自分を好きになって、自分に期待するのです。

 

No.122
藤井 輝明(ふじいてるあき)  医学博士 行政書士


昭 和32年、東京都国立市に生まれ。医学博士、看護師。保健科学研究所所長、日本健康医学会学術評議員。中央大学経済学部、千葉県立衛生短期大学第一看護学 科卒業、国立筑波大学大学院修士課程修了(健康教育学)、国立名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了。飯田女子短期大学専任講師、熊本大学医学部教授、 鳥取大学大学院医学研究科教授などを経て現在は中央大学保健体育研究所客員研究員。顔に病気や傷のある人たちに対する偏見をなくすため、全国の学校や自治 体で講演・交流活動をつづけながら、福祉施設や老人施設、病院で医療や看護の研修指導にあたるなど、幅広い社会活動を行っている。

【詳しいプロフィール】http://www.fujii-ouen.com/profile.html

海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)という珍しい病気のため、大きなアザが藤井輝明(ふじいてるあき)さんの顔に現れた のは2歳のころ。それ以来、人々の好奇の目に傷つき、数々のつらい目にあった。外を歩けば、ジロジロと見られ、酷いときには唾をかけられたこともあったそ う。そんなことを、にこにこ笑顔で語ってくださる藤井さん。

そんな藤井さんからは、過去よりも今を精一杯生きるという強い意志が見えてくる。

 

「藤井さんの人を惹きつける力」

 


私が最初に藤井さんにお会いしたのは、大学の講義のとき。

藤井さんは、ゲストとして『今を生きる~あなたは顔で差別しますか?~』というテーマでお話をしてくださった。


「今日は重く、辛く、悲しい話を、爽やかに楽しく話していこうと思います」


こうして藤井さんの講義が始まった。


この瞬間から、300人近い学生が一気に、藤井さんの話に引き込まれた。

ここで、藤井さんとお会いして感じたことをまとめてみる。


★いつでもにっこり笑顔

★優しい声

★おしゃべり上手

★常に前向きな発言


そして最後に,


★顔に腫瘍があるということ。


藤井さんの顔に腫瘍があることは、誰が見てもわかる。けれど、お話をするとそのことを忘れてしまう。ユーモアあふれる会話と、嬉しそうに人に歩み寄る姿から、自然とこちらまで、笑顔があふれてくるのだ。


「発想の転換」

 

――まず、一番に聞きたいのですが、なぜそんなに明るいのですか?


もともと、明るいわけではありません。小さいころは、顔を見られただけで自分は睨み返していました。学校から帰るときは、いじめられるので、帰り道を何通 りも考えて、いつもひやひやして帰りました。でも、大学のゼミで、ある方に「どうしていつも睨んでいるの?」と言われ、ハッとしました。それから、街や電 車で目があった人には、笑顔を返そうと思ったのです。人々の中には、笑顔を返してくれる人もいます。とても温かいです。


明るいほうが絶対いいです。


――藤井さんは
「病気はチャームポイント」だとおっしゃりましたよね?

それはどうゆうことなのでしょうか?

 

まさに発想の転換です。これは今日一番伝えたいことです。いじめや偏見に打ち勝つ強い精神力をもつには、自分の弱点を味方につけるのです。欠点・短所だって裏を返せば長所ですよ。今では、この病気は「チャームポイントであり、セールスポイント」でもありますから。(笑)

 


――それはとても強い精神力ですね。他になにか意識していることはありますか?

 

自分を徹底的に好きになることですね。彼氏・彼女以上に・・・(笑)

自分を好きになれば、自分に期待します。「次にこんなことができるのでは・・?」と

いろいろ挑戦しようとします。それによってかなり人生の幅が広がります。


そして自分のいいところがわからないと、他人のいいところも見えにくいのです。

「人間我以外我が師なり」(宮本むさし)という言葉が好きで、周りの人を尊重することはとても大切だと思っています。


「生き方の多様性」

――「挑戦」ということで、藤井さんは幅広い経歴をお持ちですね。

医学博士と行政書士では、理系・文系から違っていて最初名刺を頂いた時は驚きました。

どうしてこれほど極端な分野を学ばれているのですか?


大学生の時に、ある先生から「藤井君の持っている病気を生かしてみたら・・?」という一言で、私の人生は大きく変わっていきました。就職活動は、見た目の問題があるとして、多く落とされました。でも、人脈に頼って理系という新しい世界に挑戦することになったのです。
最 初、研究室に入れてもらったときは、衝撃を受けました。深夜も研究室にこもって、仲間と研究を進めるということは私の今まででは、考えられないことだった ので、新しい発見をしたというか、とても新鮮でした。でも、今考えると、この病気があったからこそ、そのような話をもらえて、今があると実感します。


――最後に、学生に向けてなにか伝えたいことはありますか?


今回話した、発想の転換についてじっくりと考えてほしいです。まだ若いのに、ちょっと苦手だからといって諦めてしまったり、そのことに避けて生きていくの は、もったいないことです。いろんな考え方があり、いろんな生き方があります。いろんな生き方を知ってほしいです。知らない世界を知る楽しさって本当にい いものです。

そして多くの人とふれあって、ある程度経験を積んでください。


その中で、自分のやりたいことを見つけていってください。私は、まだ22歳、23歳で自分を固定化させなくていいと思っています。それは、文系の人が、一から理系の分野に飛び込んでもいいということで、その逆もそうです。


私 自身、今は全国各地で講演会や交流会をやっていますが、大学で学んだ経済は、今の仕事をする上で、とても役に立っています。経済をちゃんとわかっている人 と、そうでない人では、やっぱり話すことや考え方が変わってきます。今やっている学問の勉強は、決して何も無駄ではありません。これは教授の方にもよく言 われていると思いますが、学生さんたちは、本当のところ疑問に思っているかもしれませんね。でも、私は実際に体感しましたからね。説得力があると思いま す。


文系も理系もじっくり裾の尾を広げて、いろんな考えを身につけてください。大学は多様なものの考え方を知るチャンスの場です。一つの分野に早くから絞るよりかは、学生の時期にいろいろな分野に飛び込んでみてください。


最後に、

自分を好きになって、自分に期待してやってくださいね。そして、自分が過ごしている生活を好きになってください!

きっと、すばらしい人生が待っています。

【編集後記】


「人は毎日、自分自身の新記録を樹立するために歩んでいる」


今でも、目標をもって毎日努力を欠かさない藤井さん。

これまで、相当な努力をしてきました。運命的な顔を自分が受け入れるまでは、本当につらい日々が続いたでしょう。それでもいじめや障害に屈することなく、現在は人権教育のために全国に足を運び、保育園から大学まで幅広い人を対象に講演をおこなっています。


ご自身のことを
「歩く教材」と笑い飛ばし、「海綿状血管腫はぼくの宝物」と語る藤井さんからは、人の心を動かすパワー=魅力を感じました。

(インタビュアー…山口萌絵)

【藤井輝明さんの著書】

『てるちゃんのかお』(絵・亀澤裕也 金の星社)


『笑う顔には福来る タッチ先生の心の看護学』(NHK出版)

『運命の顔』(草思社)


『笑顔で生きる』(講談社)

 

『この顔でよかった コンプレックスがあるから人は幸せになれる』(ダイヤモンド社)

【藤井輝明さん公式サイト】

http://www.hokeokagaku.com


【藤井輝明さんの応援サイト】

http://www.fujii-ouen.com/book.html