなければいけない職業です。

 

原稿は記者が書いたものなのだから、記者が読めばいいという意見もあると思います。でもそれをわざわざなんでアナウンサーが読む必要があるのか。それは他の人よりも読みの技術を磨いているからに違いありません。

その読みの技術のなかでも、スポーツ実況、特に競馬実況は他の人はなかなか真似出来ないと思わせてくれる技術で、アナウンサーが目指す一番色濃い技術だと思っています。

 

IMG_3356結果

 

―― 一番色濃いという表現が出てきました。競馬実況で一番意識していることは何でしょう?

 

正確に情報を伝えることはまず絶対です。そのうえで、競馬を知っている人はもちろん、知らない人にも競馬の面白さをウイニング競馬を通じて伝えたいと思っています。

 

実況はもちろん、実はゲートってどうなっているのか、なんで一気に正確に開くのだろうかなど、表に出ていない部分も伝えていくことによって自分のような競馬に疎かった人にも競馬の魅力を知って頂きたいです。

 

伝えようとすることにどれだけ近づけるか

 

―― ウイニング競馬では競馬の魅力を伝えることを特に意識されている森田さんですが、そもそも森田さんにとって、「伝える」とは何でしょうか。

 

伝えたいことを限りなく100%に近い所まで理解することだと考えています。

 

これは塾講師のアルバイトにも言えることで、理解していないことはどんなに取り繕っても伝わりません。

たとえば、その日がスポーツ担当だったら、いちばん肝になるニュースは何かを徹底的に調べます。「この試合だ!」と思ったら、その試合はすべて観る。

 

自分はこう伝えたい、という思いがないまま伝えるというのは間違っていると思います。そうしないとアナウンサーは読むマシーンになってしまう。

 

伝えようとすることにどれだけ近づけるかどうかです。

 

―― 伝えようという思いがアナウンサーの一番大事にしているところなんですね。

 

どれだけ準備していても、上手くいったなぁなんて思うことはほとんどないです。

でも逆に言うと、満足したら終わりなんでしょうね。 

 

―― 番組によっても異なると思うのですが、アナウンサーの方はずっと黒子に徹するわけではないですよね。バラエティ番組などでは自分の意見を言わなきゃいけないと思うのですが、森田さんはどう思いますか?

 

結果として目立ってしまった、結果として黒子でなくなってしまった、という形で面白くなったというのは「あり」だと思います。しかし、そこを自分が動いて、自分にスポットを当てるようなことは違うでしょう。

たとえば今担当している、「マイライク!」という番組はタレントさんへのインタビューが中心の内容となっています。なので私が目立つ必要は全くなくて極端な話、私の質問部分は全部カットしてもいいと思って質問をしています。そういった観点からもアナウンサーは基本的に黒子かなぁと思います。

 

IMG_3363結果

 

―― そうなんですね。

 

アナウンサーになりたいという学生のOB訪問を多々受けますが、エントリーシートを見た瞬間にアナウンサーという仕事を勘違いしていることが分かることも多いです。

「局の顔なので、個性をいかして頑張りたいです」

いやいや違うでしょ、個性は生かさなくていいよ、結果として出るんだったらいいけど、自分でいかそうと思うんじゃない、と。

アナウンサーは周りの人の個性を引き出す立場です。別に自分の個性を隠そうと意識し過ぎる必要はないですが、決して個性をいかすことが目的ではありません。

 

 

野望はありません。

 

―― 実はこのインタビューの準備として森田さんにゆかりのある方から色々と森田さんに対する質問を募ったのですが、どなたも森田さんの最終的な目標に大変興味を 持っていました。現在は、アナウンサーという仕事をされていますが、その先に見据えているものは何なのでしょうか。

 

正直なところ、何か大きなことをやって最終的にはフリーになってこうしたいという野望のようなものはありません。

会社に雇われている身としては、今は番組のなかで一つのレースを実況する程度の貢献しか出来ていません。会社の利益に直接繋がっているかと言ったらそのレベルにはまだまだ達していない。

ですのでまずは、「この人が実況やってるんだったら見ようかな」というくらいの、貢献は出来るようになることが先決ですね。

そして、あとは家族が幸せになること。自分がこうしてして働いていられるのも両親にここまで育ててもらったからです。自分の子供が出来てからますます強く感じているところです。

 

IMG_3381結果

 

―― 言葉が悪いかもしれませんが、実は堅実なんですね。

 

そんなに破天荒じゃないですよ(笑)。

背伸びしないで自分を客観的に見る目を大事にしていきたいですね。

 

 

 

「伝えるためには、まず完璧に限りなく近く理解すること。」

 

自分から能動的に動いていかないと成り立たない仕事、それがアナウンサーでした。

 

また、このインタビューでアナウンサーの本当の魅力を伝えるということも考えて下さったのか、あえて黒子に徹するというお話に長い時間を割いてもらいました。

 

今後のご活躍も期待しています。貴重なお話ありがとうございました。

 

 

【文・写真…長瀬晴信】