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「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」開幕前の7月下旬にインタビューを行ったこへび隊のお2人に、閉幕後1ヶ月経った10月下旬、お話を伺った。

 

(7月に行った前半はこちら

 

―― 9月17日に「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012」の幕が閉じました。こへび隊として過ごした1ヶ月、お2人はまず率直にどのように感じましたか?

 

藤原:本当に色んな人と出会えました。これが一番の財産です。

毎日新しいお客さんと顔を合わせ、こへび隊のメンバーも二、三日でどんどん入れ替わる。日々30~40人ほど新しい人と出会うという体験、しかもそれが一ヶ月続きました。こんなことは人生でもそうあることではないはずです。

色んな人が色んな立場で、そして色んな動機で越後妻有に来ていて、そういう人達と話すことで、「自分が何をしに越後妻有に来たのか」「自分が越後妻有でどんな価値を生み出せるのか」ということをとことん考えさせられました。

 

―― 改めて考えるきっかけになったんですね。

 

藤原:自分だけで考えたのではなく周りの仲間とも考えたので、こへび隊の仲間とは今後もゆるく繋がり続けられるかなと思っています。一生付き合える関係があらゆる年代や性別の人と出来たと感じています。

 

伊藤:私も、すごく特殊な場だったなと感じています。

 

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東京にいると年上の人や社会人の人と、あるいは美大生と壁を作ってしまっている自分がいました。

ですが、越後妻有のあの環境では、東京では絶対にこんな話はしないだろうということも誰とでも不思議と出来たんです。

たとえば、美大生はそれこそ表現と向き合わなければいけないと考えていたり、あるいは社会人は社会に対する問題意識を持って越後妻有に来ている人もいました。

自分が何故ここにいるのかということを自然と考えさせられ、自分自身が今後どう変わっていきたいかをもう一回考えるきっかけにはなりました。

相手を鏡にして自分を見ることが出来る場でしたね。

 

―― 前回のインタビューで、「芸術の力というのを感じるかもしれない」と話されてましたが、実際に芸術の力を垣間見ましたか?

 

伊藤: 語弊があるかもしれませんが、地元の方達は普通に生活していたらアートと触れ合う機会も少なかったでしょう。そんな人達が、作品を自分達のもののように想 い、毎日のように作品の管理に入りお客さんと楽しそうに喋っている姿を見て、実感として芸術が地元の方たちを元気にする力を持っていると感じました。

藤原:地元あっての芸術祭ですからね。こへび隊がどんなに頑張っても、会期以外の期間で作品をずっと守って、お客さんを迎え入れ、次の作品へと送り出しているのは地元の人です。

美術館に行くこともないかもしれないような人達が、そのように作品を自分達の財産として受け継いでいこうと動いていることはすごいことだなと思いました。

 

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―― 人との繋がり、を肌ベースで感じた一ヶ月でもあったと思います。

 

藤原:越後妻有という場所が自分にとってホームのような場所になったと感じています。

残念ながら少ししか話せなかった方も沢山いたのですが、越後妻有に帰れば、あの場所にいる人達はきっと喜んで迎え入れてくれるのではないか、そして私のやるべき役割が必ずあるのではないかと思える場所になりました。

 

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―― 簡単ではないと想うのですが、地域の再生の手がかりになるようなものは見つかりましたか?

 

藤原:地元の人がプライドを取り戻すことが一番大切だと感じています。

中山間地域で人口が減るのは避けられないことです。そんななかで、どのように豊かに、自分の地域を愛して暮らしていけるかというと、自分の生まれ育った地域・地元にプライドを持てるかどうかだと思うんです。

越 後妻有も決して人口は多くありません(十日町市…58926人 津南町…10914人 2010年総務省統計局/国勢調査)。けれども、こんな大きな芸術 祭があって、こんなにも人が来て、こんなに美味しいものや誇れる自然がある。このようなプライドをどれだけ心の中に持てるかが、その地域が豊かになりうる かどうかだと感じていて、そういう意味で芸術祭はかなり寄与していると思いました。

 

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伊藤:恐らく、私は関東圏で生まれ育った人間なので、都市に住む側からの目線でこういう意見を持つのだと思うのですが、地域再生への問題意識を都市に住む人がある程度持つべきだと考えています。

今の人、特に都市に住む人は「都市の問題を解決すれば日本の問題は解決できる」と考えている方も少なくはないはずです。地域の問題は進みきってしまっているため、自分達ができる有効な解決の手立てが無い、と。

そう考えるのではなく、地域に対する問題意識を心の隅に置き、思いを馳せてみることが、地域再生の最初の鍵になるのではないかと思っています。

 

―― 伊藤さんにとって、越後妻有は何色ですか。

 

伊藤:過ごした日々は混沌とした色でした。たとえば、キャンパスに色んな絵の具をぶつけて画面が構成された抽象画のイメージです。

 

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越後妻有に集まったそれぞれが、今までのバックグラウンドで培ってきた想いをあの場で共有することによって生まれる混沌。むしろ、会期中は混沌を作り出さないと意味がなくて、混沌からしか何かが生まれない時間です。

でも、その混沌も芸術祭が終わったら一回真っ白に地塗りされるんです。前の色がうっすらと見えながら、三年後に向けて徐々に色が積み重なっていく。

そうして積み重なった色は会期の時にピークを向かえそれで一回作品として完成する。

ひとつのキャンバスの上で幾度となく繰り返されていくこの流れの中で、訪れる人によって無数の色を感じ取れると思います。

私もまだ2012年の夏の越後妻有を断片的に経験したに過ぎません。これから、もっといろいろなあの場所の「色」を感じていけたらいいなと思います。

 

―― 最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。

 

藤原:大地の芸術祭は普通の生活を送っていただけなら会うことがなかったかもしれない人々と出会え、人生全てに関わる話をし、自分を開放できる貴重な場です。参加したら本当に財産になると思います。

 

芸術祭は終わりましたが、こへび隊一同これからどんなことができるか模索中です。雪の運動会も計画中で、ますます面白くなりそうです。ぜひ、こへび隊をのぞき、越後妻有にも足を運んでみてください。

 

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「越後妻有 大地の芸術祭の里」HP:http://www.echigo-tsumari.jp/

 

【文…長瀬晴信 写真…吉田健一】