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昨年三月十一日、我が国は未曾有の大災害を経験した。

 

ここでその多くを語る必要もないだろうが、昨日行われた衆議院選挙では各党もその政策の要として復興支援の如何を掲げ、また一年半以上経った現在も震度5弱の余震が発生するなど予断を許さない状況が続いている。

 

しかし、いま一度日本という国を考えて見ると、この国は古くから自然と共生する文化を築き、災害公害を乗り越えてきた過去があった。

今回インタビューで訪れたのはそのような自然に負担をかけず豊かな暮らしを営んできた日本ならではのエコ技なモノを世界に広めている会社、株式会社エコトワザ

 

「エコ+技」が社名の由来というこのユニークな会社は英日バイリンガルでのエコ商品のオンライン販売、メーカー・企業の海外マーケティングのお手伝いを行っている。

 

事前にプロフィールなどを拝見し、株式会社リクルートで新人賞獲得、その後3年で独立など非常に行動力溢れた方を想像しながら待ち合わせの場所に行ってみると、

現れたのは愛くるしい笑顔をした女の子を胸に抱えた優しそうなお母さんだった。

 

大塚 玲奈(おおつか れいな)

1980 年生まれ。父親の仕事の関係で2~10歳は米国で暮らす。一橋大学法学部在学中には、環境サークルを設立、米国カリフォルニア大学バークレー校に1年間の 交換留学を経験。2004年株式会社リクルートに入社し、一年目には住宅情報誌の広告営業部門に配属され新人賞を獲得。「入社後3年で独立する」というか ねてからの思い通り、2007年株式会社エコトワザ代表取締役に就任。「日本ならではの自然と寄り添ったライフスタイルを世界に広める」をミッションに挑戦を続ける。

【株式会社エコトワザ】:http://ecotwaza.com/

 

国というより文化

 

商社勤めのお父様の関係で2~10歳を米国NY州で過ごした大塚さん。

その関係で米国では「日本人」と呼ばれ、日本では「外人」と呼ばれ大塚さんは常に異邦人だった。

自分のアイデンティティを探し、中高時代は日本の文学書、哲学書を読破。大学ではバックパッカーとして数ヶ月にわたり世界放浪の旅へ。

 

日本の匠の技を伝える者として活躍するいま、「日本人」であることを意識したのはいつなのだろうか。

 

―― 大塚さんが自分を「日本人である」と意識したのはいつ頃なのでしょうか??

 

アメリカに居る時はずっとアメリカ人だと思っていました。

毎朝、旗に向かって忠誠を誓っていましたしね。

中 高の時は、「日本人って何考えているんだろう」と思いながら本を読んだりしていたんだと思います。当時、体育会系の仲間で集まって、素人劇団をやっていた のですが、自分の過去を売ってしまったら自分ではない人間になるのかというテーマの脚本を書きました。アイデンティティは自分のなかですごく大きなテーマ でした。

そうして、「私は日本人でもアメリカ人でもない」という迷いは大学に入る頃もありました。

 

ですが、バークレーに留学した時に変わったんじゃないかなと思います。

色 んな国籍の学生が住む寮に入っていたので、毎晩面白おかしく自分の国の話をしたりするんですよ。そこでいっちょ、日本人が面白いんだぞというのを見せつけ てやろうと思って、日本に800万人神様がいるんだよ、エイトミリオン!とか言ったり、日本人がみんなお辞儀すると思ったら大間違いだぞとか言ったりして (笑)。

私達が学生だった時代は、まだ、第二次世界大戦後の名残が残っていて日本人と言えば戦争の問題や謝罪が想起されました。今の子はそうでもないと思うのですが、日本人とは恥ずべき存在だと思わなければいけないように感じていた私がいました。

そのように思っていたからこそ、日本人ネタが恥ずべきものではなく、愛すべきもの、面白いものだったんだとその時感じたんでしょうね。

 

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(展示用の棚もエコトワザの商品。組手什。関連記事:http://ecotwaza.com/workshop/15866/

 

あと、前述した寮には本当に色んなバックグラウンドを持った人がいて、それこそ私なんて平凡だったんですよね。

 

