労働問題に、メスを入れる。

 

今回は前半と後半に分けて、労働問題を取り扱うNPO法人POSSE代表、今野 晴貴(こんの はるき)さんへのインタビューをお送りいたします。
NPO法人POSSE:http://www.npoposse.jp/

前半ではPOSSEという団体の全貌に迫ります。

【インタビュアー…川嶋高司】

Lien:今日はインタビューに応じていただきありがとうございます。早速ですが、今野さんが率いていらっしゃる団体「POSSE」の名前の由来を教えてください。

今野:「POSSE」とはラテン語で“力をもつ”という意味で、他にも“仲間”という意味です。今でもラップなんかの歌詞で使われていますよ。

Lien:なるほど、POSSEの活動にふさわしい名前ですね。それでは、POSSEとはどの様な組織で、どんな活動をしていらっしゃるのですか?

今野:POSSEは2006年に私と友人が立ち上げた団体で、今では約250人の会員がおり、70名ほどが活動しています。会員の多くが大学生・院生のボランティアですね。また、東京だけでなく、京都や仙台にも拠点があります。

具体的な活動内容としては、年中無休で電話・メール・事務所への来所による労働相談を行っています。相談内容は、賃金未払いや解雇・退職強要・社会保険・ 生活保護・奨学金返済の相談等多岐にわたります。また、雑誌の編集・発行も行っており、社会問題に対する政策研究の成果の発表や、労働者から直に聞いて明 らかになった“現場の問題”を提起しています。さらに、現代の労働問題に対応するため、労働に関する街頭調査も行っています。他にも、最近では東日本大震 災で仮設住宅に移動することになった被災者の方々の引っ越しのお手伝い等、復興支援も行っていました。あと、POSSE内の活動になってしまいますが、労働相談の応対をする学生向けに、定期的に労働法の勉強会を行っています。

Lien:なるほど、かなり幅広い活動をされていますね。それでは、そのような活動を通じて残した実績等を教えてください。

今野:まず、労働相談が年間1000件ほど入るようになりました。また、そのような労働相談を基に、NPO法人POSSEという名義で、『ブラック企業に負けない』という本を出版しました。他にも、POSSEの活動を朝日新聞など多くのメディアに取り上げていただいています。さらに、最近では活動の成果が認められ、国から助成金を頂くようになりました。

Lien:助成金…すごいですね!では、POSSE設立当時と現在の様に数多くの功績を残される団体になるまでに、何か変化がありましたか?

今 野:あります。団体としてかなり成長できたのではないかなと思います。人数だけを見ても、設立当初は4、5人しかいなかったのですが、今では200人以上 の大学生が参加してくれています。また、地道な相談や街頭調査を続けていくうちに、現場から得た知識から労働問題に対して仮説を立て、それが労働政策研究 の分野に生かせる様になるというように、一つ一つの活動の接点の様なものが見えてきました。

Lien:活動自体、かなり濃密なものになっていったということですね。それでは、前半最後の質問となりますが、これからのPOSSEはどの様な団体にしていきたいと思っていますか?

今野:ボランティアを超えた、より専門的な団体にしていきたいです。最近国から受けた助成金で職員を雇用することができました。これをきっかけにもっと専門的な団体にして、行政との連携等、より公的な範囲まで活動の領域を広げたいです。

Lien:お答えいただきありがとうございました。後半は、今野さん個人としての活動に迫ります。

後半ではNPO法人POSSE代表今野晴貴さんの個人としての活動に焦点を当てていきたいと思います。

Lien:NPO法人POSSEは今野自身が設立なされた団体ということですが、なぜ、この様な団体を作ろうと思ったのですか?

今野:やっぱり最初は正義感からですね。当時はフリーターの存在が社会問題になっていて、労働問題が意識され始めていたので、多くの人に問題提起出来れば、と思って始めました。あの頃は若かったので、行動力がありましたね。(笑)

Lien:なるほど。それでは、今野様自身のPOSSE代表としてのお仕事や仕事上大事にしていることをお聞かせください。

今 野:主にメディア対応や団体のマネジメント、本の執筆、全体としての活動の方針を決めることですね。特に全体の目標を決めるのは、団体を動かす上で大事な ことだと思います。意思統一がなされることで、団体として活動できるのだと思います。「なんとなく」活動を続けていても、効果は薄いので、「やるなら真面 目に」が大事なことだと思います。

Lien:ためになる話ですね…。では続いて、POSSEの活動を通じて体験した、様々なエピソードをお聞かせください。

今野:労働相談に来てくれた人が、君の本を読んで来た、と言ってくれたときには嬉しかったですね。中卒の方だったのですが、僕の書いた本が一番分かりやすかったと言ってくれたんです。あの時は自分の活動が本当に役に立っていると実感できました。


それに対して、辛かったのは結果が出るまでの時期ですね。やっぱりまだ実績も知名度もないただの学生ボランティアだったので、労働相談をやってみても「お前働いたことあるのか?」となめられてしまうこともありましたね…。
あと、POSSEとしての一番最初の活動で、何か大きなことをやって知名度を少しでも上げようということになり「三千人調査」というものをやったんです が、その時は毎日毎日街頭に立って調査を続けるという、本当にしんどいものでしたね。(笑)また、これは稀なケースなんですが、ITやデザインといった業 種で働く人の労働相談を経て、ホームページの運営技術やデザイン講習を開いてもらったりと、その後の活動に関わっていただくこともありますよ。

Lien:様々なエピソードをお聞かせいただき、ありがとうございます。それではそのような活動を通じて、今野さん自身はどの様な気持ちで活動をなさっているんですか。

今野:活動を始めた最初の方は、先ほども言った通り正義感が大きかったですね。やっぱり間違った社会を正したい、という気持ちが前に出ていました。その気持ちに変わりはありませんが、それに加えて今は「これからの日本はどうなってしまうのか?」という不安を感じています。
活動を続けて様々な雇用の実態を目の当たりにすることで、現在の雇用の在り方に危機感を抱き、労働分野だけでなく「日本の将来」が危ないのではないかと考えるようになりましたね。

Lien:なるほど、貴重なお話ありがとうございます。では次の質問ですが、今野さんがPOSSEという大団体を率いる上で大切にしていることは何ですか?

今 野:正しいことを追求する信念を持つことだと思います。やっぱり最後は「自分が何を正しいと思っているか」にかかってきますから。あと、先ほど(インタ ビュー前半参照)も言った通り、団体の意思統一をすることですね。明確な目標がなければ、しっかりとした活動はできません。やると決めたことはやるという 姿勢を貫くことが大事だと思います。

Lien:それでは、最後の質問になりますが、今野さんが思う「今の雇用の一番の問題」とは何ですか?

今 野:「労働時間が長すぎること」です。給料を上げることよりもまず、労働時間を短くしなければならないと思います。お金を少し多くもらったところで、実際 の生活ではすぐになくなってしまいます。しかし、労働時間が短くなることで、自分の時間を持つことができ、その時間を様々なことに使うことができます。時 間がなければ友達だって作れませんし、結婚もできません。労働者の生活の質を向上させるには、自分の時間を持つことが不可欠だと思います。雇用の問題とな ると、すぐ賃上げを連想しがちですが、労働時間短縮も欠かせないことです。日本の労働組合は、もっとそこを主張すべきです。

Lien:労働時間短縮は意外と盲点ですね。これも現場で活動する今野さんだからこそ気づけたことなのでしょうね。これからも、頑張ってください。本当にありがとうございました。

今野晴貴:https://twitter.com/konno_haruki
NPO法人POSSE:http://www.npoposse.jp/


【インタビュアー…川嶋高司】