日本にいると海外育ちは少し珍しがられると思うのですが、その寮ではお父さんがエジプト人で、お母さんが別の国の人で、産まれたのはまた違う国ですみたいな人がわんさかいるんですよ。そう思うと、私ってド日本人だなと思って(笑)。

そうやって思った時に、自分の中で「日本人はこうでなければいけない」というステレオタイプを作っていたことを思い知りました。それがいけなかった。「いいじゃん、色々な日本人がいて、実際いるし。」日本に対してすごくネガティブだったのがポジティブになっていきました。

 

―― 大きなきっかけがあったのではなく、多国籍の寮生活を通じて意識出来たというわけですね。

 

でも、これからは何人(なにじん)ということはあまり関係なくなるかもしれません。

国というより文化かなと思っています。

日本のエコを伝えるという時も、国としての日本というよりは日本文化という文化圏を伝えるという気持ちでいるんですよね。

 

なので、「ジャパンスタイルは、メイドインジャパン。日本産。国産!!」といった感じではなくて、

日本というこの文化圏の面白い考え方を他の文化圏の人に伝えたいというように、もう少し緩やかなところで考えています。

 

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100年後に真価が問われる組織

 

大塚さんは、以前他サイトのインタビューで、エコトワザがボランティアやNPOではなく企業という形態である理由を、「環境問題への取り組みが遅々として進 まないのは、個人の善意に頼っているから。」「利益が得られないと本当の意味では真剣に取り組めない。利益を出しながら維持して実行していく組織体(会社)でありたい」と答えていた。

 

果たして、エコトワザの存在意義は何なのだろう。

 

逆説的に聞くことでオンリーワンの存在であるエコトワザの姿が見えてきた。

 

 

―― 日本の匠の技を伝えているわけじゃないですか、大塚さんが作る側になろうと思ったことはないのでしょうか?

 

ないです。なぜなら不器用だからです!(笑)

 

絶対、日本的な感性を私は兼ね備えていなくて、何を作ってもアメリカっぽいね、ってなっちゃうんですよね。

けれども、だからいいんだと思います。私は絶対に日本のモノ作りは出来ない、こんなにこだわれないという外からの目線が残っているからこそ、多くの人に日本のプロダクトの本当の良さを伝えられるのではないかと感じています。

 

―― 海外との取引のなかで、逆に海外のプロダクトを日本に持ってくることは考えていないのでしょうか?

 

それは考えています。

私達がやっているビジネスをもう少し大きいところで言うと、ローカルをグローカルにするということなんです。

 

今たまたま、そのローカルが日本だというだけで、インドネシアにはインドネシアの面白いものがあるし、デンマークにはデンマークの面白いものがある。ロー カルだったものを色んな国の色んな地域の人が使えるようにするということがミッションなので、将来的にやっていきたいと思っています。

 

―― そのように色々な可能性をまだまだ秘めているエコトワザですが、もしエコトワザがなくなったとしたらどんな人が損をして、どんな社会になってしまうと思いますか?

 

社会全体で言うと私達がやっていることはすごく遠い未来に向けての課題解決なんです。

現在のような大量生産大量消費ではなく自然と共生するライフスタイルを目指しているのですが、いまは実際に環境問題は発生しているものの、別にこのままでも、特に先進国の人は多くはそこまで困らないじゃないですか。

そういう意味では、本当に困るのは、50年とか100年先の話で、その未来の人達が困ると思います。

 

やりたいことは今やれ

 

「夢に向かって動ける人材たれ」と学生に向けて強いメッセージを送る大塚さん。

 

夢に向かって動くためには?色んな選択肢を見る方法は?

 

そして、生後数ヶ月の娘さんの将来についても伺った。

 

―― 夢に向かって動けている人もいる一方で、なかなか一歩踏み出せない学生もいます。そのような学生に向けて、具体的なアドバイスをお願いします。

 

夢ってそう簡単にすぐ見つかったりしないので、その時に一番やってみたいことをやるのがいいと思います。

たとえば今、留学したい、大学院に行きたいと思ってて、でもいつの日かと思っているとそのいつの日かは来ないと思うんですよね。一日でも早くやったほうが吸収するはずです。

 

その上で講演会などでも必ずオススメするのは一人旅です。

私も学生時代2ヶ月程のバックパックに出たことで寂しい思いをしたり、1人で生きる力を試すことが出来ました。可能であれば色んな文化圏に行けるとすごくいいですね。

 

目標さえ決まれば達成することはなんとか出来ると思うので、いろんなことをやってみて、とにかくいい目標を見つけてください。

 

―― 大塚さんの今後のステージでの目標を教えて下さい。

 

次の目標は、先ほど言った色んな国のローカルをグローカルにすることです。そのために、今はモノが動くところで仕事をしていますが、もっと知識を動かす仕事をしたいと思っています。

たとえば、日本で成功している森づくりの事例を今度は東南アジアでやったりなど、そのような「知恵の交換」をビジネスにしていきたいなと、次のレベルのところで考えています。

 

―― 有形から無形へということですか。

 

有形でもいいと思うのですが、有形の裏についている無形をもっと増やしたいんです。私たちのサイトは、エコな「モノ」を販売していますが、価値はそのモノを選んだり、使うことを通して得られる「学び」だと思っています。

たとえば、漆器。いま漆器で知られていることは、漆も含めて全部木から作られていて殺菌作用がある。これぐらいの知識レベルだと思います。

 

それをもっと、漆掻きの技術だったりや漆器を作るための工程、どうしてこのエリアで産業集積したのかというレベルまで調べられると、次に例えばタイで同じことをやろうとする時に、どこどこの地域でやりましょうと、すぐに提案出来るはずなんですよね。

そのように日本の色んなベストプラクティクスをもっと色んな国に広めたいし、同時に色んな国のそれもお互いに広め合えるようなことを民間レベルでやっていけたらすごく楽しいなと思っています。

 

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(エコトワザの商品。洗剤など何気なく使っているものも合成界面活性剤が使われており、合成化学物質は一度自然界に流れ出たらなくならない。石鹸素材を勧めている)

 

―― それでは最後に、娘さんにどんな人に育ってもらいたいか、どんな社会に生きてもらいたいか、そしてそのためにいま、自分が出来ることは何だと考えているのか聞かせて下さい。

 

大前提として、いま私達が豊かと言われている社会に生きていることはすごく感謝しています。

 

そのうえで、代償にしてきてしまった、土や水や空気が汚いなどの環境問題に対して、自然のサイクルの中にもう一回戻る、退化するという意味ではなく、賢く なって自然の循環を逸脱しないような社会・経済を作らなければいけないと考えています。そうして、綺麗な自然のあるところで、育ってほしいと思っています

 

あとは、自分がすごく勉強嫌いだったので自由に育って欲しいですね。。

受験勉強になるとパズルみたいなものなので、ゲーム感覚でまあ楽しかったのですが、なにかを学ぶことを強要されるのがすごく辛かったんですよね。

やりたいことをもっと自由にできる社会の目というか、いい大学に行って大手企業に就職するのがすべてではない社会であればとてもいいかなと思います。

 

つまるところ、自分ひとりでジャングルに放り出されても生きていける人になって欲しいんですよね(笑)。

新しい何かに直面した時に正解を求めてしまう人っているじゃないですか。教えてくれないと出来ませんとか。

 

でも、人生に正解は本当にないので、正解がなくて自分で考えなければいけない状況で強くあり続ける精神力をもってもらいたい。

自分の頭で考えられること。そういう意味でのジャングルに暮らすということでした(笑)。

 

 

娘さんをあやしながらも、私が用意してきた以上の質問を引き出してくださった大塚さん。

穏やかな表情でありながら、その言葉には終始力強さを感じました。

今日を機にいま一度、身の回りのエコについて考えてみてはどうでしょうか?

貴重なお話ありがとうございました。

 

株式会社エコトワザ 

HP:http://ecotwaza.com/

Facebookページ:http://www.facebook.com/ecotwaza

 

【文…長瀬晴信 写真…川嶋高司】